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一兆年の夜 第五十五話 再誕の火 日は火を呼び寄せる(五)

 午後一時十五分二秒。
 場所は旧真正神武。そこには四十二もの防衛網がある。
 その中でマルータ達が最も脱出するのに苦労した第一防衛網。
 正午前に始まった戦闘は真正神武に入る事で本格化する。遠征部隊の数は以って十万。フッドルがやられ、重傷者を送り返してもまだ十万はある。だが、十万という数は喰われてしまった真正神武という広大な土地に於いては余りにも少な過ぎる。
「うおおおおお!」斬弥は得意とする疾風の舞・弥を駆使して現在三本目の古式神武包丁を使用して撃墜数を十五に伸ばす。「都合に怯むかああ!」
 クソ、また包丁を無用に使ってしまった--チーチョスは現在十二本目に成る猫科又は犬科専用の雄略包丁を使って撃墜数を三十に到達させるも十三本目に突入する形と成った。
「百本用意しっでのに残り一本に迫ってええ!」
「良くないっす。補給が間に合わなっさ」
「また金棒牙曲がった」シデンドウは他者を圧倒する五十九を稼ぐも二本目の金棒はとうとうくの字に折れ曲がってこれ以上の撃墜は期待出来ない。「残り一本科、鬼族似産まれて恵まれた体格模案外役似立たない日牙来るとは那」
「どうだ、カーモネーの……えっと--」
「カモダルと申しますね」と齢二十二にして二の月と十二日目に成る既に一族全員帰化したばかりのテレス鴨族のカモダル・カーモネーは逆に尋ねる。「それで何を頼みますかね?」
「至急ゴンデルゾに連絡を。未だ泥の荒野を突破出来ずに苦戦してる、と」
「了解したね」
 こうしてカモダルは首都タイガーフェスティに向けて羽ばたく……筈だった--突然、カモダルの胸部に銀河連合鴨型が放った望遠刀によく似たそれらで放った何かが突き刺さる!
「役、目、果たせず、ね」
 カモダルはそのまま頭部を下に向けて落下。間違いなく死亡した。
「ああ、カモダルが」
 斬弥は後一回使える古式神武包丁を右手にしたまま両膝の力を抜く。意気消沈する斬弥の背後まで迫った梟型が奇襲。開く口は斬弥の首元目掛ける!
 やらせるかあああス--その雄叫びの主は齢二十七にして十の月と十日目に成るメデス蟷螂族の青年が蟷螂式雄略包丁を投げて見事に梟型の首元に命中させ、斬弥を救った。
「あ」斬弥は梟型が絶命する瞬間を目撃。「俺はまた助けられたのか?」
「全く貴方は七弓様とは別の所で心配に成る御方ス。それでは先に想念の海に旅立った兄が悲しみまス」
「御免、ジンデレスの兄さんはどの兄さんなのかわからん」
 尚、蟷螂族も多産型の種族の為にそれに精通する生命でないと誰が兄弟なのか判別が難しい。それでもジンデレスの兄と思われるとしたら真正神武で果てたジンデントの事だろう。
「まあ良いでしょうス。生命には誰しも……じゃなくて」投げた蟷螂式雄略包丁を抜くと直ぐ様ジンデレス・ムシャリーニは己を中心にして正面、後ろ斜めに方向から迫り来る犬、猿、雉の銀河連合に対処するべく蟷螂の構えを採る。「何時までもやられる蟷螂族ではないス」
 蟷螂の構えは対銀河連合用にジンデレスが発明した蟷螂族専用の構え。一聞すると現代の世にもありそうなあの構えのように聞こえる。だが、異なる。現代の世の構えはあくまで人族が蟷螂族の真似をして開発した一種の踊り。こちらの場合は蟷螂族にしか使えないように作り込まれる。その為に力で抑えられれば両刃で後方に投げ、高速で迫るのなら片方の刃で軌道を固定させながら間を合わせて交差斬撃を加え、技で迫るのならば歩法で巧みに決まらせないように誘導する。正に蟷螂族だけの構え。
 この構えを繰り出す事でジンデレスは三体の銀河連合を一カ所に集めて串刺しにして見せた!
「フウス、これで右の包丁は使い物に成らなくなりましたス」
「助かった、ジンデレス」
「しっかりして下さいス。演説ではあんなに勇ましい貴方様がまだ拠点型銀河連合にも到達してないという状況で何をしておりますかス」
 そうだったな--と斬弥は道半ばである事を自覚した。
(何の為に剛胆の三つを会得して疾風の舞を学び直したんだ。七弓の分まで取り戻す為にここまで来たんだろうが! 全く俺とした事が)
「下を向いていたら一兆年の神々は呆れて物が言えなくなってしまう。だったら俺は」斬弥は深呼吸した後、両眼を限界まで開いてこう絶叫。「上を向いて無意味に叫んで落ち着かせるぞおおおおお!」
 その叫びで動きを止めるモノは……銀河連合--彼らは律儀に動くのを待つ遠征部隊の面々を前に恐怖を覚える。
 その恐怖で前に進む意欲を無くしてると気付いた遠征部隊の面々は心の劣勢を覆し、一気に畳み掛けるのであった!
「さーっきは良くーも仲間達をおおおお!」
「いんこぞくのそこぢからをみせるわよ!」
「新天神武までやって来たわしの力を思い知っだあああ!」
「そっれはあたしも同じっしょ」
「兎族はああ忙ああしいけええど、亀族はああそおおれに付いてええゆくのおおで精一杯いい」
 と各種族が入り乱れて後ろに下がった銀河連合の隙を見逃さない。それは生命にはやらない銀河連合が使う恐るべき戦略を掛ける余地さえ与えない程だった。
「退いてるぞ、これだ。ここで畳み掛けずして何が奪還だあああ!」
 斬弥は尚も叫ぶ--第一防衛線を突破する為ならば例え喉が枯れてもやるしか道はなかった!
 そして午後五時五十八分五十一秒……ようやく第一防衛網の突破を果たした!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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