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一兆年の夜 第五十五話 再誕の火 日は火を呼び寄せる(三)

 二月十三日午前四時一分十一秒。
 場所は古式神武と真正神武が正式な形で通行が認められた道路跡。四の年より前に真正神武が喰われるまではここを通行する者は少なくはなかった。だが、喰われた後ではむしろ行き場を無くした真正神武国民の生き残りだけが殺到。当時は大混乱の状況であった。おまけにここには外郭を通り抜ける為の通路穴が建てられる予定だったが、真正神武の一件でそれは中止された。
 さて、そんな道路跡に十三も築かれてある仮設民家。そこには先遣隊凡そ二十三名が共同で見張りをする。見張りとはいえ、本隊が来るまで真正神武後で何が起こってるかを見張る為である。そんな仮設民家を築く事を指揮したのがよりにも依って情けない雄ばかりが連綿と続くタゴラス鶏族の禾野コケ都留とは。
 急いでやって来たのに……あいつを先遣隊長に選んだ俺が馬か鹿だった--と寝る間も惜しまずにしかも息が少々荒い斬弥はコケ都留の鼾を聞いて余計に疲れが回ったような口振りに成る。
「あやつめ、任務乃重要性於知らんようだな」
「まだ叱るのは早い。先ずは先遣隊が全部で二十六名かどうかを確認する」
 斬弥はコケ都留を叩き起こすと直ぐに点呼させた。すると--
「成程……居眠りしたお前も含めて全員揃ってる訳だな」
「といっかみんな監視すっのが恐くて徐々に下がっております」
「いや、それで良い。こうして後ろ向きに考えるのは何も良くないと断言するのは早計さ」
 俺なら前に出るがな--と齢二十一にして二の月と十一日目に成るロディコチーター族の青年は生意気にも私語を口にする。
「こっら、チーチョス! 何時斬弥様が私語をしっろと言ったかあ」
 お前に注意される筋合いないんじゃ--とチーチョス・バーバリッタはコケ都留に対して例の失した態度を取る。
「何だっと--」
「どっちも大人げなかろう」とそこに齢二十三にして二の月と三日目に成るラテス燕族のフッドル・メッサーシュミットは既に屈伸を始めていた。「今は万全の状態で臨まれようぞ! フン!」
「フッドルも何を言ってるっか」と齢二十八にして二の月と十八日目に成るメデス蠍族のキッズィ・キシェールは紙を十枚も束ねた物を読みながらフッドルを注意する。「ってか筋肉鍛錬するのは余り良い事じゃなっだ」
「キッズィ模何先祖牙記した暦乃神於読み返してる乃科」
「良いじゃないでっが、こっぐらい。ICイマジナリーセンチュリーの研究を進めなっが何処で計算が変わっかわからっで」
ICイマジナリーセンチュリー……未想世紀乃事科」
 それについてはヤマビコノシデンドウだけでなく、斬弥も興味がある模様。
ICイマジナリーセンチュリーかあ。あれに直せば先祖達の人生はあっという間だからな。一年を四の年経過と捉えれば一般生命の寿命は十年。頑張っても十三年が限度。俺と七弓は十八年。頑張っても二十年行くか行かないかのどちらかさ。こんなにも余生が短いとどんな生命体だって焦りを覚える物。俺だっていつかは焦る日は来るだろう……さて)
 とそこで考えを切り替えて斬弥は先遣隊を含めた全員を仮設民家より成人体型十離れた所に集める。それから彼は用意された台に乗り、演説を始める。
「良いか、お前達。これは古式神武が戦いを望んで進めた奪還ではない。新たな国へと変わりつつある我が古式神武の初陣を飾る為の奪還だ! そこでは銀河連合に依る真正面を臆した戦法が待ち構える。それに依ってどれ程の犠牲が出るかも定かではない。だが、俺達は一名も犠牲者を出さずに果たさねば成らない! これは都合の良過ぎる理想だと誰もが思うだろう! 無論、俺もそう思う! そんなの実現出来る筈もない理想だ。何を根拠に一名の犠牲者も出さず……だ、と!
 だがなあ、向こうだって都合が良いんだよ! 寧ろ都合が良過ぎるんだ! 銀河連合の戦法の中には従来の戦略そして戦術だけでなく、その都合さえ支配して我々を阻みに掛かる! その都合たるや……あのアリスティッポスの悲劇が示しているではないか! 誰もが勝てないと認めた猛者達はその都合に依ってどれ程想念の海へと旅立ったか君達は記憶すると思う? 思わない者は大体を把握しておくのだ! それは斬撃の軌道通りの筈なのに気が付けば軌道が少しずれていたり、もっと良くない時には躱した筈なのに距離を大きく縮めて致命傷を負う程……そう、それが奴らの使うもう一つの戦法の正体なのだ。これはまだほんの一部でしかない。もう一度繰り返す。これは銀河連合に依る都合を使った戦法のほんの一面に過ぎん。その一面だけでも力や技、速さではどうしよもない壁だと理解するんだ。でないと帰りを待つ家族の元に帰還前にその地で果てる事に成るぞ!
 ではそれはどうしようもないと諦めるのか? いや、諦めるのはまだ早い。ここには旧真鍋傭兵団古式神武各地にある支部で活躍した猛者や先に偵察部隊として喰われてしまった真正神武の様子を調べに強行突入して運よく生還を果たした猛者達も居る。彼らならば才能では埋められない経験則を以って対処が可能。そしてもう一つ重要なのがある。それが俺だ。俺が要れば真正神武は奪還が果たせる。何、歴戦の勇士たちに比べて安心出来ないって? 大丈夫だ。俺は強い。疾風の舞どころか剛胆の舞だって極めた。何れ仙者の舞を其処で披露して見せる……約束だ。故に諦めるのはまだ早い……わかっただろう?
 わかったならお前達は気合を入れろ! 気合は胸に残るしこりを外へと流す物! 気合は銀河連合を退ける手の一つ! そして気合は……神々への感謝を示す印イイイイ!
 我々は真正神武を取り戻すぞおおお!」
「「「「「「「「オオオオオオオオオ!」」」」」」」」
 それは真正神武に巣食う銀河連合との戦いがどれだけ熾烈かを大いに逸らす為の演説。斬弥は心の何処かで己に自信を持てなかった。持てないが故に彼は真っ直ぐ仲間の死を見つめる事も己のした罪深さにも目を逸らさなくてはいけない。それでも斬弥率いる遠征部隊に後退という二文字はない。いいや、それが読めない状態であった。
(俺は……俺は)
 斬弥の気持ちを知るシデンドウは声を掛ける。
「遅かれ早かれ前似進むしか道端ありません、斬弥様」
「それでも俺は--」
「その時端意地出模逃げて下さい。それ端誰より模七弓様牙望んでおられます」
 わかった--心に僅かな迷いが有れども斬弥は前に進む事を決意した。
(果たして俺は逃げる事が出来るかな?)
 逃げる選択肢を……いや、僅かな迷いを残した斬弥はそれに依って後々命拾いする事に成るだろう。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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