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一兆年の夜 第五十五話 再誕の火 日は火を呼び寄せる(二)

 二月十日午前六時零分十一秒。
 場所は古式神武首都タイガーフェスティ第二北北西地区。
(俺の為に兵の出立が遅れるのを避けねば成らない。故に先遣隊は先に真正神武へと向かったが、危うく銀河連合の都合が支配する地に一歩でも足或は羽を踏み込んでるんじゃないかって思ってしまったら大変だ)
 斬弥は先遣隊の一名でも銀河連合の領空に踏み入れてるかどうかを心配する。何故心配するのか? それはかつて新国家神武の時代に星央の遺志を継いでアリスティッポス大陸奪還へと向かった八弥やつみなな率いる遠征隊は八弥を始めとした多大なる犠牲を払いながら遂に奪還を果たした。その過程で銀河連合に支配されたアリスティッポスの地で常識では考えられないような現象が起こった。躱した筈の攻撃が何故か当たったり、当たったと確信した筈の攻撃が何故か躱されたり……挙げればキリがない程の。そんな数々の現象に対して八弥を始めとした凄腕の猛者達は為す術もなかった。
(だからこそ俺がそこへ辿り着くまであいつらには完全な待機命令を出したんだ。少しでも踏み込めば銀河連合の思う壺だという先者達の教えに従ってな。いや、俺しか居ないというのもそれは少し都合が良過ぎる。都合が良過ぎるのは認める。それでも真正神武の地を取り戻す為には俺が向かわないと少しでも銀河連合の都合を打破する術はない。幾ら歴戦の猛者達を何名集めたとしても大き過ぎる条件の前では何名たりとも無力に等しい)
 そう、斬弥の考える通りアリスティッポス大陸を奪還出来たのは七が居たからである。但し、七が決して凄い猛者であるという証明には成らない。七は歴代の仙者の中でも下から数えた方が良い程に実力者には程遠かった。それでも奪還出来た要因なのは彼の持つ仙者という特殊な条件のお蔭だという事を。
(だからといって俺を入れたくらいで簡単に奪還出来るとは限らない。七だってそれくらい知ってるからこそ周りの者達に支えられて最後まで引っ張る事が出来たんだ。そうだ、俺だって完全じゃない)
「何於入れ切った状態出居ます科那?」そう声を掛けるのは齢三十一にして八の月に成ったばかりの神武鬼族の中年は励ます。「そんな乃出端七弓様だけ出なく、弓八様也七斬なきり様だって困りますぞ」
「弓八は兎も角、七斬はまだわからんだろ。まあ連続して仙者なのは良いけど」
「です牙、連続してる乃端雌出ある事実模です那」
 そうなんだよなあ--と斬弥は連続して雌が産まれた事に将来を憂う。
(確かに雌は生命を産み落とす神聖なる性別ではある。けれどもそれは雄が居て初めて成立する。雌単体で子を儲けるなんぞ御器被ごきぶり族のような奇妙な生殖を可能とした種族や我々にとって最大の存在である銀河連合くらいしか思いつかん。もしも雌だけで何とかやれたら……はないか)
「心配です科?」
「ああ、七弓は直ぐ無茶をしてこちらまで駆け付けるだろうが……子供を産んで数の日しか経たないあいつならそこまではやらない。やらないとは思うけど」
「そっち乃話出端ありません、斬弥様」
「ああ、今後の憂いか?」
「ええ、このまま雄乃子牙産まれず似天同端途絶える事似成った斗したらこれほど悲しい事実端ありません。一体何牙天同乃代わり於務まりましょうか!」
 そうだな--そう言ったが最後、斬弥は私語を閉じて先遣隊の居る陣地へと陣頭指揮を務める。
(凡そ七百の年も連続させてきた天同家の未来か。俺にはそれはわからない。わかるのは一兆年の神々のみ。彼らは時の流れではなく、時の全体像を見て先を……そうだ)
 そこで斬弥はある過去の証言を思い出した。それはちょうど十六の年より前の話。
(そう言えばある山椒魚族の青年……今では多分老年に成ったかな? 彼が遥か明日の年よりやって来た天使族という聞きなれない種族の話をしていたな。実在を示す証拠は見つからないが、その雄に依ると何でも……だとすればまだまだ希望を諦める訳にはゆかんのだな)
 明日の事が本当だとしてもそれを今を生きる者達に聞かせても納得いくかは定かではない。それは遠すぎる過去に於いても常識として全生命体の遺伝子に刻み込まれる。
 それでも生命はそうゆう空想に等しい話を信じたくなるものであると……斬弥はそれと同じような事を考えながら先遣隊が待ちくたびれる戦場へと向かう。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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