FC2ブログ

一兆年の夜 第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて(六)

 午後六時零分零秒。
 場所は中央地区真鍋傭兵団首都支部。
 それはかつて古式神武政府が政務を行っていた建物。其処に足を運ぶのは斬弥を始めとした最高官及び一部軍者関係者。
 彼らが尋ねるのは支部長を務める齢四十八にして五の月と五日目に成る藤原熊族の老年藤原クマ玄。その雄は威厳の溢れる座り方で真っ直ぐ見つめる。
(こちらを戦いに詳しくない生命として真っ直ぐ見てないな。悔しいけど、俺には疾風の舞の三つ以外はあんまり極めてないからな)
 尚、疾風の舞の三つの型については後程語られる。さて、ここでは斬弥はクマ玄と対等に話し合う為にマルータとタイガーバランダス、そして古式神武軍者長を務める齢四十七にして九の月と九日目に成るタゴラス駱駝族の老年林原コブぞうを連れてわざわざ五階にある支部長室まで駆け込んできた。
「フハハハッハア!」
「何がおかしいじぃ、クマ玄先輩じゃあ」
「いヤア、まさか洟垂れ小僧のコブ雑まで気負ったカア。てっきり想念の海に一足先に旅立ってると思ったゾオ」
「それはわしの台詞じゃあ、クマ玄先輩じぃ」
「コラ、喧嘩するな。俺達はこの爺さんに頼んで是非とも古式神武全体の真鍋傭兵団を真正神武後の銀河連合の巣への侵攻をする為にお願いしに来たんだ」
「何ジャア、そリャア!」
 立ち上がって両前足で斬弥の両肩を掴むクマ玄。意外と力が掛かって痛みに悶える斬弥は喋る事の出来る範囲でもう一度お願いする。
「イデデデ……だから支部長でしかも歴戦の勇姿たる爺さんにこうして小数を連れてお願いしに来たんだ。幾ら平和に呆けても今の銀河連合の粋がる姿は怒りで燃え盛るだろう?」
「わしみたいな老いぼれの言う事を今の若造共が聞く物カア」
「わしだって頼んでるんだじぃ。この通り、前後両足を屈伸し更には首を曲げてまで頭下げてるんじゃあ」
「それでもわしは断るゾオ」
「銀河連合は今度、真正神武の土地を利用して数を増やしながら一気阿世でここを落としに掛かってもなのか?」
 無理ジャア、わしのような老いぼれでイハア--とクマ玄は頼みを断る。
「そこを何とか……出来ればこの支部の連中全員を使ってでも他の支部の連中にお願いを」
「コラア、わしの大事な部下達を私物にしようとしてるナアア!」
 斬弥は久方振りにクマ玄の十連平手打ちを受ける--実は成者式の時にも一度だけ受けた事があった。
(はああ、死ぬかと思った。全く俺じゃなかったらどうするんだ)
 因みに故意で同族を死なせる事はない。それは一兆年という長い歴史を見ても故意で同族を死なせた生命は何処にも存在しない。これは念頭に置こう。但し、それは己の力であって間接的には死なせる事は多分ある。其処に関しては現代の時代であっても議論の的である。
 さあクマ玄の十連平手打ちからようやく立ち上がった斬弥は窓の方から異なる気配が来てる事に気付く。直ぐ様、『疾風の舞・弥』で素早く窓近くまで移動。それから窓を開けて体の半分を外に出した状態で下の方角に右手を伸ばして気配のする何かを引っ張り上げる--それは人族の雌だった!
 彼女は斬弥の援護で支部長室の中に入るとすかさず左頬を斬弥に叩かれる。
「何故叩いたかわかるだろう?」
「痛いよ、肌が荒れたらどうするのよ」
「斬弥様、反省の色が--」
「あ、御免ね。今のは冗談だとして君はあたいの事を想って叩いたってのは知ってるわ。だけど、あたいは君の傍に居たいの」
「だからって無茶は止めるんだ。それに古式神武に関わり過ぎだ」
「それでも--」
「待テエ、二名共」クマ玄はそれから深呼吸した後、大声を発する。「夫婦喧嘩は家でシロオ!」
「ああじぃ、その通りじゃあ」
「そうんそうん、ここは夫婦で喧嘩するん場じゃない」
「多数決で圧倒的に俺達の意見が勝リマスネ、斬弥様」
 お前ら--と斬弥は揶揄われてる事に苛立つ。
「まあまあ、そうゆう所ではまだまだ君も子供だね」
「七弓に言われたくないって」
「ハッハッハア」とクマ玄は真面目ではない空気に晒されて肩の荷が下りたのか、次のような事を言いのける。「そこまでの事をするならわしも残りの余生を斬弥様の望む事を実現する為に投げ出そうではないカア!」
「まさかクマ玄先輩は--」
「間の違う事を思うでナアイ。わしは余生の全てをそこに注ぎ込むのであって実現するかは別ダア!」
 いや、十分さ--とクマ玄の両前足を両手で掴んで喜びを見せる斬弥!
「よセエイ、斬弥様。照れるではないカア」
「あら、あたいは登り得しなかったよね」

 午後十時十分十秒。
 場所は古式神武聖堂。
 天同九八の間にて斬弥と七弓は舞を見せる。七弓は剛胆の舞を、斬弥は疾風の舞を。
「流石ね、斬弥って」
「そうかな? 君みたいに基本が忠実な動きじゃないと思ったけど」
「そうじゃないわ。疾風の舞を軽々とやってのける」
「そうかなあ。俺はこっちの方が楽だと思って三つ全て会得しては暇さえあれば再現を怠らなかっただけだ」
「ねえ、その三つともどんなのか教えて?」
「あのなあ、七弓。これは古式神武の象徴だけにしか伝わらない秘伝だよ」
「でも、あたいと君は肉体の関係に成ってるよ」
 君のせいだぞ--と斬弥は顔を赤くする。
「良いから教えて。噂話では『疾風の舞・弥』、『疾風の舞・理』、そして『疾風の舞・恵』という名称だけしかわからないの」
「名称だけわかればそれぞれの名前の元に成る三名の性格を知っていれば自ずと動きは予測出来るけどな」
「どうかしら? 古式神武初代象徴の恵弥めぐみの姉君である八理やつりと二名の父である八弥やつみは古式神武が建国される前に亡くなったと聞くの」
「ああ、そうだったな。だとしたらその二名の性格がどういったのかを知るのは難しいだろうな。まあ良いだろう、説明するよ」
 と斬弥は三つの型全て七弓に語った。それに依ると従来の疾風の舞は八弥が用いる『疾風の舞・弥』。疾風の舞従来の先手ありでありながらも防御を軽視した一撃離脱を得意とする応用中の応用を活かした舞。斬弥は主にこの型を得意とする。だが、慣れない者にとってはこれほど難しい物はない。
 そこで八理は少しでも慣れるように編み出したのが『疾風の舞・理』。これは剛胆の舞の長所である先手無しを取り入れる事で少しでも型を馴らす為に編み出した型。故に初心者向けで意外にも防御重視の素早い動きを可能とした物。但し、少し馴れ出す者にとっては動きが固くなりがちで実戦で使える代物ではないとの事。
 そして二つとも馴らす事が出来ない程に戦の才がない恵弥が妻であるシャオルーの助言を受けて編み出したのが『疾風の舞・恵』。こちらは完全な反撃重視の一撃必殺を可能とした舞であり、尚且つ実戦では一回も使われた事のない代物。勿論、編み出した恵弥は死ぬまで実戦でそれを使わなかったほどの未知数溢れた代物。
 それらを説明した斬弥はお返しに七弓に剛胆の舞の三つを教えるよう七弓に申し出る。
「ええ、何であたいがそんな面倒な事するの?」
「公平じゃないだろ? 君のも教えて欲しい。でないと真正神武で巣食う指揮官型を始めとした銀河連合に勝てる要素がない。それに」
「それに?」
「天同生子にしか出来ない『仙者の舞』が出来るかもしれない。俺達がこうして互いの情報を共有する事で」
「『仙者の舞』……それはやりたいわね」
「どうかな?」
「良いわ、しっかり聞いてちょうだい。見てちょうだい!」
 そして七弓は斬弥に剛胆の舞の全てを見せるのだった。
(これが……疾風の舞よりも実戦に向くじゃないか。全く基本を忘れたら何でも生命は何も出来なくなる。でもこうして七弓は基本を取り戻してくれた。そうだろう、御先祖様!)
 二名はこの後、同じ間に入り、同じ布団の中で眠りに落ちるまで抱き合った……

 ICイマジナリーセンチュリー百七十一年一月三十五日午後十一時二十八分五十四秒。

 第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて 完

 第五十五話 再誕の火 日は火を呼び寄せる に続く……

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR