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一兆年の夜 第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて(五)

 一月三十五日午前六時一分六秒。
 場所は古式神武首都タイガーフェスティ県中央地区古式神武聖堂。
 斬弥は朝五時前に届いた情報を基に早速会議を開くべく未だ眠りから覚めない七弓に内緒で会議室代わりである天同水真の間に向かう。
(彼女を傍に置きたいけど、いきなり結ばれるのはいざという時の為に成らない。妊婦を戦わせたら意味がない。けれども七弓の傍に居たいという欲求が俺の中にあるからな。どうしようかな?)
 斬弥は七弓に思いを寄せるが故に苦しむ。このまま七弓と一緒に寝る事は公では古式神武と真正神武の二つを結ぶ絶好の機会でもあると同時に私では幼い頃に憧れであった姉のような存在でもあり、手を繋ぎたい相手との結びつきでもある。同時に彼女の中に新たな生命を宿すという事は即ち、新たな生命が外に出されるまでは彼女を戦いの場から遠ざける事にも繋がる。それは彼女の望みを一時的に制限する事でもあって斬弥としては悩み所。
(七弓だったら己の事を気遣う暇があるなら欲望の為すがまま……何て言いそうだしな。そんな事を言わせない為に俺は決断を先延ばしする時間が欲しいんだ。今は第三北西外郭を襲撃した銀河連合の事で意見交換しないといけない)
 斬弥は象徴とはいえ、国事行為を果たす為に出席する事が義務付けられる。古式神武ながらの制度であり、どんなに権力を持つ者でも象徴である仙者の……天同家の長の採択がなければ実行に移せない。それだけに出席を強いられる。
(昔からこうゆうのが好きじゃなかった。俺は自由が欲しかった。そして七弓と出会った)
 七弓が眠る間の表襖を静かに開けて彼女の寝顔を確認しようとする斬弥。すると--
「捕まえたよ、斬弥!」
 斬弥は七弓に引き摺りこまれた--しかも布団を被せられる形で!
「何だよ、七弓?」
「こっそり行くんでしょ?」
「それは後にしてくれ」
「駄目、斬弥。あたいは寂しいの」
「だから午前中の会議が終わってから君を抱くから」
「今から抱いて」
「話は聞いてる。何でも抱くと疲れるらしいって」
「だから何? あたいが初めてだから舐めてるの?」
「俺も初めてだが……それは後にしてくれ。頼むからそうゆうのは会議が終わった後で良いから--」
「とか言って終わらないでしょ?」
 七弓は斬弥に迫る。彼女は用がそんな短時間で終わる代物ではない事くらい察知。ひょっとするとそのまま首都を出て帰って来ないのかも知れない。それくらい七弓は斬弥に惚れ込んでいた。
「怒られるから。特にマルータが駆け込んで来るぞ」
「だからどうしたの?」斬弥の唇に接吻する七弓。「年上が良くない?」
「溺れてしまう。それは本当に会議の後……後にして、くれ、七弓」
「いいえ、今から……やるから」
 七弓の強引な押しは斬弥をそのまま溺れさせた。
(済まない、マルータ。済まない、タイガーバランダス。済まない、他のみんな。俺は会議に遅れてしまった)

 午前九時十八分十四秒。
 場所は天同水真の間。襖をゆっくり開けて転がるように入る斬弥。既に何か良い思いをしたようで少々疲れが見える表情で象徴が座る特等席に腰を下ろす。
「大丈夫かねエエス?」
「そこは、お早うだろう?」
「アアス、お早う御座います斬弥様アアス」
「随分遅れたみたいだが、まあ子作りは次世代へと繋げるん頼もしい行いだと思います……あ、お早う御座いますん」
「お早う御座います、斬弥様。会議の内容はわかりまちゅよね?」
「ああ、昨日と今日の境で第三北西外郭にて銀河連合が襲撃して僅か三の分より後に全滅したのは四の時より前に耳に届いた」
「ほら見ろっち! 七弓様と斬弥様の仰った通りに成ったではないかっち!」と言った後、イタトリノは遅い挨拶をする。「あっち、お早う御座います……すみませんねっち、少し熱くなりましてっち」
「別に良い。俺もここに来るまで怒られるかと思って熱くなってしまった」
「別に怒る訳ないですねエエス、斬弥様アアス」
 え--斬弥は誰も怒る雰囲気を見せない事に少々驚きを隠せない。
(どうゆう事だ? 会議には遅れるな……って昔からみんなは耳に蛸族のような吸盤が出来るくらい注意してたんだけど。だけどなぜこうゆう時に限ってみんな怒らないんだ?)
「ア、礼を失シマス」襖を開けるのは齢十九にして十六日目に成るルギアスカンガルー族の少年が中に入る。「少しの間、斬弥様をお連れして宜しいでしょうか?」
「アアス、別に良いぞオオス」
「って何勝手に--」
「さあ、斬弥様。こちらヘ」
 少年に左手首を掴まれて間の外に連れ出される斬弥。

 午前九時二十五分四秒。
 外にて二名は会話する。
「どうゆうつもりだ、マルータ!」
「実は七弓様カラノお願いでみんな斬弥様と子作リスル事は知ってイマシタ」
「つまり七弓は初めから俺が会議に遅れる為の下準備を」
「そうデス。申シ訳ありません。でもお許シヲ。七弓様自らお願イシタ事であります」
「益々落胆させられる。その為に俺に会議への参加をさせないなんて」
「心配要リマセン、斬弥様。世論は……国民ハモウ厭戦気分でいる事はもうありません」
「やはり届いたんだな、七弓の声が」
「ええ、なので会議は直グニ終わるでしょう」
 それでも俺が出席しないようじゃあ意味がない--と言って斬弥は間に戻ってゆく。

 午前十時二分十一秒。
 場所は天同水真の間。
「成程、未完成の外郭での工事は中止。それから真鍋傭兵団及び新天神武から応援要請して少しでも現状を良くしようと試みてたんだな」
「エエス、我々も平和を求める為には戦うしか道はありませンンス!」
「戦いの無い時代はいつ訪れるんかわからないけど」
「民主主義に照らし合わせちぇも私達は起ち上がる時でチュ!」
「そんなの当たり前だっち! 何もせずにやられるという経験を昨日と今日の境で思い出しただろっち!」
「イタトリノの言う通り。平和に成れるのは銀河連合を全て倒すまでだ。だが、それは果てしない道である事も重々わかる。なればこそ俺達がやるべきなのは古式神武を守る盾ではない。喰われてしまった真正神武に乗り込んで巨大な銀河連合の巣を倒す事だ!」
「ですがアアス、斬弥様アアス」
「計画がないって? これからそれを話し合う為にこうして設けたんだろうが。だがなあ、今までどうして受け身の議論ばかりしたか! 議論とは前向きにやってこそ意義があるんだろう! 受け身で議論するのは死んでいった者達に腰を抜かしたと言ってるような物だ! それじゃあ銀河連合に攻めて下さいと言ってるような物だろう!」
「確かにそうんだな。それで残り時間は……どうしますん?」
 あ、そうだな--正午を回ると会議は終わる事を知ってる斬弥にとっては短い時間というのはどれ程悔しい物かを抑揚のない呟きで示す。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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