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一兆年の夜 第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて(三)

「初めまして、そしてここで改めてあたいと面と向かう前に遭った事のある生命達には改めて自己紹介します! あたいが真正神武最後の最高官にして真正神武最後の仙者……天同七弓と申します。
 今日こうして古式神武の皆さまの前に出たのは真正神武の現状が如何成った事や今後古式神武にも来るであろう銀河連合に依る襲来、そして古式神武はこれからどう舵を取るのかについてもここであたいは主張するよ!」
 最初の理由、次の対策は主語を負かされた者達は落ち着いて聞ける。だが、三番目の未来については流石に内政への口出しに等しかった。流石に他の軍者達は声を出そうとしたが--
(俺があいつらを黙らせるのかよ。全く七弓ってこんな性格だったのか。何か少し落胆する気持ちに成った。で、でも……七弓に口出しさせるのは良くない。俺が止めてやる)
 と斬弥は口を出そうとする軍者達の方に体を向けた。そうする事で「これは俺が許可した演説会だからお前らはどんな事を言っても絶対に口を挟むんじゃない」という無言の圧力を彼らに与えた。
「有難う、斬弥……あ、話だったね。そうそう、あたいはこの通り逃げて来たんだ。泥に塗れて一時は雌の大事な肌を穢したんだよ。それでわかったんだよ。みんなとは特別でもいざ逃げてゆくとみんなと全く変わらない何処にでもいる生命だって思い知らされた。其処には銀河連合に感謝しないといけない。でも同時にそんなあたい達と変わらない真正神武の生命が銀河連合に依って呆気なくその生涯を終わらせる事に対して怒りも覚えるのよ。あいつらにはあたい達と同じような悲しみも苦しみもわからない。ひたすら利に適う事しかしない。理ではない。利だから。それが銀河連合という存在なの。その存在は真正神武を食らう為にやったのは未だあたい達が何の対応策も採れない空からの襲来だよ。空だよ。それに依って仁徳島は食われたんだよ。空だけじゃないわ。既に喰らった仁徳島を拠点に海から陸に上陸して一気に畳み掛けたんだよ。その結果が、あたいを泥に塗れさせて逃亡させたんだよ。その結果が家族のように大切に思っていた重臣達の死なのよ。許せないのよ、あたいは。許せないからこそあたいはこうしてここまで逃げて来たんだから」
 既に七弓の瞳から溢れんばかりの涙が流れている。本当はもっと語りたい七弓。けれども語れる量は首脳陣が決めた制限時間内に収めないといけない。そんな悔しさも籠められていた。そんな涙溢れる七弓は次に訴えたい事も語り出す。
「逃げてきたんだからあたいはただ指を咥えてこんな所に住むんじゃないんだよ。古式神武だって今と同じように……いえ、それ以上に危機が訪れようとしてる事をあたいは訴えに出たんだからね。何時までも怒りから逃げないで! 何時までも穢れた心を恐れないで! それから何時までも銀河連合が解り合える存在だと思わないで! 銀河連合と解り合えるなら奴らが流れ星で初めてここを訪れた時に既に果たせた筈なのよ! 体をぶつけあう和解も、親善大使に依る銀河連合への差し出しも結局は奴等を勢いづけるだけで何の効果も無かったんだと気付いて。後は銀河連合の卵から奴らを生命のように育てるのも意味がないんだよ。奴等は生まれる前から既に心は銀河連合なのよ。銀河連合は何もあたい達をどうやって苦しめるか、どうやって笑いたてるか、どうやったら空と美味しいのか、それだけしか考えてないんだよ。だからこそ銀河連合は平気であたい達と和解しようなんて考える振りが出来るから。いい加減、そんな常識を思い出して。銀河連合は全生命体の敵が倒すべきなのよ!」
 逃げて来たからこそ生まれる説得力。命を懸けてここまで逃げて来たからこそ醸し出される魂の叫び。誰もが彼女の演説に共鳴する!
(わかるよ、七弓。君はあいつらから逃れるためにそこまで命を懸けている事も……わかるよ、七弓!)
 そう思い、斬弥は涙を堪える。その理由は後で明かされる。
(良くない。今は……今は七弓の演説を最後まで聞かないと!)
 さて、七弓は最後の項目について語り出した。
「そしてあたいはこんな古式神武ではいけないと考える。古式神武はもっと銀河連合と真正面から向き合える国に成らないといけない。このままではあたいの故郷である真正神武と同じように喰われてしまう。そんなの良くないんだから。だからこそあたいはこの国を真の意味で変える。それは三国分量宣言をした新天神武初代最高官天同七の考えに通じるのよ。七はあたいの国と斬弥の国が--」
 そこで思わず、自分の名前が出された事に唾を誤って飲み込んで咳き込む斬弥。
(七弓……本当に落胆させられる。そこで俺を巻き込むなんて雌としてどうかと思うけどな)
 とはいえ、流す涙を咳き込むせいでつい出てしまったという理由付けが出来た斬弥ではあるが。
(こんなの銀河連合と同じだ。俺はこんな理由が欲しいんじゃないんだけど)
 真実でない事は全生命体が好まない。故に斬弥もそんな理由を好まない。
(そろそろ落ち着いた所か。一応感謝もあるんだよ、七弓)
 と感謝の思いを胸に仕舞いながら七弓の演説を最後まで聞く事にした斬弥。
「--ええ、とそうそう。新天神武初代最高官七はあたいの国と斬弥の国が何れ一つに成る事も想定していたんだよ。だからこそこうゆう危機が起こる事も七は想定していたんだよ。だからさあ、あたいはこう宣言する」
 そこから七弓は深呼吸……そして--
「何れ古式神武は新しい国へと再始動する事を!」
 それは七弓自身が思いつきで発した言葉だと理解する。だが、当の七弓は七が魂と成って自らに言わせたと述懐。
(七弓……益々落胆してしまう。もっと考えて台詞を出してくれ。こんなのあからさまだろ)
「あ、他にあるって? ないよ。あたいはあいつらを見返してやりたい為に斬弥に頼んでこれを開いたんだから。ハハ、どうだ思い知ったか……ってな訳で演説は終わるよ」
 締りは誰が聞いても良くない。それでも締まる際に勇ましい笑みを見せた七弓が無理してるのを後ろ姿で気付いた一部国民は拍手する。それは後で理解する生命に波及し、更には学問に疎い生命にも波及して拍手の合唱を起こした。
 さて、七弓が無理してるのかについて。実は彼女が後ろを振り向いた時に表情を確認したのは斬弥だけ。彼だけが七弓が顔を崩してまで号泣してる事に気付く。
「顔を見せるな、七弓。俺が君の顔を覆い隠してやるからさ!」
「泣いてちゃあ覆い隠せてないでしょ!」
「馬か鹿か! その為に俺は堪えたんだよ! 君はああして育ちの良くない雌であるように見せて本当は心優しくも脆い生命である事を気付かせないようにしてるのはさあ」
「全く君は変わらないのね」
「それは七弓だって同じだろうが」
 そうして二名は群衆の波を泳いで帰路へと向かうのだった……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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