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一兆年の夜 第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて(一)

 ICイマジナリーセンチュリー百七十一年一月三十一日午後四時十五分二十八秒。

 場所は古式神武首都タイガーフェスティ県中央地区古式神武聖堂。
 その中で立方体にして成人体型二千の狭い天同水真みまの間にして会議室の代わりも担う。そこで斬弥は真正神武最後の最高官である七弓を連れて来て会議を開く。
 本来、中央官邸が存在していた。だが、平和な時代が長く続いたせいで首都は徐々に平和的な活用を試みる。その為、中央官邸は現在では真鍋傭兵団古式神武支部として活用される事に成った。それの意味する所は何か? それは中央の文民化を促してゆき、次第に軍者の数も減っていった。要するに今の国は傭兵団頼りと化していて、軍はまともに機能しなく成った。依って従来なら中央官邸という政府専用の施設でやる所を余った間でやるという何ともし難い状態へと転がった。
 原因は平和が進行して本来あるべき全生命体の穢れ無き心の再来が齎したのか? それとも時代の流れなのか? 誰にもわからない。
 そんな経緯よりも先にやるべきは会議の内容だろう。
「はあ!」
「これは決定じゃアアス。今更方針は変えられなイイス」
 齢二十一にして一日目に成る神武人族の青年にして象徴を務める天同斬弥は平和に呆けた首脳陣の対応に難色を示す。
「わかってるのですか、タイガーバランダス! 予定調和をしてる場合じゃないんだって。今だって多くの生命が銀河連合に依って生きとし生きる命を食われてるんだよ。こんな時に予定通り軍の縮小は余りにも楽観的過ぎます」
「楽観的じゃないとか楽観的とかそうゆう問題じゃなイイス。一度決められた方針を変えたらよくない事はわかりますかアアス」
 齢四十にして七の月と二十八日目に成るルケラオス虎族の老年タイガーバランダス・佐々木は頑固極まりない。
「それじゃあ首都の名前にも成ったタイガーバランダスの先祖タイガーフェスティが怒鳴り散らすぞ!」
「わしだって苦労してるんじゃよオオス。でもなアアス、斬弥様アアス。どうして前もって相談しなかったのですかアアス?」
 ウグ--斬弥は言葉を失う。
(俺が稽古ばっかり考えていたせいでほとんどをみんなに任せっきりだったせいで。何も言えないな、そりゃあ)
「全く呆れるよ」とそこで齢二十七にして二十七日目に成る神武人族の女性天同七弓が口を挟む。「そうやってこの子のまかせっきりな部分だけを取り上げてさも自分達の主張が正しいと押し通して」
「いいや、正しいんだよ」反論するのは齢四十一にして十一の月と二十八日目に成るキュプロ栗鼠族の老年。「今まで任せっきりだったのにここに来て口出しするんのは少々勝手が過ぎますん」
「それは御免。俺は全然そうゆう事がわからないまま育ったんだ。親父だって俺に何も言ってくれずに」
「太山様は最後まで甘やかし過ぎましたねエエス、そうゆう部分ではアアス」
「言うんな、タイバラ」尚、老年ドリスデン・メデリエーコフは愛称呼びするタイガーバランダスより前の最高官。「俺も平和に流された首脳陣をどうにかしようんとしたけど、結局どうするん事も出来んかった。まあ俺も力が足りなかったせいだけどな」
「ああ言えばこう言ちゅ」そう口にするのは齢三十七にして十の月と二十九日目に成るタゴラス鼠族の老年にして一民主派であるサムドン・チューバッハ。「でもね。国民の声を無視しては私達首脳陣は銀河連合と同じく勝手気ままに成りまちゅ」
「その国民が今っち、銀河連合に対して再び怒りを覚え始めたんだぞっち!」齢二十四にして二の月と四日目に成る応神鼬族にして一戦闘派のタケナカノイタトリノは叫ぶ。「何で先祖返りしてまで戦いから逃げようとするっち!」
「戦いは穢れてまちゅ! その声は今でも国民の心の、いえ精神の叫びでチュ!」
「そうだそうーだ!」
「何で戦わなくちゃいけないーイんだ」
「もうたたかうのはこころがくるしいんだ、けんこうてきではない!」
 国民だけではなく、多くの首脳陣の意見は常にそれで占められる。既に全生命体は厭戦気分で満たされる。
(みんな戦いたくないって。そんなの俺にはわからない。どうして戦いから逃げようとするんだ! 政治はどうしてそこまで戦いから遠ざけて傭兵団にばかり任せようとするか! 真鍋傭兵団だけでは対処しきれない問題なんだぞ。真正神武が喰われたというのにどうしてみんなして!)
 斬弥は押しが今一つであったのか、常に何かと言い包められる。そんな情けない姿を見た七弓は中央に立ってこう主張する。
「全く情けないね! そんな姿を見たら先に想念の海に旅立った多くの英霊たちはどう思うかな? きっと望みを失うでしょうね」
「部外者は引っ込みなちゃい!」
「部外者じゃないよ! もう彼らに痛過ぎるほど痛め付けられたされた真正神武最高官の天同七弓その者だからね!」
「それでも貴女様は部外者でちゅ! そうやって痛い目見た側に立って我々古式神武のやり方に口を挟むのは民主的ではありまちぇん!」
「民主的……じゃああたいがその国民に訴える事が出来れば少しは心動かせるの!」
「待て、七弓! あんまり前に出るな、銀河連合がまだ蠢いてるぞ!」
「それは出来ない相談でちゅ……」と断りの言葉と同時にサムドンは次のように誰かに尋ねる。「他の者の意見はどうでちゅかな?」
「私かっち。私は民主派じゃないっち」
「わしは貴重な真正神武の生き残りである七弓様に無茶を刺せる訳にはゆかンンス」
「俺も同じだ。七弓様は真正神武側の貴重な仙者で在らせられるんお方。そんなの許可するん訳がない!」
「俺模同じだ」
「私もですね」
「そうですそうです」
 ほぼ全会一致で彼女が外に出る事は了承されなかった。だが、彼女の大胆な行動に感化された生命が一名。
(だと思ったさ。だから言わんこっちゃない。でも俺は如何だ? 俺は直ぐ引っ込んでしまう。そんなの……一名前の雄として相応しくない!)
 斬弥も又、七弓の傍に立った!
「みんなが反対しても俺は七弓の味方だ。こんな時に雌を前に出すなんて雄らしくない! 格好良くない! だからこそ俺は」斬弥は一瞬だけ両眼を瞑った後、最大限まで広げた状態でこう訴えた。「俺は七弓の願いを叶える為にお前らの意見を無視して彼女を国民の前に立たせる!」
「何だってエエス!」
「それは出来かろう相談であられます、斬弥様!」
「象徴は政府の方針に口を出さないというん決まりを視ないつもりですんか」
 誰もが斬弥の口出しに異議を唱える。だが、当の斬弥はこう断言した!
「確か機能が全くしない場合は自ら前に出てやるのが古式神武のやり方じゃないのか! こんなにまで成ってまだ慣例に縛られるのか、お前達は!」
 それから首脳陣の意見を視ないように斬弥は押し通してゆく。緊急時の己の役割や真鍋傭兵団との連携の強化。それから喰われてしまった真正神武への奪還作戦等々……だが、どれも斬弥がその場で思い付いた物。依って皆が皆、難色を示した。それでも斬弥としては少しは首脳陣の心を動かせたと感触を示した。
(行き会ったりばったりな現状ではある。俺だってこれが無茶苦茶なのは重々承知さ。それでも今の状態を少しでも前進させる為には無茶苦茶でないと良くないさ。良くないさ)
「よおくわかりましたアアス。ですがアアス、斬弥様アアス」
「ああ、反論が来る事は十分知ってる」
「ならばわかるでしょウウス。今のままではそれら無茶苦茶な意見は承諾しかねまアアス」
 だと思った--と肩を崩す斬弥。
「ですがアアス、七弓様が国民に直接声を掛ける事については考えが変わりましたアアス」
「本当か、タイガーバランダス!」
「えエエス、みんなの意見は全会一致でエエス」全員の眼を見回りながらタイガーバランダスは次のような事を口にする。「七弓様のお守りは是非とも斬弥様自らやって下さイイス。勿論、我々は誰一名として政務を全うしまアアス」
 は--尚、斬弥の籤引きは余り宜しい物ではない。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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