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一兆年の夜 第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官(再)

 午前九時二十八分十二秒。
 残り一回。七弓は苦戦していた。蝸牛型と混合土竜型を一刀に斬り伏せる事が出来てもそれ以降に成るとまるで己を盾にして惹きつけられる間に背後から襲われる事が度々あった。しかも己を盾にするモノは何故か七弓の動きを理解してきめ細かく辺りを逸らしてゆく。そのせいで七弓はここに来て傷を一つや二つ増やしてゆく。息遣いも荒い。彼女は演武の一つである剛胆の舞を全て駆使して銀河連合に対処した為に思った以上に体力を消費していた。
「はあはあ、まさか真正神武を喰らったあいつらと同じなの?」
 七弓は幾つかに気付く。自分の動きが読まれるのは既に動きを経験してる事。
「それから剛胆の舞に頼り切ったあたいへの攻略法も承知だね」
 元々剛胆の舞は演武の一つであり、それだけでは結局は一つの型に集約される。集約されるという事は自ずと対策も採られる。
「後は……これは言い訳だよね」
 七弓の肉体がまだ本調子ではない事。肌の荒れは結局の所、肉体の荒れにも繋がる。それでも七弓は本調子じゃない肉体のせいには出来ない。どんな調子でも今以上の力を出す事を念頭に置く七弓にとっては言い訳など出来る訳がない。
 それらを総合しても七弓にとって利がない事は避けられない。それでも七弓は全生命体の希望として呼吸を整えてゆく。歴代で極僅かしか再現出来なかった『仙者の舞』で少しでも形成有利に持ち込みたいが為に。例えそれが食い下がりでしかないと知っても。
 だが、銀河連合が呼吸を整える時間を与えるとは思えない。その通り--一斉に飛び込んで来た!
 と、その時だった! 飛び込んだ全ての銀河連合の身体に物部刃が突き刺さり、七弓に避難する時間を与えてくれた!
「これは……遅いわよ、ゴンデルゾ!」
 間に合っいましたね--ゴンデルゾは一小隊を率いて馳せ参じた!
「ところで兄さん」
「何だい」齢二十八にして五の月と十八日目に成る神武猿族のミチナカノゴンデレザが質問する前にこう答える。「あの方が真正神武最後の最高官で在っらせられる事は既に承知だ」
「でっすよね。じゃあお助っけに行っきますかあああ!」
「そうっゆう事だ。第二射準備良っいかあああ!」
 放てねえええええ--決まりの良くない鴨族特有の訛りと共に第二射は放たれる!
 増援として地上に顔を出した銀河連合十八体中八体に命中、内七体が活動を停止。
「凄いね。これなら--」
「余所見っしては良っくないです、七弓様ああ!」
 え--余所見とは即ち、七弓の足下から蛇型に等しい何かが足を絡めて彼女を地中に引き摺りこんでゆく!
「これしきのおお」自らの左足を傷付けないように突きを敢行する七弓だが……「え?」何とその蛇型の皮膚は鉄のように固く、後一回しか切れ味が期待出来ない雄略包丁の先端を折る程の物だった。「本当じゃないよね? 本当じゃないよね?」
 幾ら真っ直ぐじゃない突きでもたったの一回で先端が欠けるほど頑丈な皮膚に七弓は考えが追い付かない。そのまま腰まで引き摺りこまれ、更には胸元。そして右手まで差し掛かった時--七弓は上空を見上げた!
「約束を果たす時だ!」齢二十一に成ったばかりの神武人族の青年は左手で埋まりそうに成った七弓の左手を強く握ると……「銀河連合何かに引き摺りこまれてたまるかああ!」同じく落下して来た齢十九にして十一日目に成るルギアスカンガルー族の少年に自らの右手を両手でしっかり掴まりながら勢い良く彼女を引っ張り上げる。「しっかり気合を入れるんだ、マルウウウタアアア!」
 幾ら蛇型の力が強くてもちょうど滑車で人族とカンガルー族の共同作業に依って編み出された力は引き摺りこむ力を上回った--七弓と蛇型は成人体型三以上宙を浮く!
「無茶苦茶だよ、君イイ!」
「無茶苦茶で良いんだよおお!」青年は左腰に差していた古式神武包丁を抜くと蛇型の天辺から顎の下まで綺麗に切断して見せた。「約束を果たす為だ、七弓」
 それから素早く鞘に納めると地上に落ちそうに成る七弓を両手で抱えながら俯せた状態で顎と両膝を地面にぶつける青年。溜息を吐く七弓。
(恥ずかしいなあ。格好付けたつもりが、ここに来てこんなんじゃあ)
「斬弥様、それで十分格好ハ付イテますよ」
「そうよ、斬弥。き、る……まさか君が?」
「そうだよ、七弓。俺が天同斬弥だ。どうだい、俺って格好良いだろ?」
 そうね、多分--一瞬だけ七弓の肌が綺麗に纏まる瞬間がここに。
「今、彼女ガ」
「あ、ああ。まあ今は肌を覆ってくれ。君はまだ悲しみから脱け出せてないからね」
「気を遣うのね、有難う」
「別に俺はそこまで器用じゃねえ」
 そうして再会した二名。だが、古式神武が安心出来た訳ではない。真正神武の次は古式神武が狙われる番。七弓だけじゃなく、既に斬弥もそれについては覚悟を済ませた後だった。
(そろそろここも覚悟を決めないとな。何時までも今のままでは折角未来を輝かしい物にした母さんの思いが踏まれてしまう。そうさせない為にも俺は七弓を絶対に、絶対に!)
 そして始まる二名の仙者に依る物語。果たしてそこには何があるのか? まだ誰にもわからない……

 ICイマジナリーセンチュリー百七十一年一月三十日午前十時零分零秒。

 第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官 完

 第五十四話 再誕の火 男女は運命に導かれて に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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