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一兆年の夜 第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官(六)

 午前十一時八分三十二秒。
 七弓と猿族の中年は生命気のない路地裏にて会話する。話をするとどうやらその中年は七弓こそ神聖神武最後の最高官ではないかと踏む。だが、七弓は自らの素性を何とか言い逃れしようとする。
「それは気のせいだよ、ゴンデルゾさん」
「その言い方は散々『斬弥きるみ』様から聞っかされてます。何故己の素性を隠っしますか。それでは銀河連合の腹が立っつ行為とどう変っわられようか」
「何、『斬弥』だって! あの子はあたいの事を」元来全生命体は隠し事が苦手であった。「いや、誰なんだその偉そうなのは?」
「有無、さっき元が出ってましたが……まあ良っいでしょう。兎に角、七弓様。真正神武の生っき残っりで重要な方である以上は是非とも斬弥様にお会っい為っさってください。あの方は七弓様が居っない事を受っけて日毎に喉を通っすのも苦労為っさってますので」
 これでも会え、と--七弓は肌の荒れ具合をゴンデルゾと呼ばれる中年に見せる。
「そのお顔は!」
「驚くのも無理ないよ。あたいはまだ会わせる顔がない。こんな肌をあの子に見せられない。だからミチナカノゴンデルゾ。暫くこの事は黙ってくれるか?」
「幾ら自分が黙っても噂は広っまりますよ」
 それでもだ--七弓は羽織物で両掌を覆いながらゴンデルゾの前両足を包み込む。
「優っしさが十分伝っわります、七弓様」
「敬語は止めろ。第一あたいはこの国じゃあ只の一般生命さ」
「それが何だと言っいますか! 父方を辿っれば立派に先代の天同豪に辿っり着っきますぞ!」
 全くああ言えばこう言う--と言った後、溜息を吐く七弓。
 それでも七弓の意志は固く、どう頑張ってもゴンデルゾの力では七弓を説得する事は出来ない。
「駄目だと言ったら駄目なの!」
「こんなに頭を下っげているのにそこまで意固地に!」
「雌の気持ちを考えてくれる? 雌は肌が大事なのよ」
「雄はどんな姿でも認っめる物っです」
 だから雄の気持ちじゃなくて雌の気持ちで言ってよね--という風に銃後の分という短い時間の中では七弓の説得へと至らなかった。
 時間も迫る上に七弓の遺志は一日経とうとも揺らぐ事がないとわかったゴンデルゾは情けない背中を見せながら中央地区へと戻ってゆくのだった--後にその姿を見て罪深く思ったと七弓は述懐する。

 午後零時三十八分十一秒。
 古式神武の定めた方針に依ると大道芸の始まりは午前六時以降何時だって始められる。終了時刻は決まって午後五時と成る。それは過剰労働に依って多くの生命を過労死したという天同八弥の失敗談を参考にして古式神武でも大道芸は無理のない時間に終わらせるよう芸を始める全ての生命に伝える。
 さて、そんな前置きを付け加えたのは一重に大道芸の休憩時間は何時頃なのかを説明する為である。休憩時間は決まって正午。しかも一の時しっかり摂る事を進められる。更には食事にも方針があり、それは栄養均衡を整えた食事内容でないと芸に支障をきたすという物。だが、芸にやって来た生命達の中には食事代すらない者も居る。そんな彼らを支援する為に古式神武では食料班が訪れ、彼らに配られる。
 そう、配るのは四名。少ない数ではあるが、大道芸にやって来る全生命の昼食を渡す分には問題はない。問題があるとしたら配られるべき者の中に天同家と繋がりのある生命が居る事。幾ら真正神武の事を知らない若き軍者が居ても熟練軍者は訳が異なる。その中でも齢三十八にして八の月と十五日目に成るセネカコヨーテ族のコヨー・テランダはその物の素顔を見て大変驚く。
「コヨ貴女様は誰かに似てるーテ。コヨでーテ、コヨでも肌が--」
「肌の事言うな、そこの珍しい種族の君!」
「コヨ? コヨえっとーテ。コヨ貴女様は名前を何とおっしゃいますかーテ」
「名前? あれ、そんな登録基準あったの?」
「コヨ教えてくださいーテ。コヨ貴女様の名前をーテ」
 全ての生命体は正直である。なので彼女は白状してしまった。

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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