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格付けの旅 青年デュアンの試練 全生命体の敵との邂逅

 総当たり……それは全ての対戦相手とぶつかる事を意味する。
 といきなり何を語り出すかだろ? 俺は生まれて初めて悪意とぶつかっちまった!
「強過ぎる……予選でお前が出て来るなんて聞いてないぞ!」
「これでわかっただろ、デュアン・マイッダー。お前が目指す道は俺達『全生命体の敵』に滅ぼされる為にあるのだと!」
「そんなわけあるかよ!」































 さて、ここまでのあらすじへと至るまでにどうして俺がそう成ったかについて語らないといけない。それは別に長く成る話ではない。けれども数行で収めるには力技が少々必要に成る。先ずは俺が次の予選会場へ向かう所から始めよう。そこには奥歯をかみしめるマリックが俺を睨みつけ、ラキが笑顔で俺を迎える所であった。
「何だ、マリックも居たのか?」
「あのなあ、最後までチームメイトとして一緒に居なきゃいけないんだよ!」
「そうゆう訳で次のブロック選びには三人一組でそれぞれの会場に向かわないといけない訳よ」
「でも予選三回戦で俺達とぶつかるんじゃないのか?」
「その可能性はないなあ。何故ならそう成ってしまったら予選を勝ち上がる意味がない」
「とマリックが言ってるけど、実際はわからないわ」
「一々俺の言いたい事を遮るように言って……デュアンと同じく嫌な女だ」
「誰が貴方みたいなのに好かれる者ですか」
「喧嘩は本戦に出場してから存分にしとけよ」
「論点が違う。本線で不幸にもぶつかったときに叩きのめすとかだろう、が!」
 面倒臭い野郎だ。この時、俺の中でマリックは嫌な野郎から面倒臭い野郎へとシフト。これも成長する毎に俺の意識が変わってゆく経過の一つだと後に成って実感。
 それじゃあ予選二回戦のブロックは何処かを……『マジカルダーツ』で決めるのかよ!
 マジカルダーツ……それはノーマルダーツに属性毎のポイント制を投入した全く新しいダーツ。基本は中央に投擲する事で高得点を得る方式だが、こちらの場合は属性ごとに核属性の投擲を当てる事で二倍の得点を獲得するという戦略性まで加わる。例えば火属性は赤。水属性は青。風属性は緑等等。謝って緑に火属性の投擲をするとそのマスの得点しか貰えない。逆に対属性、要するに赤に氷属性なんかやれば五割減点されるというシビアなルールが加わる。それだけにこのダーツではど真ん中を狙うよりも他のマスを狙って如何に得点を稼ぐかが重要と成る。補足すると光と闇は対で重の場合は重のマスに当てても得点は五割増しに成るだけなので注意が必要。
 という訳で俺達がやるのは陽属性の盤か。陰属性で投擲するのは避けるべきだな。という訳で俺は……駄目だな--五回方式でやって五つとも盤から外した……投擲の才能はない模様。
「ハハハ、所詮デイズ人は身体能力という物はからっきし駄目だな」
「五月蠅いぞ、マリック。てめえはほぼ全て中央に当てやがって」
「はあ、魔術の才能は恐ろしいのに肝心の身体能力は素人の動きが強過ぎるのね」
「話はそこまでだ。それよりもお前らは何処のブロックに入る?」
「私はDブロックよ」
「俺はφブロックか」
 そんで俺は壬ブロックか。何かが起こるのは間違いない。
 壬ブロックのメンバーは俺を含めて全部で十六人。全員の特徴は面倒なので紹介しないぞ。名前だけを紹介するとアルファベット順でアルケイン・レネイド、ビーバップ・デ・ヴェルージェ、俺、エデーテ・フェテレーラ、ガルス・ボードレール、クライス・フルウルビッチ、マシュー・ディンゴード、ネス・ハターレラ、オルバン・サバラン、ピクシー・ピクサー・タラータ、センテンサー・ソラルディアンヌ、ヤールズ・フランクドール、ヤット・デタン、ユーティリティ・ユウリン、ユックリ・シテ・イッテネ、ワ・オド・ロッタ。正直、この中で知ってるのはクライスだけか。最初にぶつかって真っ向から潰すとしよう。
「ああ、俺に真っ向から勝負する気か?」
「その方がマリックに圧力を掛けられるし」
「マリックさんの為にもお前だけには勝たないとな」
「その前にこのブロック独自のルールを聞かないと不平等だろ?」
「ルールルールと五月蠅いなあ」
「ルールがあるのが公式という物だ。ルール無用なら俺の方が分がある」
「殴り合いなら負ける気がしないのによお」
 生憎そんな土俵に立つ気はない。そんでルールブックは何時提示されるんだ? 総当たりと言っても『ランダムセレクト』だってあるる筈だし。
 ランダムセレクト……それは確率論に従って決められる物。誰と誰が対戦するかは札を取る人間でさえわからない。正にランダムであり、運悪く相性が宜しくないのと当たる事は覚悟する事。運良く勝ち上がる可能性だってここにはある。だが、保証は出来ない。
「一々説明するな」
「説明しないと格付師はやってられない!」
 オオッと、ホイッスルが鳴った。ようやくルールが提示されるんだな、どんな物だ?
 そのルールは魔力制限一切なし……おいおい、それは有りなのか? 制限を設けないとどんどん弱者は落ちぶれてしまうではないか? 俺はそう思った。が、次の瞬間には笑みが零れ出す。これは千載一遇の機会だと。ところが次のルールでその笑みは閉ざされる。
 次のルールが零詠唱禁止。即ち俺の十八番である零詠唱を禁じるルールが出された。ここに来て俺は--魔力を思う存分出して構わないが、詠唱速度は通常で宜しく--とお願いされた。わかるか、この笑えないお願いを! 運営は俺を揶揄ってるのだよ。俺が悔しい余りハンカチを噛む姿を見たくてたまらないからこんな屈辱を与えたのだ。
 さて、子供みたいに喚くのはここまでにしよう。対戦相手が誰かだ。総当たりである事から俺を除く十五人の誰かとぶつかる訳だ。さて、最初はどのカードと……クライスとぶつかるか。
「--わかってるだろう、デュアン。あのルールが提示される前に零詠唱して溜めるフライングは禁止されてるぞ」
「--詠唱速度を零にして唱える事は禁じられたよな。だけど、詠唱速度を速めて唱える事は禁止されちゃいない……ナックルガード」
「--それで勝ったつもりか……ナックルガード」
 それぞれ形成魔法の応用である強化魔法で拳を固めた。クライスの方が一日の長だな。流石はパワーマジシャンだけある--既にステップを踏んでやがるな。
「『マジックボクシング』のプロライセンスを持つ俺と素人同然のお前とじゃあ天と地の差があるんだよ」
 マジックボクシング……それは強さを求める事は減量に耐える事とするイカれた思想の元で拳と拳がぶつかり合う競技の事。何よりもこの競技では体重の減量の他には属性比率を合わせる及び数値調整するという減量もある。何故ならマジックボクシングだから属性に合わせてファイアーフックやアイスボディブローといった技を繰り出す。その技に使われる属性が強過ぎたりすると同じミドル級でも属性の強い方が有利に成ってフェアな戦いが演出出来ないから。それ故に減量の項目に属性比率及び数値の調整も含まれる。尚この競技に於いて過去八百長が発生して非難を浴びる事もある。だが、そう言う行いをしたボクサーは後にボクシング協会から追放を受けた事はつい最近の事。
「話が長いし……何で俺が負けたんだ」
 おっと済まない。説明してる間に俺はクライスに勝利。どのような勝ち方をしたって? それはナックルガードという強化魔法で殴り合う場合、殴り合いではクライスに勝てない。ならばその土俵に付き合わず、敢えて握手してからクライスに勝てば良いと判断したからだ--そう、奴よりも強化度合いの高い俺だからこそ可能にした紳士のスポーツの逆手を突いた非紳士的な戦法。
「てめえ、俺の右手を潰してその隙に顔面に叩き込んでノックアウト……ガク!」
 これでクライスに勝った。残りは……おや、俺を含めて八人か。どうやら総当たりではなく、トーナメントが行われてるみたいだ。総当たりでは負けた方は次の戦いに臨めるほど体力はないな。次は……その前に残ってる連中でも紹介しよう。
 五十音順にアルケイン・レネイド、俺、ガルス・ボードレール、マシュー・ディンゴード、ネス・ハターレラ、ピクシー・ピクサー・タラータ、センテンサー・ソラルディアンヌ、ヤールズ・フランクドールだけか。適当な名前の奴は速攻で退場したか。
 それで次は誰と……「君が噂のデュアン・マイッダーという訳か」
「誰だ、お前は?」
「アルケイン・レネイドを知らないとはね」
「ああ、知ってる。何でもナイトマジシャンで知られる騎士道に忠実な魔法使いだったね」
「そうですね。でもってそのナイトマジシャンの極意は何か知ってるかね?」
「格闘技か?」
「それでは野蛮だ。今から戦おうじゃないか」
 極意ねえ。正直言ってこいつにも苦戦する可能性が薄い。さあ、てどうしよう?
 アルケインは形成魔法を唱えてフレイムサーベルを出す。まあ形成魔法は中級魔法程度の魔力で以って可能だからな。問題は使用者の身体能力が形成魔法を振る舞うのに敵うかどうか。そこに魔法使いは体力がないと強者に成れない理由が隠されてある。
「何を考えてるかな、格付師!」
 奴は小手調べの突きを放つ--鈍い速度だと思って右に回避……したはずが右頬に横一文字の掠り傷を受ける。
「如何ですか、ナイトマジシャンの使うフェンシングを?」
「--サーベル状に形成してるのにフェンシングとは」
「何度も避けられませんよ!」
 何度だって躱す。だが、掠り傷が増えるばかり。一体どうゆう原理で……そうか--ナイトマジシャンとはそうゆう意味か!
 俺はそれを知って懐に仕舞ってあったメモ帳を取り出して項目追加と形成魔法の欄にナイトマジシャンを書き記す。本格的に記すのは後で良いがな。
「余裕ですなあ、格付けしてる暇があるなんて」
「--死角を突いたな、アルケイン」
「気付いたな、その通り。人間の瞳には必ず死角が存在する。それを実感出来ないのは目が二つあって死角を隠すように補うからだ」
「--それで最初、俺の左眼に集中させて衝くと同時に上手い具合に死角へ方向を転換させたんだな……納得」
「槍使いはこの方法で相手を薙ぎ倒すのだよ、理解したか」
「--ああ」予め放っておいた十二個もの時限式下級魔法を発動させてアルケインを焼き餃子にする俺。「お前も死角に注意する事だ」
「あが、ぞうべぴだ……」アルケインは両膝を突いて勢いが乗った所で俯せに倒れた。
 フウ、ちょろいもんだ。だが、学んだぞ--魔法使いは武を習っても良いという事を!
「ほほう、流石だな……」背後を取られた--俺とした事が!
 俺が振り返ると、突然強力な魔法を全身に受けて壁に叩き付けられた--まだ体は動けるが、予想外の攻撃に俺は心が折れそうに成った!
「てめえ、何者だ?」
「『全生命体の敵』……大会に紛れ込んだ五つの内の一つだよ」
 この魔法は聞いた事がない。俺が文献の読み漁りをしてないせいか? 或は噂の禁呪魔法の一種なのか? いずれにせよ、右手が紫黒く光った事だけはわかった--闇系でも重系でもないぞ、この重さは!
「デュアン・マイッダーとやら。貴様はやり過ぎた……既に魔導学園に紛れ込んだ俺達の同士はお前を抹殺する方向で意見を一つにしたのだからな」
「その『全生命体の敵』がどうして俺の始末に掛かる? 昨日の事が発端か?」
「『ワイズマン』は関係ない。奴はお前に忠告しに来ただけだ」
 ちい、背中越しとはいえフード野郎は只のメッセンジャーだったか。何が原因だ? 記憶を辿ってもクラリッサの件しか思い当たらない。俺はあいつの中身を殺した事で目の前に居る『センテンサー・ソラルディアンヌ』の皮を被った悪魔にやられるのか? そもそも疑問が残る。
「俺達が何故『全生命体の敵』と呼ばれるのか? 至って単純な結論だよ、デュアン・マイッダー」
 また紫黒い光が俺の体内に入って、内臓を傷付けた--口だけでなく、耳、鼻、それと目にも血が溢れ出す……視界が赤く染まる!
「俺の使うのは魔法ではない」
「じゃ、じゃあ何だ……ゴホゲホ!」聴覚も若干自信が無くなって来るなあ。「もっと大きな声で言ってくれないか、ゆっくりと」
「俺が使うのは呪術……即ちマギから派生された術だよ」
 また紫黒い色をした光が……アグアああ--心臓を鷲掴んだだあ!
「ほうれ、強く握ったら全身の血がどばあっと!」遊ぶように右手を強く握るセンテンサー。「はあッはッは、ゲロみたいに血を吐いちゃったなあ」
 血液が少ない。三分の一流れると俺は死ぬ。普通の人間だったらな。でも俺は普通ではない。だからこんな所で終われない。
「強過ぎる……予選でお前が出て来るなんて聞いてないぞ!」
「これでわかっただろ、デュアン・マイッダー。お前が目指す道は俺達『全生命体の敵』に滅ぼされる為にあるのだと!」
「そんなわけあるかよ!」
「じゃあどうやって形勢逆転するかな?」
「--これからその方法を実行するんだよ」
 先ずは『回復魔法』を唱える。これで少しは内臓の機能も回復するだろう。
 回復魔法……それは通常魔法が黒魔法と呼ばれるのに対して回復魔法は白魔法と呼ばれる物。黒が破壊するのに対して白は再生を促す。即ち、白魔法は自然と肉体疲労や大怪我を負った時に活躍する魔法である。故に習って損はないが、極めるまでは大変。何せ破壊は楽でも再生は困難が世の常であるなら白魔法を習得するのは黒魔法以上に困難を極めるのだから。
 駄目だ、思考が回らない。如何すりゃ良いんだ?
「そろそろ止めを刺しに行くか」
 何もない所鷲掴むセンテンサー。なのに俺は胸を抑えながら息も出来ないほど苦しい。膝に力が入らない。おまけに口から血を吐きそうだ。いっそ一思いに殺してくれと願うしかないのか--それしか頭にない。
「まだ抵抗するか、デュアン・マイッダー」
「ガググ、て、抵抗?」涎がだらしなく垂れる俺は構わず言葉を吐く。「いっ、そ殺、せ!」
「だから楽にしろ。心臓が抵抗するからお前は余計に苦しむ。薬物中毒者が薬物を少しでも切らすと呼吸が荒く成るようにお前は無意識に抵抗を試みる。何故だかわかるかな?」
 そんな事まで知るかよ! 良いからさっさと殺せ! そしたら俺は苦しまずに……そうだ--脳を媒体にしてアドレナリンの分泌量を調整する事で魔法を唱えよう。
「グガアア!」アドレナリンの多量分泌で鼓動に掛かる力が強く成ったのか、弾かれたセンテンサー。「まさか脳内の操作を可能にしたのか!」
「さあな……少し気分が悪いのでそろそろ滅べ」
 奴は再度心臓を鷲掴むのを試みたが、俺は鼓動を調整して奴を弾き飛ばした--アドレナリンで唱えるのが完了すると下級拡散魔法で三度に分けて攻撃。
「うがあああ、どうしてだあ!」
「終わりだ……アクアドラフト」
 水系中級高威力魔法がセンテンサーの心臓に炸裂--奴の心音は聞こえなくなった。
「安心しろ……峰打ちだ。暫くの間は仮死状態で居られる。その時に心肺蘇生を掛ければ直ぐ蘇る」
 ったく恐ろしい敵だったな。
 尚、俺はちゃんと詠唱したので違法行為はしてない。その証拠に運営は俺を処罰する動きがない。なので合法だ。
 それにしても『全生命体の敵』か。この程度で俺を苦しめたと成れば昨日出会ったあの野郎は一体どのくらいの強さなのか? それ以前に奴らはどうしてそう呼ばれるのか? 俺にはそれが気に成ってしょうがない。まあそんな考えも残りの消化試合に集中する事で霧散。
 これ以降の戦いは総当たりらしい雰囲気で進められ、見事俺は一位通過を果たした--説明し忘れたけど、総当たりには成績優秀者が二位の場合は二位通過の可能性も有り得るとの事。
 各ブロックが終わって直ぐにラキやマリック達と顔合わせする……が、どうして俺がマリックと仲良く成ってるのか?
「それは俺の台詞だ、生意気な奴め」
「予選で落ちてくれたらどれだけ良いか」
「まあまあ、喧嘩したいなら戦う時にしなさい」
「流石だな、そうしよう」
 正直、マリックはどうでも良い。だが、あいつらが気に成る。俺を気にしてかラキは尋ねる。
「ああ、何かあったって? 俺のブロックの奴らは結構強いのが集まってたと思っただけ」
「そう、なら良いけど」
 因みに二位通過したのはラキを含めて僅か数名しか居ない事をここに明記する。俺達はまだ知らなかった……運営も又、『全生命体の敵』に依って変質してる事に!


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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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