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一兆年の夜 第八話 戦いへの一歩を

 ICイマジナリーセンチュリー三十五年三月百二十四日午後九時八分八秒。

 場所は新プトレ村村長邸二階村長室。
 齢二十九にして五の月と八日目になる青年が椅子に腰をかけていた。
 そこへ勢いよく扉が開かれた! 入ってきたのは齢十九にして五の月と
二十八日目になる少年だ。
「た、た、大変でありまチュ!」
「なんだぶ! 礼を欠いた行為をすぶからには全てを話すんだ!」
「そ、村長! じ、自分は自らの罪を償うためにプトレの森を探索中にあれらと遭遇し
てしまいましたでチュ!」
 村長は少年を不思議そうにと見つめた。どうやらあれらとは具体的に何なのかが
分からない様子だ。
「別に驚くほぶなどか? もっと詳しいことを聞きたぶ」
「そ、それが。我々を食うあれらでチュ!」
 村長はそれをキイテ腰掛けていた椅子を勢いよく倒した! 倒した反動で村長自ら
も飛ぶようにうつ伏せに倒れた--椅子の影に寄り添うように。
「イダダ、そ、それは一大事だぶ! い、今すぐに--」
 村長が言おうとした直後に別の誰かが勢いよく部屋に入ってきた!
「た、た、大変ーだ! 食らうーやつが村の南ー門に侵ー入してきーたぜ!」
「え、え、え、は、早いでちゅよ! それは本当でちゅか、ラビー!」
 ラビーと呼ばれる者は齢十九にして五の月と十二日目になる少年だ。
「本当ーだ! だーからこうしーて礼を欠く覚悟でー村長ザブング・クロレット様ーに
報告したーんだよ!」
「そ、そ、それじゃあ村の住民はこうしていぶ間にもあのモノどもに!」
 ザブングと呼ばれる村長の顔は水色に近いほど青くなった。彼は僅か二十七で
再生した小プトレ村の村長となった青年だ。住民の期待を一身に背負って村長に
なった彼は就任してわずか翌の年で小新プトレ村を新プトレ村へと大きくさせた!
 そして彼の政策が軌道に乗り出す二の年目という時期に二つの良くない報せ……
 顔がそこまでの青さになるのにも無理はなかった。
 しかし--
「テレス犬族の犬丸ラビーよ! 報告はわかったぶ! お主はさっさとこの村から
住民を脱出させぶ! これ以上の死者を出さないたべにも!」
 顔がそうなっても彼は村長という誇りを持ってラビーに命令した!
「はっ! すーぐに各地区ー長に連絡しーて周りーます!」
 ラビーは燕族に近い勢いで村長室から出て行った!
「じゃ、じゃあ自分はどうすればいいでちょうか?」
「お主は引き続き、ひき、う、よ、良くないぶ、こんだの!」
 ザブングは迷っていた! いま言うべきことは下手をすれば鼠族の少年を死なせる
命令になると思って。
「村長様! 自分はゼノン鼠族の鶴田チュウ蔵はいつだって村のためなら、神様の
ためなら死と向き合う覚悟はありまちゅ!
 なのでどうか自分に気を使わないで下ちゃい!」
 チュウ蔵と呼ばれる少年は既に覚悟を決めていた!
 ザブングは彼の熱意に押されてついに--
「わかっぶ! 今からお主は引き続きであぶが……あのモノどもの動向を探るぶ!
 ただし見つかっぶ場合は命を大切にすぶのだ、いいな!」
「はっ! 村長様の命令を確かに聞き入れまちた!
 では自分はこれにて食らうモノを見張りまちゅ!」
 チュウ蔵はザブングに三分間深く頭を下げた後、部屋からゆっくりと退出した!
(私は舞い上がっどぶよ! 自分なら何でもうまぶいくと舞い上がっどた!
 それがこんなこぶに! 罪深ぶ! 穢れ多きことぶ!
 私は神様どころか住民や家族に申し訳がつかぶ! このまま生きぶ恥を注ぐど
か! それとも自らあのモノに捧げぶのか! それではプトレ村の存在意義を--)
戦ぶんだよ、お父さん!」
 ザブングは子供の声に我を取り戻す。気付いたら部屋の中に齢六になった子供が
いた。
「ザブリスか。勝手に入ぶなと言ってぶだろうに。部屋に入ぶ時は右前足で二回
叩いた後に--」
「そんなことは後で神様やお母さんにあやまっとぶから。それよりも勝手に入って
ごめぶなさいお父さん! 実は礼を欠くかも知れなぶけど、戦えばあいつらから村を
守れぶんじゃないかと思ぶんど! 俺はそう思ぶんど、どうしてそれをしないの?」
(戦えば村を守れぶか。四十の年より前にプロティ村を救った熊族の少年については
知ってぶ。子供の頃に良く父から耳から血が出ぶほど聞きすぎどぶからな。
彼のやり方なら村を守れぶかも知れないぶ)
 ザブングは息子のザブリスからの質問を理解していた。しかし--
「それだけは良くなぶ! 誰かの命を死に至らしめぶことは穢れを生涯残す行為!」
「どうしてそうやっど逃げぶの!」
「逃げではなぶ! これは私の方針だ!
 私は村長になる時に誓った生涯の方針ぶ!
 それともザブリスは簡単にあのモノの命を死なせぶ権利があぶのか! 帰りを
待つ者に顔を上げられぶのか! 答えてみぶだ!」
 ザブングはそう言いながらザブリスの答えを待っていた。
 しかし、その前に部屋に入る者が答えを遮る!
 その者は齢二十七にして十一の月と五日目になるザブングの妻だった。
「ザブリス、いい加減にしなさぶ! 村の皆様が命をかけど逃げていぶのに
お父さんを困らせど神様になんど言えばいいわけ?」
「ご、ごめぶなさいお母さん! 俺がよくなかっぶ! も、もうしなぶから!
 で、でもお父さんに言ったことはぜったい良いとおも--」
「理屈にならない理屈を言わなぶの! そうゆぶのは大きくなっどからちゃんと考え
なさい、良いね?」
「……はい」
 母に説教されたザブリスは黙り込んでしまった。
「そろそろここからザブリスと共に出なぶとな、私の愛すぶ妻ヘネリエよ!」
 ザブングはヘネリエにそう言った。ヘネリエは頭を半ば下げて応えた。
 十の分より後、三名は村長邸を出て行った。それから一の時より後、村の北門から
三名は外へと脱出した。
(ヘネリエとザブリスの身体を冷やしどいぶ雪か! 豪雨のように激しく私達に向けど
浴びせぶといぶのか! 私は罪深ぶ! 私は戦えぶ良かっどか!
 いや、そんなことをして住民達の幸せを創れぶか!
 血で穢れぶ前足で家を建てられぶのか!
 出来ない! 私は戦えない! そんなことであぶゆえ、雪の神様はお怒りど!
 だが、私達はそんな怒りを受けどぶ生きなけれぶ!
 そして死に行く者達の遺志を受け継がでば!)
 そうして三名は新プロティ村を目指して行く。
 それから十の年より後の月日が経つ……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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