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格付けの旅 青年デュアンの試練 魔術大会前日のラキ

 青年期……それは大人に成るまでの試練のような物。
 とこのくらいにしておこう。まだ説明するには俺は若過ぎる。わかるとすれば俺は魔術大会に備えて粗方の属性と使える魔法の確認をしてのさ。何しろ、相手は格下と言えども油断成らない。少しでも成れない分野を衝かれたら負けは必須。スポーツ大会だってそうだろう? 『魔弾競技』なんかは直球がどんなに速くてしかも制球力があっても直球に対応するようにすれば自ずとその投手は弱小と化す。要は強いのが勝つのではない。戦い方を心掛けたのが勝つ世界。だからこそ俺は使える魔法と俺が苦手とする魔法を確認。けれどもこの作業はジェネラリストであればある程に面倒臭く成り、怠りが目立ちだす。気を付けないとな。
 図書室で何をやってるのよ--五月蠅いのが来たな、と俺は幼馴染の気配を感じ取る。
「決まってるだろう、ラキ。俺は大会に出る」
「知ってるわよ、女心を弄ぶデュアン」
「余計だろう、それは」
「それにわかるの、どんな分野で出場するかを」
「『無差別級』じゃないのかよ!」
 無差別級……それは属性及び体重制限関係ない部門の事。そこでは巨大な者ほど力で小さき者を蹴散らし、小さき者ほど巨大な者に対して工夫を凝らす。当然、弱肉強食の世の中では小さき者が大きい物に勝つ為にはより工夫を凝らさないと生き残れない。関税撤廃や競争重視を思い出せばわかる。結局巨大な者しか生き残れない。故に無差別級は別の意味で表すなら強者が弱者を踏み潰す為のリンチでしかない。
「そりゃあそうでしょ。だって水属性に精一杯頑張った魔法使いが火属性で尚且つ力押ししか出来ない半端者に負けるような事は駄目なのよ」
「体重別を有難がる物だぞ。何の為の魔術大会何だよ」
「区別しないとフェザー級はヘビー級並に輝かないわ」
「だが、マウスがキャットに勝てんぞ」
「あら、あのアニメじゃあマウスは平気でキャットに勝つわよ」
「あれは窮鼠猫を噛むの例えを間違えたアニメだ。幾ら何でもやり過ぎだ」
「ああ言えばこう言うわね」
「ところでラキよ。お前は俺の事を知らないとか昨日言ってたんじゃないのか?」
「それは昨日の話でしょ。今日は違うの。これを教えて欲しいと思ってね」
 ラキはとある魔術書をデュアンに差し出した。
「『形成魔法』か?」
 形成魔法……それは無を有にする物理戦闘を可能にした魔法。その魔法を編み出すには別に大量のマナも詠唱も必要としない。寧ろ、格闘技に精通して居れば少ないマナで形にして更には敵の中枢目掛けて叩き込めば可能と成る。実践的ではあるが、弱点としては形に成る時間が短い事。半端な状態じゃあ紙も切れない事。他には赤子でさえ殺す事が不可能な事。様々な理由から使う魔術師は少なく、魔道士でさえ形成魔法を覚える暇があるなら真理を目指す方が良いと決め込む者が多い。
「その形成魔法をどうして覚えようと決めた?」
「わかるでしょ、勝つ為よ」
「勝つ為だったら普通の魔法を覚える物だろ?」
「こう見えて体を鍛えるのよ。だから私は身体能力を活かして形成魔法を少しでも編み出したいのよ」
 全く覚えても何の役にも立たない形成魔法をどうしてこいつは面倒臭く俺に教授して来るのやら……が、そんな俺も既に形成魔法は身に付ける。応用法だって幾つか編み出してるしな。
「良いだろう、ラキ。でもな」
「何よ、もったいぶって」
「形成魔法は好きな武器をイメージする事から始まる。お前が得意とする武道は何だ?」
「それは『ブレイドクロス』よ」
 ブレイドクロス……それはディーのとある国で培われた魔道侍達が行う魔武術。属性同士の戦いは勿論、作られる刀と呼ばれる物は武器を超えて芸術の領域まで磨き上げた物。勿論、武器としての切れ味は誠に感嘆の一言。
「説明が長い。それにそこから先は私がするわ」
「じゃあやってみろよ」
「ええ、良いわ!
 ブレイドクロス……アマテラスで行われる剣と剣がぶつかり合う武道。属性同士の戦いに於いても抜けば魂散る無情の刃。故に鞘から剣が抜かれた時こそ相手は死ぬ事を意味する程にブレイドクロスの世界における兼同士のぶつかり合いは無情なのよ。そして彼らの戦いだけではなく、その刃作りもまた職人の命を懸けて行われる。秘伝の技を盗まれないよう常に職人は剣を腰に掛けて例え弟子に取った相手すらも容赦なく切り捨てる。それだけの思いを込めて完成された剣は正に芸術品にも匹敵。アマテラスに於ける剣への思いが深い事を示唆する」
「結局長いじゃねえか」
「悪かったわね、デュアン。全く貴方はどうして解説が大好きなのかしら?」
「『好奇心旺盛』の内の一つのバリエーションでもあるからな」
 好奇心旺盛……ここで説明するのは本来の意味ではなく、俺がどうして解説好きかを表す。俺は何でも格付けをする。その結果、格付けした物を何でも解説したがるように成る。そう、格付けしたい物が多ければ多い程に俺は解説する意欲も湧き上がる訳だよ。良いぞ、好奇心ってのは。時たま長く続ける事が困難に成る程だからな。
「そう言えばデュアンは飽きっぽかったわね、それも好奇心の弊害かしら?」
「言うな、ラキ」
 俺が解説好きなのはそれだけじゃない。世界の真理とやらに触れようと躍起に成るのも原因ではある。世界の真理は果たしてどのような物なのか? 俺はこの魔導学園から離れて世界中を旅してみたい。と同時にこの揺り籠に保護されるのを望む。外が恐い。内側でずっと暮らしてきた弊害なのかどうか。そこは俺でもまだわからない事だらけ。
「ところで何時教えるの?」
「そうだったな、ンじゃあ付いて来い」
 俺とラキは魔導学園にある第三『マジカルテニス』場へと向かった。
 マジカルテニス……それは決まった属性で打ち合うテニス競技の事。普通のテニスとの違いはサーブする時、スマッシュする時は必ず決まった属性で打たないと減点される事。例えばサーブする際は地属性で打つ。スマッシュする際は風属性で打つ。スマッシュ以外で大抵打ち返す場合は火属性で打ち返さないと減点される。故にテニス以上に繊細さが必要でマイナス得点に成る場合は多々ある。プロでさえ--
「長いわよ! 全くデュアンは直ぐ解説し出すから」
「まあどうでも良い。それよりもここは昨今の廃れの影響を受けてマジカルラクロス場に変わる予定だ。まあその間だけ俺達はここで形成魔法の修業をするのも悪くはない」
「マジカルテニスは複雑過ぎるルールだからね。そのせいで挫折するプレイヤーが後を絶たない訳よ」
「それじゃあ始めようか、そのマジカルテニスを」
「ちょっと待ちなさい!」
「何処がおかしいか?」
「形成魔法の修業にどうしてスポーツが関係するの?」
「テニスは剣道に通ずると俺が判断したからだよ」
「そうゆう無茶苦茶な理論で納得させないでよ。ブレイドクロスとマジカルテニスを一緒にしないでよ」
「いやいや、一緒なんだよな」と既にサーブする気満々の俺。「さっさと市販用の魔剣の用意をしろ」
「ラケットじゃないのね、受け止めるのは」
 奴に付き合う事二時間……上達が遅い遅い。あれで大丈夫かと俺は心配に成って来る。けれども雑魚相手なら軽くあしらえるほどには調整を済ませた。後の話は本人次第。俺は俺のやり方であいつらを蹴散らせば良いだけの話だよ。ラキと別れてから第一校舎の屋上より空を眺める俺だった。
 そこに何者かが入るのがわかる。それも気配を消す術が上手い奴だから正直驚きを隠せないな。ンで誰かと天の声が尋ねて来るならこう答える……「学園外の人間だろ、お前?」いや、ここは侵入者と表現すれば良かったかな?
「ほう、俺が異物だとよくわかったな」
「フード被ってる学生及び教授が居るか。それも遠近両方から見ても素顔がはっきりしない奴は尚更の事だ」
「背中越しで良く俺の特徴を当てたな、デュアン・マイッダー」
「魔法のお蔭じゃない。手摺りを鏡に実際、反射した時にちょうどお前に当たるように光を調整したんだよ」
「鏡を使った魔法も得意とするようだな、デュアン」
「俺の事は良い。それよりもお前は何者だ? 何かしら得体の知れない悪意を感じる」
「『全生命体の敵』という呼称は御存知ですか?」
「『全生命体の敵』? 何だ、その頭の悪そうな呼称は?」
 背中越し依り俺はフードの男がエネルギーのを放ってるのがわかった。しかもエネルギーと言っても周りに危害を加えるような物じゃなくて、要するに『気当たり』に近い物だろうな。奴はそれに関しては人間の心臓を直接止める領域まで高めている事がわかった。
 気当たり……それは動物が外敵から身を守る為に顔や或は体で強そうな表現を示して弱い外敵を追い払う術。元来人間にもこれは備わるが、平和ボケの時代が長い事を受けて気当たりの術が失われた。今では強い奴でも小動物位の表現でしか気当たりが出来ない程にまで退化。それでも極稀に闘争本能及び野性的な人間千人に一人は必ずこうゆう気当たりに優れたのに出くわす。そう、俺の事だよ。
 今の説明でわかる通り俺も奴に気当たりを掛けてある。
「その年齢でここまで気を発達させるとは」
「エーテルの奔流さえ分かれば後はそれに媒介してお前に直接ぶつける事が可能だよ」
「だが、俺より弱い」
「その根拠は何だ、えっと名前を聞いてなかったな」
「それを知る術はない。何故なら--」
「待て待て、フードの男」俺は背中越しより制止する。「殺すなら大会が終わった後にしてくれ!」
「その猶予をお前が勝手に決める事じゃない」
「決めるんだよ、俺が!」
「どうしてだ?」
「『全生命体の敵』だか何だか知らないが、善悪だけは分かるはずだぞ」
「悪だろう、『全生命体の敵』とはな」
「そう、それ! だからこそお前には観戦して貰いたい。でないとお前は酷い目に遭う」
「……フフフ、ハハハハハ!」
 奴は大笑いした。背中越しではあるが、寝転がるようなアクションは取ってないと思われる。
「データが十分揃わない状態で戦っても意味がないと言ったな」
「ああ、言った」
「良いだろう、大会が終わるまでお前の命を預けよう」
「だが、大会が終わった後に俺がお前に負ける可能性はこれっぽちもないがな」
「腹が立つ勢いで自信満々なクソ餓鬼よ、お前は。その序に俺の名前を教えよう……『ワイズマン』だ」
「『ワイズマン』か……フード越しの素顔は大会が終わった後に拝めよう」
「ではまた会おう、その時は万全の状態でお願いして欲しいなあ」
 ……いいや、あいつはそれを望んではいない。俺はそう察知した。
 芽を摘み取る気だろうな、俺がこの大会で優勝すれば否が応でも『彼ら』の一員として認識されるからか?
 彼ら……それは俺が九歳の頃に出会ったあの男も含める神を超えた連中の事。その余りにも圧倒的過ぎる力は時には魅力であり、時には畏怖される。特に後者は神々の地位を揺るがし、自分達が最高の存在である前提が崩れかねない一大事。そこに俺が到達しようとする。
 俺はこの解説をした時、近々訪れる未来を想像した。魔術大会を経て何処かで俺はある事をし、そして魔道士の老人方によってこの学園……いや、この星から追放されるだろう。そんな想像が浮かんだ。彼らもまた神を信仰し、絶対足る威光を守るべく行動する。決して間違った事はしない。だが、正しい事でもない。
 俺はラキを見つめる。俺がここを去ってもあいつなら魔導学園に残って偉いさんに成って俺に出来ない事をし続けるだろう。俺はそう信じて屋上から去る……


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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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