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一兆年の夜 第七話 はじめての戦い(六)

 ICイマジナリーセンチュリー二十五年三月百日午後二時一分十一秒。

 場所は小プロティ村南門。
 そこには親善大使一行と彼等を見送る者達が集合していた。
 親善大使一行を簡潔に紹介する。ただし、先に紹介したベアールは除く。
 親善大使はデュア・ジニン。ダグン・ジニンの曾孫にあたる。お供を務めるのは
デュアの子供達で構成される。
 まず齢二十にして二の月と五日目になるデュアの第二子ダガン・ジニン。彼は
多卵性一胎児として産まれており、第一子であるジギンとは同い年である。
 次に齢十九にして三の月と三十日目になるデュアの第二十七子レイデ・ジニン。
彼女もまた多卵性一胎児である。
 最後に齢十六にして十の月と十日目になるデュアの第三十一子ドラグル・ジニン。
彼は多卵性一胎児ではない。
 見送る者達の中にはデュアの妻であるレデイ。デュアや三兄弟に親しい者達も
いた。
「ベアール君! 必ず生イキて帰ってね! お互い六十二勝ダアもの。
 明日こそ必ずあたしが勝つんダアから! だからお願い……」
「心配イラないよ! 僕は全せいめいたいのきぼう。必ず生きてここに戻ルウよ!」
 ベティ江は今日プロティイム採取競争でベアールに勝ちを取られたばかりだった。
彼女はベアールのことを何より心配していた。彼女の心配はベアールも理解してい
た。
 彼女以外にも心配していたのは彼女の両親である毛利べく蔵やベティ奈だけで
ない。見送る者達全員がデュア親子と同じくらいベアールを心配していたのである。
(にんぷの者もイルし、僕より年下の者、六個くらい卵をかカアえた者まで。
 僕は彼等を守るためニモ、デュアおじさん達を守るためにもやつらを倒さナイと!)
 親善大使一行は見送る者達に一礼し、村の外へと振り返り歩き出した。
 親善大使一行の目的は勝プロティ村の南に位置するベアールの故郷であった
廃プトレ村で食らいしモノと対話をすること。
 対話方法は肉体同士がぶつかり合うことで彼等に食らうことを諦める。
 もしくは親善大使デュア自ら食らわれること。
 そして他の方法は--
(僕がやつらを倒す! それでデュアさん達や村のみんなを守ルウンだ!)
「クゥ考えているところで申し訳ないが、ンァわしは自らの意志で親善大使になった!
 エィベアールよ! ォォこれだけは大人であるわしの務めだ! ゥゥお前はまだ
子供だ! クゥこれは大人であるわしからのお願いだ! ツィ確かにお前の気持ちは
分かる! イァあれがわしを食らって満足するとは思えないことは分かる!
 クァけれども子が親より先に死んではならないように子供が大人より先に死んでは
ならないのだ! ゥゥお前達はわしよりも長く生きてくれ! スェそれだけをお前達に
伝える!」
 その言葉は大人だから言えるのだとベアールは思った。
「ツォ父上の言うとおりだ! ンィわしも大人だから分かる! ウェ大人の世界で
はわしらは自分勝手だ!
 けれどもわしはこれから待つ現実を未だ認められん……」
「ゥゥあたいは認めないわ。ェェたった一者の父を死なせることを。
 ヅゥでもあたしは蟻族の雌である以上父の意志は意地でも尊重させないと
母が悲しむわ!」
「ンィ俺達が勝手なことを認めなければ神々にどう説明すればいい! クァ子供に
とって都合良くないことだらけとはな!」
 三兄弟は皆、葛藤した。傍らで見ていたベアールもまた--
(僕は行動すベエきなのか!
 でも行動してデュアさんだけデエナく兄ちゃん達まで死んだらどオウしよう!
 これが大人として生きていくことならどうスレばいい!)
 葛藤した!
 一行は葛藤しながらも目的地まで歩き続けた。雪が降り積もる道を削れた氷を砕く
音を出しながらただひたすらと。
 そうして三の時が過ぎ、ようやく廃プトレ村に到着した。
 だが、一行は意外な者と出会う。
「ンンお前は三の日より前に兄上からの手紙を届けた配達員じゃないか!」
「キ、キ、キテシマワレタノデスカ! ドウシテココニワザワザキタノデスカー!」
 齢十八にして一の月と八日目になる九官族の少年は叫んだ!
「ゥゥ話が見えないぞ、ジュ上空配達員臨兵キュツ男殿。ォォ何をそんなに
怖れて--」
「ワタシハプトレマチガドウナッタノカヲミヨウト、モドッテイルトチュウデコノハイソンノ
ジョウクウカラ、アレガマッスグアナタタチノムラニムカッタノヲミタンデスカラ!」
 その上方を聞いた一行は凍えるような寒さを内部で感じた。そう、それは--
(恐怖心! ソレエに僕の場合は--)
 怒りで我を忘れたベアールはすぐに小プロティ村方面に振り返り、走った!
「ゥゥベ、ァァベアールめ! ンィわしらだけでなく自分まで忘れるなんて!」
 ベアールは走った! それは犬族よりも速く、兎族よりも速く走った!
「イッデ!」
 滑って地面にたたきつけられても立ち上がた!そして虎に速さが追いつくくらいの
勢いで走り続けた!
(間に合え! 間に合え! 間に合エ!)
 彼は小プロティ村に来た頃、八十年前のテレス村事件を聞かされていた。
 親善大使となったテレス牛族のソウスブ・ブルホルは自分以外の者が死に悲しみ
に明け暮れたことを! そして彼はその日から--
(ソウスブさんはその日イから僕と同じようにやつらを生かすことを認めナクなった!
 僕はソウスブさんとは同じジャア無い。けど、ソウスブさんのいしをついでデエモ
僕はみんなのきぼうにナアルんだ!
 そうシイナいと僕は自分が何で走ってイイルのか分からナアクなるよ!)
 ベアールが走り続けておよそ二の時が過ぎた。
「ハア、ハア、やっと、着ウいた、ハア、ハア……」
 少年の目に映るものは--四の年より前の光景に丸写しだった。
「ま、に、アアわない、なんて」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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