FC2ブログ

一兆年の夜 第七話 はじめての戦い(五)

 ICイマジナリーセンチュリー二十五年三月九十八日午前二時零分五十八秒。

 場所は村長邸一階寝室。
 ベアールは眠気に襲われながらも待っていた。そして……
「入ぶがよい」
 出番が回ると強烈な眠気を吹き飛ばして--
「現プロティくま族ベアール・毛利! 礼を欠カアセて頂きまス!」
「ンゥわしが読んだ手紙の内容は村長から聞きなさい!
 ゥィお前も大人になるのならどんな運命であろうと、ルォ両眼両耳共に真っ直ぐで
いるのだぞ!」
 交差する傍ら、デュアはベアールに告げた。
 そしてベアールは一礼して扉の取っ手をゆっくりと回し、木と木が擦るような音を
静かに出しながら開けた。
 眼前に毛布を被る老年が腰を上げていた。
 齢四十六にして七の月と三十一日目になるプロティ豚族の
老年ブルタンヌ・クロレットがそこに待ち構えていた。
「全く実奈通は大変な子供を助けたのぶ。寝ぶ時間を削ってまでわしに何を頼ぶ?」
「やつらトノ話し合いはやめて下サアイ! やつらは何を言っテエも何をいためテエモ
僕達せいめいたいを死なセマアす!
 ですのでドオうかデュアおじさんを親善大使にシイないで下さい!
 お願いシマす!」
 ブルタンヌは彼の気持ちは理解出来た。しかし……
「わしからの答えぶ前にデュアが何の手紙を渡されぶのかを聞かそぶ!
 それはデュアからの頼みでもあぶかだの。聞くどは好かぶか?」
「いえ、お願いします!」
 ブルタンヌは重苦しい口調で手紙の内容を読んだ。
 エウク町に住むデュアの第一子ジギンが上空配達で送ってきた手紙。そこには
信じられないことが書かれてあった。
 内容はエウク町に食らいしモノ達が五個で侵入。彼等に対応すべく残っている
上空配達員、陸上配達員を総動員。かつてのササーキー隊、ベンデルウム特別隊
のように身体にぶつかることで彼等との対話を試みた。
 だが、彼等は仲間同士の連携を模倣! 瞬く間に配達員達は食らいつくされる。
 ジギンは上空配達員の生き残りに現時点での状況を綴った手紙を送らせた!
 現在ジギンは生きているのかわからない。ただこれだけは分かる。それは--
「エウク町はもう存在しだいと言ぶことだ」
「四の年より前と同じダア! やつらはいのちヲオ死なせることを楽シインでる!
 怒らナアい方がおかしい、こんナアの!」
「だからどいっど死だせて解決すぶのか? 彼等も命に代わりはなぶのだぞ。
 ベアール君が良く採ぶ果物だって命だぞ。命を死なせぶ行為は罪だのぞ。
わしらはその罪から逃げられなぶ。神様から与えらでた罪でもあぶが、何よりも
わしらが自覚すべき罪などぞ。生きていくたべのな。それなのに彼等を死なせぶ
ことで何か得られぶのか? 生きていぶ命を死なせぶことに罪は起こぶもどぞ。
 念が残るよぶだが、わしはベアール君のしよぶことを認めなぶ」
 ベアールは自らの主張が聞き入れられない現実を感じて天井の木が崩れ落ちて
押しつぶすかのような絶たれた望みを味わう。それでも--
「僕はそれデモやつらを死なセエる以外に方法はないと思います! 僕は自分の
タアメだけではなくみんなのためにやつらヲオ死なせようと考エエています!
 だからどうかデュアおじさんの親善大使ニイシないで下さい!」
「親善大使にしだいといぶ願いは捨てて貰う」
 一度決めた方針は覆らない。大人としての風格を醸し出す老年ブルタンヌは
曲げることをしなかった。
「そんな」
 けれども……
「ベアールは明日から親善大使のお供としど行動しろ!
 ただし、お主が持つ者ど制限を加えないと言ぶことだな」
 決めた方針の中で追加という抜け道を作って。
「あ、ありがトウございます! そ、そんなことを決メテエもらえることを光栄ニイ思う
所存でごザアイます!」
 ベアールは貧乏揺すりするかのように体中が興奮で止まなかった。
「感謝すぶのはむしろわしの方であろぶ。
 わしもまだまだ大人に成りきれぶと言ぶことを改めてわかっど。これじゃあ
死んだ女房や神さまに申し訳が着かなぶのう」
 抜け道を作ったことを後悔していた。
 こうしてベアール・毛利は親善大使特別お供と成った。
 そして、これが後の傭兵へと繋がることになるとは誰も想像が付かなかった。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR