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失われた者達への鎮魂歌

 どうもタイトルはいきなりダンクーガのOVA最終話(初期の方)にしてるdarkvernuです。
 とにかく例の人達を追悼するという形でショートストーリーをお届けします。

 俳優業とは常に反体制的。彼らが一度たりとも現政府に従属したことなど一度もない。常に人々を魅了する演技をする為に私生活でさえその土壌を作り上げる。
 そう語る俺は名もなき俳優。スポットライトを浴びる為に自らを偽り、私生活さえ平気で乱した。全ては最高の俳優に成る為に。そんな俺でさえ演じれない事はある……それは貧困、そして病。俺の手元には日本円にして五千円しかない。俺を患わせる物は肺癌……それも末期。余命幾許でさえ演じ切れたらどれほど幸せだったか! 貧乏を演じるのは簡単だが、金持ちを演じるのは大俳優でないと出来ない。
 そんな俺の前に大俳優が一人、居るではないか! 顔付きこそ痩せ衰えてはいるけど、目は獅子のように荘厳。ここはすれ違うべきか? それとも出世する口実に声を掛けるべきなのか? だが、俺にはそんな選択肢さえなかった。
「やあ、ちょっと良いかな?」
「はい」
 俺は下っ端俳優なので大俳優には逆らえない。彼に誘われる形で公園のベンチに腰を下ろす。
「君は名の通った俳優かな?」
「いえいえ、この身なりを見て下さい。自分は下っ端ですよ」
「成程」
「それにもう残り少ないんです」
「それは俺も同じだ」
「え?」
「実は大腸癌を患ってる。それに余命は後三日」
「たった三日……自分はまだ一週間は生きられます」
「一週間か。何だか悔しいな」
「悔しいんですか?」
「そうだ。一週間もあれば君は役を演じれるじゃないか!」
「ですが舞台を用意するには時間が足りません」
「別に興行的な舞台じゃなくてもこの公園を舞台にすればいくらでも用意は出来る」
「そう来ましたか」
「悔しいさ。君みたいな若造が後一週間も生きられるなんて」
「どうして名誉も地位もお金もあるのにそこまで俳優業に専念出来るのですか?」
「まだまだ反逆したりないからさ……俳優とは反政府的でなおかつ国家反逆罪に相当する忌まわしき職業」
「ロックミュージシャンと似通う部分があってもそこまで貶めなくても」
「それだけに俺は政府に媚びる本性と国を愛する心で満たされる……この矛盾こそ俳優業になくては成らない重要な部分なのだ」
「あなたほどの人の本性が時の政府に従属的であるなんて信じられません」
「だが、事実だ。俺は何度も反政府を掲げる連中に対して様々なコメントを寄せた……俳優ではなく私人として。だが、一方で俺は反政府的な役を必死に演じた。時には作品内で時の政府を打倒して満足気にする自分さえ演じてな!」
「そんな矛盾を抱えながらあれだけリアリティの溢れる演技が出来るなんて素晴らしい!」
「出来たのは一重に反政府的な連中を批判しつつも一方で奴らの特性を掴んでいるからに他ならない。奴らの心情を知りたくもないのに俺は奴らを研究して心情さえ気が付くと理解してやがるから嫌に成る。これが俳優業だ、いくらでも貶めるに十分だ……だが、それ以上にこの職業を愛おしく思う俺も感じる!」
「それは自分も同じです。これだけ貧しくて肉体的に苦しみながらも俳優業に転職した事を後悔しつつ一方で役に必要なリアリティを身に付ける事に喜びそして愛する自分が居る事をしみじみ感じるように成りました……余命一週間と宣告されてから!」
「君も気付いているようだな。それだけに俺は大腸癌を憎む。何、三日とはいえ必ず癌を克服してまた晴れ舞台に立つ!」
「それは可能なのですか!」
「病気さえ偽れずして何が俳優だ! そんな運命さえ捻じ曲げるからこそ俳優業は反政府的だ! 俺は何度でも蘇る……必ずだ!」
「はい、自分もです! たったこれだけの手持ちと末期癌如きさえ偽ってやる所存であります!」
「その意気だ、若造! 今日は君みたいな若造と出会えて良かった」
「自分もです!」
「さよならだ!」
「お元気で!」
 大俳優と背中合わせに別れた俺……それから俺は八日間も生き続け、とうとう癌は俺の生命さえ食らい尽くした!
 だが、満足だ。最後の最後に俺は大舞台に立って拍手喝采を貰ったんだから!


 という訳でマイマイといくよ師匠に捧げるショートストーリーでした。どちらかと言うとマイマイに捧げる方が強いかな。とにかく俳優業とは自分の中では反政府的で尚且つ自分をいかに偽れるかを追求した職業だと思う。それだけに内容も余命幾許の二人が公園のベンチに座って俳優業とは何なのかを語り合うんですから感慨深い。あ、一方的でしたね(笑)。そんな彼らは俳優業を憎む。だが、それ以上に俳優業を愛する。この矛盾した感情こそ俳優業が如何に反政府的かを物語る一方で高潔な職業である事を如実に示す。
 そんな風に偉大な方々に捧げるショートストーリーの解説を終えます。

 五月は終わり、明日には六月に成る。時の移り変わりは嫌な気分にさせる。出来れば時間さえ支配する事が可能ならどれだけ良い事か……でも好奇心が失われたまま生き続けるのは正直困るしなあ。やっぱり時間を支配しない方が良いかも知れない。それに好奇心は自分よりも十代若い連中が溢れてないと駄目だしな……将来を支えるエネルギッシュで生意気坊主達こそ重要な連中なんだからな。だからって各世代を蔑ろにして良い理由には成らない。老人は次の世代を温かく見守り、中年は若者達を叱責しつつも支え、若い連中はそんな彼らとぶつかりながらも良い所を吸収し続けなければ世の中を良くしようなんて生意気な事は実現出来ないぜ。
 と説教垂れた事はこのくらいで終わりにして今日はここまで。演じるのは何も俳優だけじゃない。自分達物書きでさえ演じないと書き進めないしな。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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