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格付けの旅 少年デュアンの憂鬱 恥ずかしき中学時代

 中二病……それはヒーロー気取りにして幼稚で自ら大人だと勘違いする者に与えられる称号。決して病気ではない。反抗期真っ盛りな者は誰だってこうゆう時期はある。主に中二病は背伸びした子供が成りやすく、大人は絶対に成らない。それでもこの呼び名を与えられるとしたらどうだ。高校生なら高二病、大学生なら大二病、社会人なら……そこまで俺が知ると思ったか。
 そう俺はもう『俺』と呼称するように成った時期。先程説明した中にある反抗期……中学生時代こそ俺にとって山場にして谷場。常に真実を掴み取ったと勘違いし、周囲の迷惑も感情さえ顧みない中坊。俺の年齢は十三歳。成長に悩んだ小学生時代を俺は見事に越える。持ち合せた属性は九つ、皆上級魔法を習得済み。後は魔道師でさえ習得が困難な超級魔法習得を残すのみ。
「よお、デュアン」「てめえ、最近生意気じゃねえか」「中等学部を落第すれすれだって聞いたが」噂をすればあの三人はまだちょっかいを出すのか?
 俺は今、体育倉庫の裏側で不良三人に絡まれる。三人共陰属性を進み、少々中二病を発症する。恐らく雷属性学科に所属して頭がおかしく成ったのだろう。
 とにかく俺はそんな奴等が魔法を使う前に音速の速さで拳を打ち込み、居眠りさせてやったまで。
 相手選んで喧嘩売れ、馬鹿共め--そう呟く今の俺に死角はない。
 谷間を越えた俺は今や誰にも止められない。筆記の授業では高等魔術師の先生方を驚かせ、体育の授業では有り余った才能を身体能力に付与する事で百メートルを十秒台叩き出すなんて朝飯前。散々虐めてきた先輩方は俺を恐れて次から次へとちょっかいを出す始末……勿論軽く遊んでやるのが俺の慈悲という物。
 はあ、何もかもが簡単に映る。どいつもこいつも俺に及ばない。最初はみんな高い山で壁だったのに今では俺の方が見下ろす側に立つ。月を真っ二つにした男との鮮烈な出会い……俺の何かを目覚めさせ、目の前の困難に打ち込める努力を与えてくれた。あの出会いがなければ俺は一生魔導学園の歯車の一部に留まった。誰だか知らないが感謝する。

 現在、俺は真っ二つの月を眺める。俺はあの男がやって見せたようにあの月を目の前から消し飛ばしたい。そうする事で俺は本当の意味であの男に並ぶ。だが、それを実現するにはまだ魔術回路の工事が終わらない。デイズ人故に元々魔術回路が未熟。山は越えても今度は空が俺を遮る高い壁。あの空を突破する時、俺は真の意味で『魔道師』の称号を得る。
 魔道師……それはあらゆる魔術師が目指す道。魔道師に成るには一部を学び続け、ついには上級魔法二つ以上を習得する程の功績を以て初めて皆から魔道師として認識される。魔道師に成れば一生金に困らなくて済むと噂され、多くの魔術師はこの頂を目指して学習に励んでゆく。
 俺は魔術師止まり。どうにも学園は俺をデイズ人だから魔道師として認めない訳じゃない。俺の能力を恐れ始める。そりゃあそうだろうな。だって俺は奴等みたいな無能共よりも高い能力を備え、身体能力だって誰よりも高い。まあ身体能力はおまけみたいなもんさ。俺の凄さは--
「やっと見つけたわ、デイズ人」
 聞き覚えのありそうな声。若干咽が成長したせいなのか、一瞬じゃあ誰の声なのか理解出来ない。だが、女に声変わりはほぼ存在しない。俺はまだ声はこのまま。じゃあ誰なのか? 俺は確信を持って振り返ると--
「何だ、お前か」
「七年ぶりなのに随分酷い挨拶ね」
「顔が若干変わってるから一瞬わからないな。んでこんな真夜中に何の用だ?」
「あなたに会う為に必死で勉強してここへ入学したのよ」
「冗談だろ?」
 勿論、冗談--微笑みながら返答するなよ、ラキ。
「孤児院はどう成った?」
「行政指導を無視して勝手ばかりしたせいで私が七歳の頃には関係者全員逮捕され、私達はみんな別々に預けられたわ」
「そうか。俺が居なくなってからそんな事があったなんて」
「あれ? 一人称変わった?」
「自信が付くと自然とそう成った」
「自身……過信の間違いじゃないの?」
 ほう--溜息を吐きながら俺はラキに尋ねる。
「最近のあなたは何だか良い気に成りすぎてるって先生方は言ってる」
「良い気ではない。あの月を見よ」ラキの目線を真っ二つの月に向けさせながら俺は言葉を続ける。「俺はいずれあの月を消し飛ばす」
「で、出来る訳ないでしょ! 月は魔導砲だって消し飛ばせないのよ!」
「魔科学はまだそこまで進歩してない証拠。だが、俺の魔力はそんな魔科学の進歩より速くあの月を消し飛ばせる」
「だから出来ないって! デュアンったら最近天狗よ!」
「天狗か」ラキに言われるまで気付かなかった俺の増長。だが、俺をそれを認めない。「その天狗様は一年ないし二年の内に超級魔法を習得して月を消し飛ばすプロセスを発見する」
「狂気だわ……何があなたを変えたのよ!」
 目の前にあるじゃないか--俺は真っ二つの月を指差す。
「そもそも月が真っ二つに成ったのは宇宙の神秘じゃなかったの?」
「いや、一人の男が事故でやった」
「出鱈目を言わないでよ、デュアン」
「出鱈目じゃない。現に俺は目撃する。何なら宇宙旅行のついでに月の調査でもしてみるか? 結構長い時間を掛けるけど?」
 いいわ--呆れた顔をしながらラキは断った。
 誰も信じないか。あれは確かに一人の男が偶然にも事故を起こし、その場を立ち去る。事故で超越した力を発揮出来る。そう、俺でも出来そうな気がしたんだ。それがあったからこそ俺は--
「デュアン!」
「あ、済まん」
「何呆けてるの? そろそろ風邪引くわよ」
 そうだな--俺は七年振りに会ったラキに手を掴まれながら宿舎に戻る……

 才能に溺れる奴或は困難に屈する奴は大抵授業をサボタージュ。理由を聞きたいか? 前者の場合は教える側のレベルが自分よりも低いと思い込み、受ける価値がないと勝手な判断を下す。後者の場合は困難から逃げたい臆病者。
 だが、俺は違う。例えレベルの低い教師でも授業を受ける価値はある。理由か? 格付けしがいがあるから。勿論、ノートはちゃんと取る。同時に格付けノートに教師の傾向及びその教師の授業を受ける黒魔法学部風属性学科、水属性学科、火属性学科、陽属性総合学科の奴等の傾向を格付け。
 格付けの内容を知りたい? 良いだろう、少しだけ教えよう。今受けてるのは空気と風という授業で担当教諭はナニ=ノンニード・ノーティスで奴の授業を受ける連中は無断でトイレ行ったり奴の前や後ろを通ったりする。多分、授業を受ける奴等は授業を受けたと思わず好き勝手してるんだろう。
 そんな感じでこの講義の単位を取れる連中はほぼ半分で単位を落とした連中の大半は落とした事にも気付かない。それだけ担当教諭の存在は薄いと断言。
 俺の場合はどうか? 一応、真面目に授業を受けてるとはいえ人種はデイズ人。当然、単位を取得出来るかわからない。現在、前半の講義を全て受講した結果だが……成績が良いにも拘わらず半分以上はD判定。良くてB判定。Aを取れる可能性すらない。まあ後半で全てがわかるんだ。ここでも半分以上がD判定ならデイズ人への差別は根深い。
 中等部のある屋上で俺は前半の成績を記した通知表を眺める。一回だけ抗議はした。結果は変わらず……相談役にすら俺みたいな人種は嫌われてるとは。俺の何がいけない? 俺は山を越えて成績は誰よりも高いと自負。運動だって誰にも負けない。にもかかわらず俺の成績は悪い。授業だって真面目に受けてるんだ。提出物だってしっかり済ます。それでも彼等にとってはデイズ人がユミル人よりも優れていると認めないというのか? 俺には『フィリスト』の考えを理解する脳は備わっちゃいない。
 フィリスト……それは『フィリア』の子供達、即ち彼女の子孫に当たるユミル人を指す。彼等は『フィリア』の生誕地を取り戻すべく古代から近代に掛けて民族運動を展開。数多の血を流し続けても粘り強く運動を継続し遂には……
 止めよう。フィリアの子孫と勘違いするユミル人共は救い難い。仮にフィリアの子孫だからって運動の為に何をしても良いのか?
 何考えてるの--俺を覗き込む暇人が一人。
「太陽を格付けしてたんだ、ラキ」
「太陽は格付け出来ない。常に私達を照らし、悪行を働く者に灼熱を与える」
「太陽神アポロンの事か?」
「いえ、私達ユミル人の神……創生神『ディー』よ」
 ディー……それはこの惑星を土から作りし神。偉大なる賢者にして最高位の魔道師。マギの全てを知る者。故に神に相応しく、全民族はディーを崇める。そして……
「噂ではディーはユミル人だったな」
「ええ、そうよ。ユミル人故に全ての民族はユミル人の子孫に当たるの」
「その中で俺達デイズ人はディーを侮辱した罪で未来永劫魔術回路が未熟だ」
「神話の話でしょ。確かに魔術回路は未熟だけど、魔科学研究ではユミル人より先を行く」
 どうかな--この時代では最早デイズ人の栄光を取り戻す機会はないと俺は考える。
「そんな事よりもあなたの噂は耳に届いたわ」
 ラキが魔導学園の奴等から聞いた俺の評価。先ずは教師勢。主に高等魔術師連中によると俺はあまりにも生意気で十年以上の努力も僅か一日で習得する俺の才に嫉妬したような評価。別に一日で習得しちゃいない……法則を見出したのでそれをあらゆる事に対応して学んだだけ。
 次に下級魔道師達の評価は……意外な評価だ。高等魔術師と歩幅を合わせるかと思ったが、奴等は俺を危険視する形で評価してるとの事。但し、奴等から言わせれば妄言に当たる『月を消滅させる』という俺の口癖については笑いのネタとの事。
 上級魔道師達の評価だが、彼等と対面する機会はラキには持ち合せていない。俺だってそいつ等の全貌はわからない。よって評価不詳。
 生徒達についてだが、先ずは同級生の評価。俺を認める者は一割も居るか居ないか。それだけ俺はあいつらに嫌われてる。
 次に下級生の評価は……上級生や教師陣の顔色を窺って下手な評価を避けてる模様。
 最後に上級生の評価は……随分と俺は人気者だな。とにかくどうにかして俺を潰したいな、特にマリックは俺の事を大層面白くない存在だと認識してる模様。
「……以上であなたについての他人の評価は終わるわ」
「大体は俺の格付け通りだ。だが、お前が俺にこんなつまらない事を伝えるのは……上級生で高等一年でもうすぐ飛び級で学院に入学するマリック・ディンリィが俺を潰しに来た事だろう?」
「それもあるけど、違う」
「他に何かあるのか?」
「デイズ人……あなたは命を狙われてる」
 命を--当たり前の事を何言ってる?
「あなたの当たり前は今回だけ当て嵌まらない」
「マリックは何時も通りだし、高等魔術師方の教師陣は俺を妬んで毒殺或は呪殺しようという魂胆は丸わかり--」
「神童『クラリッサ』があなたを消去しに来たの!」
 クラリッサ……本名クラリッサ・ロロリアーナ。ユミル人でマリックと同じ年だが、奴みたいな小物とは大違い。僅か七つで学院飛び級へ入学する程の才を誇り、僅か十三で教授の仲間入り。教授の仲間入りは即ち上級魔道師達と肩を並べるのに等しい。今じゃあ魔導学園では五本の指に入るくらいの実力者でなおかつ融通が利かない。専門の分野はこれまた結属性と習得するのが難しい所。既にそれらの超級魔法及びある固有魔法を習得済みとの事。それだけの歳でありながら保守的で学園の危険分子は即刻消去する事さえ辞さない風紀委員長の行き過ぎた例。
「そこまで説明しなくて良いでしょ」
「フッフッフ……」俺はラキが居る前で笑いが込み上げ--
「ハハハハ」と大声で笑いながらこう言ってのけた。「クラリッサか! 上等だぞ、クラリッサ!」
「無茶だわ、デイズ人!」
「無茶も屁ったくれもあるか! あの女が俺に挑戦状を叩き付ける以上は徹底的に叩き潰しておかないとならんだろう!」
「でも勝てないわ。だってクラリッサは--」
「魔道師……しかも上位。でもなあ、ラキ。俺はデュアン・マイッダー。今は太陽が照らす時間帯だが、真っ二つに成った月を消滅させる男だ。あいつには力の差を思い知らせてやるんだからな」
 出来ないわよ、今のあなたでは--とラキは言う。
 俺はこの時、ラキの言う事を素直に聞いておくべきだった……

 二日後の月が照らす日……クレーターの中心に俺が仰向けに倒れ込んでいた。ローブはボロボロで指が動かない。俺を見下ろすのは賢者のローブを身に纏いし神童。顔付きは綺麗の部類に入るが、眼鏡は余計だろ? おまけに胸は何かの膨らみがあって多分、乳牛の真似事でもするんだろう……俺は知らんけど。とにかくあの女に傷一つ付けられずに俺は敗れる。
「まさか私の左手に痺れを覚えさせるなんて」
「表面だけじゃよくわかんねえなあ」
「あれだけの魔法を受けてまだ喋る余力があるのか?」
「とにかく俺は負けたんだ。止めをさ……せ」
 肺に血が溜まるせいで上手く話せなかった。吐血しながら俺は喋るのかよ、面倒臭いな。
「そのつもりだったけど……気に入った」
「はあ?」
 俺は聞き違いなのか、クラリッサに尋ねる。
「気に入ったと言った。どうだい、デュアン? あたしの弟子に成らないか?」
「断る」
「拒否権はない、デュアン。お前の魔力といい、その才能といい危険過ぎる。何れあたしじゃなくとも上級魔道師の誰かがお前の命を取りに来る」
「そん時は返り討ちに--」
「あたしに返り討ちされた男が他の魔道師を返り討ちに出来ない。お前は若すぎて自信に溺れてる」
「お前は十六歳だろ?」
「だからこそあたしはお前が必要だ、デュアン・マイッダー」
「未熟だと主張するのか、お前も?」
「お前じゃない、クラリッサだ」
「断るからさっさと止めを刺せ、クラリッサ」
「それは出来ない。それに良いのか、月を消滅させる程の力を身に付けなくて?」
「月を」それを聞いて俺はどうしたか? 「どうせその方法知らないだろ?」と聞いてみる。
「あたしにはとてもじゃないが無理。だが、デュアンなら出来る。だから弟子に成れ、デュアン。そしたら--」

 その後についてか? 正直この時期は恥ずかしくてどうしようもなかった。俺ともあろう魔術師が女に負けるんだ。しかもコテンパンだぞ。正直どうしてあんなに過信したのかわからないぜ。もう思い出したくない……でも思い出さないとその後の俺はどうやってそこまで上り詰めたかわからないだろ? あるんだよ、その後が……だけど、この続きはまた今度な!


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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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