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格付けの旅 少年デュアンの憂鬱 魔導学園

 魔導学園……改めて説明するとそこは全ての魔術師が魔道師に成る近道として志願する。才能ある者は魔道師へと上り詰め、更には権力さえ握り始める。才能のない者は努力で魔道師へと至って行く。
 ふう、駄目だな。僕にはどんなに頑張っても才能がない。院長が言った事は間違いだった。僕に魔法の才能があるというのは。無理なんだよ、こんだけ有象無象居る中で教師に認められるなんて。僕はデイズ人なんだよ。デイズ人は魔法の才能がないんだ。出来ないんだよ、魔術回路が乏しいから。
 僕はここへ来て二年頑張った。毎日本を読んでばっかり。『マジカルネット』で見つけたマル秘魔法なんて物を覚えてみたけど、全然当てに成らない。ああ、『マジカルネット』? 知らない。僕はその辺に詳しくない。とにかく僕には零詠唱は出来ても下級魔法より先は覚えられない。結局僕には才能はなかったんだ。だから僕は荷物担ぎとして上級生に扱き使われる。
「おい、デイズ人! ファイアーボールしか覚えられないデイズ人」「仇名はファイアーボールで良いよ」「とにかくこいつ何で魔導学園に入ってるんだ?」ファイアーダガーやファイアブリットといった火系下級魔法を覚えられない。だから上級生は僕にそんな仇名を付ける。
 虐める上級生は三人。リーダー格のスモール五回生であるユミル人のマリック・ディンリィ。神童として謳われ、今のペースでいけば僅か十五歳で魔導士に成れるほどの存在。但し、他虐精神と選民思想に溺れる。故に能力の低そうな人間を見つけては僕のように虐め抜いて楽しむ下劣な人間性を持つ。
 小太りはスモール四回生であるユーロ人のバン・バラン。魔法の才能こそ凡庸だが、腕っ節が強い。『魔武道』の才能に恵まれ、風手の黒帯に後一段と迫る。だが、彼もまたマリックと同じく虐めっ子気質。故に弱い相手に暴力をふるっては楽しむ下劣な人間性を持つ。
 最後が出っ歯が特徴的なスモール四回生であるローマ人のスンネ・ホネッガ。金持ちの御曹司でなおかつ自慢話が鼻に吐く性格。何かと虎に媚びへつらい、狐のように威張り散らす。魔法の才能は凡庸だが、我儘で手に負えない。気に入らない相手がいると家の力で抑えつける困った人間性。但し、三人の中じゃあまだ話が通じるかもしれない。
 とにかく僕は重い荷物を必死で運びながらあいつらを格付けする。僕の唯一ある才能こそ格付け。とにかく良くも悪くも僕は格付けだけは誰よりも優れる。それがデュアン・マイッダー。
 僕はとにかくあいつらへの復讐を考えたりもする。荷物運びしながらある教室に到着すると僕以外は中へ入る。ファイアーボールの応用でスンネの服にほんのちょっと焦げを付ける。大丈夫、焦げ臭いのは最初だけ。そうして僕は中へ入る。このように単純でみみっちい復讐をするだけ。でも、それが大惨事を招く事に成るのは……その教室で僕はいつものように集団暴行を受けた後だった。
「ふう、気分晴れるぜ」「普通の奴を虐めるのは両親が傷つくけど、デイズ人ならどんなに虐めても教師がスルーするしなあ」「んん?」全く身体中痛いよ。
「さっきから臭わねえか?」「それ以前に息苦しくないか?」「頭が痛くなってきやすが」ざまあみろ、お前ら--密閉した状態では一酸化炭素が充満してるんだぞ、しかも徐々に。
 でも洒落じゃなくなるのは直後だ。急に膝を付ける上級生達。それから呼吸困難に陥り、意識を失う。
 大丈夫ですか、先輩方--僕は揺さぶるけど、全く意識が戻らない。
 僕はこの事態を避ける為に窓を開けようとするけど……結界が張られて自力では開かない! 何時誰が結界を? あいつらも僕もそんな事出来ない。
 という事は--そう独り言を呟きながら僕は入って来た方の扉を開けようとする。
 やはり駄目だった! 何度扉を叩いても、何度開けようとしても無理だ! 誰かがあいつらを殺そうとしてる! それも僕を餌にして! 誰の仕業? ねえ、開けてよ! 僕は叫ぶ! 自らの過ちから逃げようと必死に扉を開けようとする僕! でも僕は……僕は--

「オイ、起きろ!」「一瞬死んだかと思って心臓止まるかと思ったぞ」「急に気を失うな、デイズ人」どうやら夢を見ていた--火を点けようとする所まで夢なのか?
「僕は? そうだ! どうして気絶したんだ?」
「ああ、スンネの服に火を点けて直ぐだ」「全く僕ちんに何の恨みあるってんだ?」「零詠唱するからだ、バーカ」そうか、あれはそうゆう意味だったんだね。

 僕は一向に他の属性を覚えられない。才能がないから? デイズ人だから? 違う……恐かった。あの夢が僕を縛る。人を殺し、僕を閉じ込めるあの教室。いくら力を込めても抉じ開ける事が出来ないあの扉。横たわり、今にも死にそうな上級生達。あれは何を意味するんだ? 僕は何をしでかそうとしたんだ? あれは悪夢だったのか? 僕は夢を見始める。








 そこはやはりあの教室。そして結界が張られていくら魔法を出してもびくともしない。どうしてか? 窓を調べてわかった。ここは『時の迷宮』……だから時間が進まない。
 時の迷宮……それは当時の僕が考えるには時が止まった世界では老いる事も成長する事もない迷宮としか答えられない。
 そんな所にどうして僕みたいなデイズ人が閉じ込められるのか? 誰かが僕をそうしてるのか? この扉が開かないのもそうだ。そして足下には屍が増える。僕はやってない! やれないんだ! こんな事やりたくないんだ! 僕は僕は僕は!








 やりたくないんだあああ--と大声で叫びながら起きる事に。
 まだ太陽は来ない。そんな時間に僕は目覚める。

 何時まで経っても僕は魔法を覚えられない。黒魔法と白魔法の区別も付かない。『マギ』の歴史も覚えられない。でもわかる事がある……誰かが僕を貶めて僕の力を発揮出来ないようにしてるんだとか。そんな風に考えると益々情けなくなる。魔導学園では運動はあまり重点に於かない。但し、ランニングは日々欠かさない。何故って? マナがいくら多くても魔法使いも運動不足じゃ長時間の戦闘は無理。僕ぐらいの人間にはどうし運動しなくちゃいけないのかわからないだろうね。でも必要なんだよ、体力って。戦いでは何処まで行っても力のない人間は生き残れない。これは『マギ』創生時代から培われた常識。骨を扱う頃から全く変わらない。
 だが、何時頃なのか? 人間が『マギ』を手にしだしたのは? クーラクの小説によるとモノリスが原因だけど、現実はどうかな? どうして『マギ』を手にし出してから同族で争うように成るのか? ついでにあれを説明しておこう。
 マギ……それは全ての魔法及び呪術の原点。何かを生け贄にして魔の法を得るという点では呪術に近く、自らのマナを消費して火を起こす奇跡を示す点では一般的な魔法に近い。だが、そんな説明ではつかないのがマギ。僕でもそこまで詳しくない。
 だからこそ僕はマギを知りたい。マギを知れば僕は誰よりも上に届ける。いや、誰よりも深淵に至る。でも自信がない。見えない。そして部屋に閉じ籠もる。僕は一人ぼっち……

 一年が経過……僕は九歳。現在、火系のみならず水系、風系もやっと習得したばかり。これからどうゆう風に僕は魔術師としての道を選ぶか? 何故こんな事を考えるかって? 実は魔術師には三種類の道があるんだ。一つは『陽魔術師』、二つ目が『陰魔術師』、三つ目が極少数の『結魔術師』だよ。
 陽魔術師……それは火、水、風を専門とする魔術師。数が最も多く、なおかつ闇に浸りにくい。
 陰魔術師……それは地、氷、雷を専門とする魔術師。陽魔術師に次いで多いが、闇に浸りやすい。
 結魔術師……それは光、闇、重を専門とする珍しい魔術師。極少数で習得が最も困難。
 陽魔術師を目指すのも良い。でも僕が目指すのは三つではない。第四の道『総合魔術師』さ。
 総合魔術師……それは九つの属性魔法を習得した者の事をそう呼ぶ。結魔術師以上に困難でなおかつそれぞれ異なる属性を備える為、マナの量も尋常ではない。だが、この道を進める者は否応なくして魔道師へと至る。それだけに至高の道。
 何て格好付けても始まらないか。僕は確かに努力した。火以外にも水や風だって覚えた。だけど、デイズ人らしく肝心の魔力は高まらないばかり。攻撃魔法だってバリエーションが少ない。こんな物で何の自信が持てるのだろう?
 僕の悩みは年月が経とうとも変わりはしない。現在、こうして月を眺めるのは何故だろう? 月はどんな世界であっても変わらずそこにある。崖の上から眺めるとそれは最高に自分を酔い知る感覚に陥らせる。あれ? 酒を飲んだ事もない僕がどうしてこんな訳の分からない事が考えられる? 最低だよ、僕は。何の才能もなく、更には産まれた頃からデイズ人である事を強いられる僕に何の価値があるんだ? いっそここから飛び降りて、月に召されたら最高なのに。そう思った時……誰かのくしゃみが僕の思考を途切らせる。
 僕はくしゃみの発生源に顔を向ける。それは暗くて良く見えない? いや、ちょうど光が彼に当たらないせいかな? それならはっきりわかる距離まで近付こうと思考してると向こうから迫る。
 ここで何してるんだ、君--声を掛けるのは肌が緑色のやや高身長の人。
「月を眺めてたんだ。月はどうして何時も太陽の光を浴びて綺麗に映るんだろう、て」
「月ね」細長い物を腰に掛ける男は僕の言った事を確かめるべく、月に目を向ける。「兎が餅搗きしてるんじゃないかって子供の頃は思ってたんだけど」
「それはない。だってあそこには空気がないんだよ」
「え? 行った事あんの?」
「ないよ」
「じゃあどうして空気がない事知ってる?」
「そりゃあ学園の授業で学んだよ。月には自然の重属性が薄く、なおかつ空気がない。ほぼ宇宙と同じくらい声さえ届かない」
「おまけに寒かったり暑かったりするから動かずには居られんよな」
 ちょっと待って--僕はその人がまるで体験でもしてるかのような言い方に疑問を抱かずにいられない。
「何かおかしい点でもあった?」
「あるよ。どうしてあなたはさも体験したような口ぶりなんだ?」
「実際に何度も月に行った事ある」
「まさか宇宙船に乗った事--」
「ない。自力で行けるわいがどうして宇宙飛行士の訓練受けにゃならんのだ」
「自力では無理だよ。だってジャンプしても限界があるんだよ。仮に宇宙を出られる跳躍力があっても熱でやられてしまう」
「あのさあ」男は僕に対してこう尋ねる。「幾つだ?」
「九歳。あなたは?」
「すっかり年齢を忘れてしまった。僕は人より数倍長生きな種族に改造されたらしい。後は武者旅行に行く内にどれくらい生きたかもすっかり忘れちゃったよ」
「適当だよ、あなた。世の中を舐めてるとしか言いようがないよ」
「世の中を? 別に舐めちゃいない」
「いや舐めてる。そうやって無計画に人が生きられる訳がない。何時だって困難が待ち構え、何時だって高い壁が立ちはだかるこんな世の中をどうして無計画に生きられるか!」
「高い壁? 壊せば良いだけじゃないか」
「いや物理的な事を言ってるんじゃない。精神的な--」
 そんな物は俺とアズナーが居れば大丈夫--細長い物から何かを抜き出すと月に向かって鋭い所を突き刺す男。
 彼が勢いよく抜き放った衝撃で思わず僕は吹っ飛ばされ、何かにしがみつく事で崖から落ちる事は免れた。何もかも出鱈目な男でも僕を吹っ飛ばした衝撃は先程までの嘘八百を本当にさせる説得力を帯びるのに十分だ! その証拠に月は……真っ二つに割けた!
「あ、いけね。あ、ああ君? 今のは見なかった事で良いよね。じゃ、じゃあ元気出すように」
「あ……ええ」
 男は逃げるように何処かへ去った。僕は暫く這いずり、元の位置まで戻ると再び月を眺める。そう、月は割けた状態。あの男は間違いなく手加減を知らない。だが、何だろう? 僕は男と何処か共通する物を感じた。あの男は確か月を真っ二つにしたんだよな。何故だろう? 僕は出来そうな気がする……あの男に出来る事は僕なら何でも。この日、僕は……誰にも負けない自信を身に付ける。
 デュアン・マイッダーは自らの存在は例え神であろうとも止める事は出来ないという傲岸極まりない自信を身に付ける……悪魔のような笑顔を帯びながら!




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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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