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格付けの旅 少年デュアンの憂鬱 孤児院の日々

 思い出……それは全ての生物が誰しも必ず抱える物。時には楽しく、時には封印さえしたい物。思い出は記憶と同一かと説明するとそうであって異なる物。記憶がいわば善悪関係無しに保管されているなら思い出とは決して忘れる事のない印。
 俺がどうしてこんな事を説明するのか? ついつい思い出したんだよ。何処で? 教えない。
 それよりもどんな事を思い出したかって? それは今から何千年? いや何万年に遡るかな? 俺の体感するくらいの昔……最初はどうしよう? 俺が『僕』だった頃で良いか?

 そう僕には親は居ない。『第三次魔導戦争』によって世界は魔導砲の冬を迎える……人間の争いは果てる事を知らない。指導者はどうして簡単に大量破壊兵器の使用に踏み切れるか? 僕だって知りたい。知れば目の前で両親も死ぬ事がないのに。あ、ついでに--
 魔導戦争……それは当時の世界規模で行われる世界大戦の事をそう呼ぶ。僕の住む星は確か惑星<ディー>だったかな? エーテルが実質支配していて、ヒッグスは全ての物質に質量を持たせ、電波の存在は否定された宇宙。話が違うって? そうだった。えっと、魔導大戦についてだよね。魔導大戦は僕の知る限りでは全部で三つ。一つ目がイーゲルシュテルン半島にあるテレジアの国の皇太子夫妻がミロシェビッチに住む青年の魔銃によって殺される事件を切っ掛けにテレジアがミロシェビッチに宣戦布告。テレジアを支援する様にビスマルク、メフメドなどの同盟国が参戦し、片やミロシェビッチにエリザベス、ピョートル、ナポレオンが支援する様に参戦。本来ならこのままで良かったが、どうゆう訳か火病遺伝子のローマにヘタレだが意固地なワシントン、八百万もの神が集うアマテラスまで参戦してさあ大変。泥沼と化したユーロ大陸。様々な魔導兵器が登場し、長期化。終わってみるとどうゆう訳かピョートルはレーニンへと国を変貌し、世界一だったエリザベスの帝国は地位を捨て、田舎者だけが集まるワシントンは台頭し、何故か不完全な国際連盟が築かれる。
 あ、御免。最初の魔導大戦だけに説明で打ち止めする。長いし、まだまだ勉強の余地あるから。何故って? 僕はまた先生に怒られて廊下に立たされてるんだ……水魔法で貯めたバケツ二つを両手でそれぞれ持って。
「--ええ~、皆さんはこれから主神ディアナの御加護がありますように」
 主神ディアナか。僕が焼け跡から彷徨ってる時にそれを信奉する団体に保護されたんだっけ? えっと、両親が死んだのは二年前だから……確か四歳の頃だったかな? 外は魔導砲から放たれる大量のマナで汚染されてたな。僕はそれを間近で吸い込んだっけ? 結果、僕は生きてるけど両親の顔は酷い。思い出したくない。皮が剥がれ、目ん玉が飛び出る父さん。身体はなくなり、影だけが残る母さん。けれども僕は生きてる。庇ったお陰で生きてる。けれどもとお産は庇う前に受けちゃって、母さんだけは庇ったはずなのに影しか残らない。これがアマテラスで代々伝わる魔導砲の恐ろしさかな?
「コラア、デュアン! バケツを持たされるだけじゃ済まないか! 今度独り言吐いたら孤児院を一周するって約束だろ! さっさとこれ--僕は悪魔の子ですと書かれた札--を掛けて走れ!」
 とまあこんな感じで僕には何の説明さえ与えてくれない! 僕は孤児院選びに失敗したんだ。みんな悪い奴等で比較的劣悪な生徒をこうして虐待するんだよ。ハアハア、疲れる。走りながら僕はあいつらへの復讐を考える。

 僕の名前はデュアン・マイッダー。僕は『デイズ人』。それが原因で僕には『マインドスピーカー』が装着されてる。
 デイズ人……それは第三次魔導戦争を引き起こし、<ディー>を焦土にさせた民族だと言われる。たったそれだけで僕は。説明がまだだよな。デイズ人は髪が緑で眼は黒く、魔術回路が未熟な民族。但し、発明好きが多く、今でもデイズ人の技術を世界中の権力者は欲する。その発明好きが魔導砲を開発し、そして魔導砲の撃ち合いで焦土へと追いやった。だが、トリガーを引いたのは何もデイズ人じゃないはず。それでも作った民族に罪を被せるのが権力者達。
 とまあ僅かだけデイズ人を紹介した。じゃあこれも紹介しとく。
 マインドスピーカー……それは前科を犯した者が再犯防止の為に身に付ける物。これにより、泥棒や殺人を食い止められるらしい。どんな物か? 心の声が聞こえる。このように説明してる事も周囲には聞こえる。いわゆるサトリと思えばいい。サトリが常時発動中の人間をサトラレと呼ばれる。僕はそんなサトラレと同じ状況にある。違うとしたらサトラレは自分がサトラレだと思ってない。自覚し出すと自殺する可能性が濃厚。それくらい不安定な存在なのさ。但し、サトラレも使い所によっては仕事の効率化を促す。まあそんな感じだよ。
 僕がこうして長い説明が出来る理由? 何時も通う崖っぷち。あそこで僕は一人に成る。ここなら誰にも聞かれる事はない。
 ああ、それとマインドスピーカーについて補足。これは僕の胸に埋込まれてる。外せばドカン。擬音で表現すればそうだ。仮に外せてもマインドスピーカーの不調ではないかと疑われる。そうして触診されてバレ、より強力な物を埋込まれる……の繰り返し。僕はこれを外す術は知ってる。でも外す気はない。まだその時期じゃない。
 孤児院は悪質だ。僕がデイズ人だと知るやら色々と差別を行い、苛めだって黙認。終いには食事だって一日一食。空腹をどうしてるか? 暇な奴から何時も--
「またここに居たのね、デイズ人」
「君か、また暇だからパン取ってきたんだ?」
「食べる?」
 有り難くな--僕は意地を張らない、だから食らいつける。
「一日一食ってきつくない?」
「差別よりか平気」
「嘘ね。デイズ人は食べ物欲しがってた癖に」
「それで『ユミル人』さんは何を思ってる?」
 ラキ・ベルフェルよ--それが暇な奴の名前。
「僕の事を民族名で呼ぶ癖に都合が良い」
「差別してると思わせないと」
「『ユミル人』は確か、流浪の民族と呼ばれてたはずだが」
「もう流浪の時代は終わったの。今では<ディー>の支配者。えっと、何時もの説明は?」
 ユミル人……第二次魔導戦争から第三次魔導戦争を経て、<ディー>人の頂点に立つ民族。かつてはハヤトの十戒でも有名な流浪の民。魔術回路が優れ、それでいて勤勉で優秀な民族。故に他民族からは嫌われ、数千年にもわたって弾圧されてきた。その例としてベネテアの商人が有名。そんな流浪の旅も第二次魔導戦争の終結と共に終り、聖地に国を建てる。ところがここで--
「そこまでで良いよ、デイズ人」
「君も大人げない」
「子供よ、私もあなたも」
「僕は何かを格付けるのが大好きなんだ。最近では孤児院に--」
「駄目よ、デイズ人。また酷い事を受けるよ」
 どうだろうね--この呟きの後にラキはどっかに行った。
 彼女だけだ。僕の味方をしてくれるのは。だから僕は今日決行する。この、マインドスピーカーを解除して!

「デュアンが居ないぞ!」「何だと、あの糞餓鬼があ!」「デイズ人は逃がすな、最悪殺してでも良い!」何て今頃は叫んでるだろうかな?
 僕は自由を求めて逃亡を図る。僕の自由は何か? 革命を起こして住みよい世界? デイズ人だけの世界に暮らす? どちらも違う。僕は何かを格付けするのが好きな性分。その性分を好きなように出来る自由を求めてマインドスピーカーを外した。
 僅か五分で奴等はもう僕のルートを探ったのか! マインドスピーカーは確かに外したら外したポイントがどこかを孤児院に知らせるのは知ってた。でも僕がこのルートで逃げる事までは読めない。ならば何か? 『告発者』が潜んでいたな?
 告発者……それは独裁国たらしめる悪意の証言者の事。大昔なら平安京のアマテラスでキヨモリ政権下の告発者もそうだ。近代ならレーニンのヨシフ政権。彼等は独裁者にとって都合が良く、自分の反逆する目を根こそぎ引き抜く為に彼等を寵愛する。告発された者はたまったものではない。中には一族根絶やしにされた者だって居たとか。
 何て考えても仕方ない。僕を告発する人間は誰か? マインドスピーカーを最後に聞いた奴か? 吐かされたな、あいつは。まあ、誰も信じてないけどね。
 岩陰に隠れ、去ったのを確認すると走り出す僕。更に岩陰に……の繰り返し。僕は極度に心臓の鼓動を高める。あまりの恐怖に心臓は鼓動を速める。僕は恐怖する。彼らに捕まれば死ぬという恐怖に! 仮に生かしてもあいつらの事だ。より過酷な事を僕に押しつける。それは嫌だ。だから僕は鼓動を速めながら逃げる。心臓の音は自分自身にしか聞こえない。そんなに耳が良い奴らじゃない! 『エーテル』の波が僕の心臓の音を拾ったりはしない。
 エーテル……それは惑星<ディー>を構成するエネルギー。エーテルは魔法学の発展に寄与。かつてはジュールの名作海底二マイルに登場した潜水艦。今ではない方が珍しい潜水艦にマナという動力が使われた背景にはジュールの卓越した『MF』考証があっての事。どうしてか? 彼がエーテルに精通してる故。
 はあ、もっと勉強しとこう。ちなみにもう一つも今までの知識を駆使して紹介する。
 MF……それはマジカル・フィクションの略。魔法学に基づいて遥か未来を描く小説の事をそう呼ぶ。代表的な作家は中世なら物理学者ケープラ。革命後の中世ならタイムマシンのウェールズ、月世界旅行のジュール。近代ならゴーレムと帝国のアシッモ、宇宙の賢者のハイライン、幼年期の終わりのクーラク。とにかく彼らの未来魔法学を想像して描いた物は今ではほぼ全てがフィクションじゃなくなる。但し、当時の考えもあってか予想と食い違い部分は多少あるのも仕方ない。まあ、フィクションだから仕方ない。
 エーテルの波は僕の鼓動まで拾わない。僕はそう考える。悪影響だもんな、『ペースメーカー』持ちがエーテルの波を受けたら異常をきたし、死んでしまったら困るだろうに。それと同じだ。
 ペースメーカー……それは心臓が弱い人間に付けられた装置。これがあると生きていられるとか何とか。但し、携帯電話の発するエーテルを受けるだけで異常をきたしやすい。さすがに僕の時代にはそれも解消されてるとはいえ、油断は禁物。なので第三次魔導戦争が始まるまでの通勤ラッシュ時に電車内での携帯、スマートホンの電源を切るかマナーモードにするのはその為。余分なエーテルで人を殺したら困るからね。
 もうすぐ崖だ。僕はそこへダイブしようと腹を括ってる時に追手が迫る。
「見つけたぞ、デュアン!」「お前はもう逃げられない!」「飛び込もうとしてるのか、止めとけ!」そう聞こえた。
 飛び込めば死ぬ。わかってる。向こう側が見えない。考えればすぐわかる事。だからどうした! 僕は逃げる為ならそんな理屈なんて吹っ飛ばす。そう考えた後に飛び込む!
「あの餓鬼が!」「たった六歳児の癖に大人みたいな頭の良さは一体!」「関係ない話すな!」「死体でも良いから見つけろ、あのデイズ人を!」という声が聞こえる。
 寒い。風邪を引いた。風邪が引いたという事は徐々に熱を出して体が重く成るのか? 状態異常を治す魔法でも記憶しておく……関係ないか。俺にはファイアーボールしか使えない。後は俺が発見した詠唱法とやらで……『零詠唱』で。
 零詠唱……それは詠唱時間を零にする画期的な詠唱法。但し、早口であればある程威力が落ちるように零詠唱だって威力の保証は出来ない。
 と成るが、俺は威力を維持しつつ詠唱する方法を発見した。いざという時はこれで--
「見つけたぞ、デイズ人!」フード被ってるという事は本気で殺す気か、こいつら!
「二対一を卑怯と思って……あ、六歳時には難しいかな?」
「理解出来るよ、それ。卑怯だよな、子供相手に大人が二人掛かりなんて!」
「ませた餓鬼だな、デイズ人」
「お前のようなデイズ人が世界を滅ぼしたんだよ」
「どうして子供の僕にそんな罪を被せる訳?」
「黙れ、デイズ人!」
「貴様らみたいなのが居るから俺達は活躍出来ないんだよ!」
「へえ、さすがは二枚舌で有名な『ユーロ人』だね」
 ユーロ人……それはルールさえ平気で捻じ曲げる卑しき民族。古くから彼等は自分達の都合が悪くなるとルールの穴を突いて勝手なルールを提案する。それさえ不可能に成ると今度は暗黙の内にルールを破る。但し、破る場合は戦時下の限られる。何故か? 平時に於いてはルールを破るのは自らの立場が危うく成る為。よって勝てば官軍が出来る戦時中に奴等はルールを破る……そう、一般人が暮らす民家への無差別爆撃や大量破壊兵器による人体実験--
 説明の途中で僕は前方に居るゴリラ顔の男に顔面を蹴られた。鼻血は出てる。多分、止まらない。角で蹴った以上は花の中で大量の血液が出てる、傷口を塞ぐべく。
「ユーロ人だとかそんな事で言い訳済んじゃねえ」
「どうやら焼かれないとわかんねえみたいだね、デイズ人は」
 手を翳して唱え出す。終わるのは四秒弱か? だったら僕は試しに右手を翳しながら--
「オイ、魔法なんて出すのか?」
 ああ、出す--零詠唱のファイアーボールで詠唱中の男を焼く僕。
 男は悲鳴を上げて海に飛び込んだ。
「おかしい! 唱えたのはワイジのが先だぞ!」
 ウグウ、身体中が痺れる! 喉が枯れる! さらに熱が僕に襲いかかる!
「やっぱそうだ! 副作用がない方がおかしい!」
 こ、れが、零、え、いしょ、うの……

 気が付くとまたマインドスピーカーを首に嵌めこまれ、両腕を縛る錠と両足を固定する錠。そうか、戻されてゆくんだ、僕は。
「零秒で詠唱したあのデイズ人」「身体検査した結果だけど」「おかしい! デイズ人の癖に魔術回路が異常だぞ!」何て聞こえる。
 僕にとって魔術回路を増築するのは容易い。でも力がない。力のない僕だからこそたった一回の魔法を出しただけで恐らく一週間も寝込むなんて。
「容易いだと?」「六歳時とは思えない頭の良さ」「デイズ人は自分の身体にまで改造手術を施せるように成ったのか?」あ、マインドスピーカーで全て丸聞こえか。
 僕は一体どこへ連れて行かれるんだろう?
「何でもある賢者がそのデイズ人をスカウトするそうだ」「どうせ人体実験だろ、魔導砲に耐えられるかどうかの」「こうでも言えばあのデイズ人は怯えるぜ」何て僕を怖がらせることばっかり話す奴ら。
 音からして水の音が聞こえる? 滝? 地理の詳しくない僕だ。適当な事を考えてみる。どうやって自殺しようかな?
「オイ、あのデイズ人が死のうとしてるぞ!」「奴の思考を読め、バダラ!」「まさか手足縛られてる状態で魔法を使う気か?」そのまさかだぞ。
 僕は迫る中で様々な考えを巡らし、あいつらを大いに混乱させる。あんな所に戻るくらいなら死んだ方がましなくらいの度肝を抜きそうな考えを!
「止めるぞ!」「もう止めた! 我慢ならん!」「オイ、デイズ人の分際でええ!」車を止めた上にわざわざ後部座席にまで体を乗り出してくれるなんて!
 恐いなあ、触診かな? どうせ暴力で--
「オイ、外してやったぞ」やった、外れた! 「嬉しいのはここまで。後はお楽しみタイムだよ」
 三人が不用心に僕へ近付く。安心しきった所で……撃つぞ!
「まさか--」
 そのまさかの……僕は一瞬にしてハンドルがある座席まで潜り抜けると!
 自殺する--と叫びながら扉を開けると橋の柵を素早くよじ登り、川へと飛び込んだ!
「最初からこれが目的か!」「何て糞餓鬼だ!」「マインドスピーカーでここまで惑わされるなんて!」僕が単一で考えると思ったのが運の尽き。
 でも、流れが速い! 手を伸ばしても届かない! 水が口か耳か鼻に入って来る! 駄目だ、息継ぎが! 端っこに届かない! だ、駄目だああ……

 気が付くと僕は手足を縛られ、天井を? 天井……そうか、寝かせられてるのか? 誰かが覗き込んでる? 皺が目立ち、口よりも顎の髭が気になる?
「目覚めたか、童?」
「院長? 僕にこんな事させて実験でもするのですか?」
「人体実験はせん。只、お前みたいなデイズ人は珍しくてな」
「もう調べた後じゃないんですか?」
「マインドスピーカーは付けない。これからお前はある所に入学して貰わないとな」
「ある所?」
「『魔導学園』とやらにな」
 魔導学園……それは全ての魔術師が魔道師への近道として志願する世界有数の学園。
「わざわざ説明しなくていい。色々お前については興味深い」
「人種差別しておいてよくそんな事が言えますね」
「魔導砲を直に受けながら何の後遺症もなく生きてるお前には何か秘密があると思ってマインドスピーカーなどで観察してた」
「デイズ人だから差別しただけじゃなく僕を実験道具としてみるなんて人の屑だな」
「お前みたいな童に言われたらお終いだ、わしは。とにかくお前の知能指数ははっきり言って高すぎる。その物言いはとても六歳児の段階じゃない。後は零詠唱……この歳でその術に辿り着けるなんてさぞかし恐くてのう」
「普通じゃないか、これくらい」
「そう思う事こそ普通じゃない。わかるか、デュアンよ。お前は魔道師でさえ到達し得ない零詠唱を僅か六の年で到達しおった。しかも副作用があまりなく」
「つまり僕は『天才』だと言いたいのですか?」
「この場合は『神童』……と言えるかの、それは?」
 僕は自らは何なのか僅か六の歳で悩み始める。院長に指摘されるまで気にする事がなかった僕。僕は『天才』ではない。かと言って『神童』なのか? 僕は何なんだ?
「悩むのはこの歳では普通じゃない。がこれだけははっきりしようかの。もうわしはお前を保護するのを止める。これからは魔導学園に保護を頼む」
「何かをぶん投げる訳ですね。で、どうします?」
「ああ、拘束具かえ? 心配無用じゃ。身柄引き取りの際は向こうに外して貰うようにするから」
 そうか--そう呟くと僕は天井の照明器具を見つめる。

 僕が搬送される時、誰も彼もが妬みと憎しみの眼差しで見つめる。中には聞こえないように陰口を言ってる奴等も。仕方ないか。デイズ人である僕が魔導学園に入学するなんてあっちゃいけない事なんだし。でも誰だろう? その中で僕に悲しそうな眼差しで見つめるのは居たような? 忘れた……僕には関係のない話だし。車の扉は締まり、『クリスタルドライブ』が起動する。
 クリスタルドライブ……それはエーテルとマナで動かすハイブリッドエンジン。こちらについては僕でも詳しくはわからない。何でもクリスタルドライブは種類によっては意味が変わる以上は。
 車が動き出す時、誰かが走り出す。徐々に距離を離して行く双方……僕は拘束されているから誰が車を追ってるのかわからない。声さえ聞こえない。でもわかる。誰かは唯一僕に複雑な感情で接してくれた。一体誰の事だ? 僕には誰一人として信じるべき人間は居ない。マインドスピーカーで垂れ続ける僕の思いをどうして誰かに理解されるのか? もういいか。僕の妄想だ、何もかも。
 僕は勘違いをしてるのだよ。これって僕くらいの年頃の人間なら当たり前のようにそう思い込むんだよ。夢だ。幻だ。そう僕は諦める。諦める? 口まで拘束されてないせいで酸っぱい物が流れるよな。決してお漏らしした訳でもないのにどうしてだろう? ああ、そうか……泣いてるんだね。



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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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