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一兆年の夜 第六話 特別配達員 シュラッテー(六)

 上空特別官ヒシャウ・シャウルルは最後にこう言った。
「必ずうう生いいきて帰ええってこおおい!」
 午後十時零分六秒の出動時に同じようなことをシュラッテーは言った。
 それは全ての生命が共通する当たり前で聞き触りが良い言葉である。
 けれども実行に移すのが非常に難い言葉であった。

 午後十一時八分十秒。
 場所は廃メデス山上空。
 特別配達の任務は飛遊みつな実通奈みつなの書簡を仙者天同あかつきに渡すことである。
 彼は一般の生命体には知られていない神武秘境と呼ばれる地に住む。
 その場所へ通じる道は藤原カエ彦が生前、発見した。
 それは山と山の間を通り続けていくという極めて理解に苦しむ道だ。
 それでもベンデルウム特別隊は通らなければならない。
「い、っくら任務のためとはいえ、こっの道えお通ろうとは!」
「キツイイイイ、ヤマカゼガアア! フキトバサレルウウ!」
「泣き言を言うものじゃないぞーお! 特別は、いた、ついんは必ず任務を遂行せね、
ばああーあ!」
「コンナとコロ、デエ、オレガ、ヤマカゼにやられるワケ、ニ、ハア!」
 特別配達員は皆、それぞれの苦痛を抱えていた。
 キュー香は上空配達において、山風に晒される場所を通るのは初めてだ。
 その為、羽に受ける風を調整するのは不慣れであった。
「イクラテンキヨホウガカイセイデモツライッス! コ、コ、コンアヤマカゼジャ--」
「つっらいのはいつものことだ!
 だっが我にとってはシュラッテーの爺さんに着いていくのがやっとだ!」
 デッガは上空流通配達で単独での上空飛行は経験済みだ。
 だが、集団行動における飛行は初めてであった。
 一方のヤマ蔵は子供の頃の遊びで兄弟と一緒に上空を飛び回った。
 それでも上空配達任務を始めるとなると皆に着いていくのに必死だった。
「だからといって諦めたら逃げるのと同じだーあ! 余は柊家のものーだ!
 ぐううう、ここで、引き下がれるかーあ!」
 最年少のザギ次は上空を飛ぶのは初めてだ。その為、この中では苦しそうだ!
「グウグ、オ、オ、オレハ、アソビで特別配達員になったんジャ、ナイんだあアア!」
 隊長のシュラッテーは配達員達を牽引する。
 しかし、老いという生命にとっては避けられぬものに苦しむ。彼が四名を
牽引することでさえ、肉体への重荷となる。羽を調整する反応も、速度
を上げるのに必要な筋力も何もかもが老いというもので満足に機能しない。
 それでもシュラッテーは力を抜こうとしなかった。
 それはこの道がカエ彦の遺産だけではない。彼の齢の半分を超える者と
超えない者で構成された配達員達を育て上げることに内心は喜んだ!
 そんな彼の姿勢は次第に配達員達を勇気づけた!
「シュラッテーお爺さんが、ムリして、ルトいうノニ、オ俺が、コン、ナコトで諦メテ、
ドウスル!」
「一番上の兄タッ蔵はーあ! き、っと怒鳴ーる!
 けれ、ども、怒鳴られるんなら、こんな所で怒鳴られるわけにはいかないーい!」
「おっやじが見てるんだ! かっみがみが見ているんだ!
 そっれにお前らが見てるんだ! そっれに四十過ぎの燕に勝たれて困るんだよ!」
「シュラッテーモミナモヒッシナノニ!
 ダカラッテコンナトコロデガンバラナイカラ、メデスザンノカミサマガ
オシカリナンダヨ! ソウダ! ソウニキマッテルワアア!」
 こうしてベンデルウム特別隊は廃メデス山上空を通過した!

 三月六日午前一時二分三秒。
 場所は廃小ティスノス村上空。
 そこは六十三年より前に起きたテレス村壊滅事件と同じ時期に起きた。
 生命は途絶え、木は枯れ、田畑は飢え、そして大地は荒廃した。
 それを上空で眺めていた配達員達は言葉を失うばかりだ。
 もはや再生する日は来るのだろうか。いや、来ないだろうと彼等は思った。
「シタヲミルハヤメニシヨウ! イマハマエヲムイテススマナ--」
 キュー香がシュラッテーの代弁をしている中、忌まわしい何かが眼前を捉えた!
「ナ、ナ、ナナなんダヨ! ド、ドウなんダヨ、アレ!」
「しょっ小ティスノスを滅ばしたもの、っか、あっ」
「あ、あ、あれは一番上の兄が死ぬきっかけを作った……」
「イマワシキモノオオオオオ! シッカモツバメノカタチイイイ!
 イヤアアア!」
 シュラッテーとヤマ蔵の心の中にある赤いモノを呼び出す存在。剥き出しのモノ。
 八十の年より前から続く悲しみからは逃れられないのか!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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