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一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(星)

 午前零時零分零秒。
 海は偶然にもサンショウ六達の無謀を応援する--まるで右翼を狙い撃ちするかのように次々と波はその場にいる傭兵や銀河連合を流しながら襲いかかる!
(僕は小隊長に掴まれている? 更には分隊長持参の雄略包丁『ツクモノカミ』の上に乗っかっている? 折れないかな?)
 そんな安心出来ない事を思う内に船は左右に揺れ、それから最大まで持ち上がった左翼は三名が飛ぶ絶好の状況!
 今だ、飛べエエエエ--ドストリーニの掛け声と共に跳躍!
 落下してゆく鯨型との距離は四百--まだまだ二つがくっつくには遠い。
「どうやら自分はここまでのようだなっち。生きていたら酒を飲もうかっち、サンショウ六っち!」
 イタ平は持参した『ツクモノカミ』を熊族に匹敵する力で振り回す--二名を鯨型に送るべく飛ばした!
(いくら見た目が筋肉質であってもここまで無茶が出来るなんて?
 そ、れでもまだ届かない?)
 鯨型との距離は百--ここまで来て二名の身体は落下体勢に入った!
「だから言っただろうん! 若い命は次を創るん為に生き抜くんと!
 わしは先に行ってるんぞオオオおおおおお!」
 鼓膜を破けんばかりの叫びで限界まで力を出し、サンショウ六をぶん投げたドストリーニ!
「有り難う御座います、小隊長殿オオオオオオ、分隊長殿オオオオオオ?」
 サンショウ六もまた叫び続けながら神々を信じる--風が背を押すのを信じた!
 神々は応えた--突如としてサンショウ六に襲いかかる暴風は背に強く押して、鯨型との距離を……零にした!
「ありがとう、神様? 今度はサンショウ子さんに感謝する番ダアアア?」
 サンショウ子から貰った足斧を右前足で抱え、それを上から下に加速させた--骨と骨の継ぎ目に嵌り込んで、痛がりながら軌道をずらしてゆく!
「落下針路はずらせたのはいいけど、どこに……わあ?
 サンショウ子さんの勘は凄い? 無かったら間違いなく海に投げ出されていた?
 ……なんて言ってる場合じゃない? 銀河連合はこのままにしておくはずがない?」
 サンショウ六の独り言は正しかった--サンショウ六を食らおうと次々と銀河連合が鯨型の上に乗り込んでゆく!
「このまま僕達は海に呑み込まれる? ただし、銀河連合達は確実にする為なら同胞に乗っかってでも僕を食事するのか? 海に沈む前に僕の命を食らう気なのか? 足が離せない僕は絶好の機会だと思ってるのか?
 それでも僕は簡単に食らったりしないからな?」
 三本足でも戦おうと決意を決めたサンショウ六--例え乗り込んだ銀河連合十五体が傾斜を利用してサンショウ六に特攻を仕掛けても!
「さあ、食べられるもんなら食べてみろよ? 僕はとってもお--」
 最後まで喋る間も毛先まで接近する間もなく、鯨型は海に落下--半径成人体型およそ四十はある水飛沫を上げながら周囲と外側より成人体型およそ七にいる傭兵と銀河連合を巻き込んで!
 サンショウ六の肉体は落下の衝撃で左後ろ足のみならず、右肋や左肋骨等々急所よりやや近い場所にある骨を折りながら深海へと沈む。
(グルじいぃ……? 死、ぬの、か? ぉ、ぅ、ぁ……?)
 全身強打は意識さえも深海のそこへと沈ませてゆく……。

 未明。
 サンショウ六は気付いた時、そこはあらゆる色が混ざり合う世界に居た。
『光が、眩しい? ここはどこ? 僕は山一サンショウ六? どうして自己紹介?』
 サンショウ六はまるで義務を果たすように自身を披露してゆく--好きな異性や、好きな食べ物、好きな趣味は何なのか、拘る所は何なのか、今やるべき事等々。
『って誰から命令された義務なんだ? 居るのかさえわからない眩しい場所で自己紹介なんて誰に命令された?
 まあ、いいか? どうせここは僕が僕自身の為に切り開いた<竜宮>かも知れない? 幻を自ら見るようになるなんてどうかしてるよ? こんなことしたって生命が変われる訳じゃないのに?』
『果たして変われないとお思いか?』
『え? どうして副……いや他にはベアケット分隊長にメエメンさんやきね由さん、それにサイ頭さんやマルノオビさんも? 遅れてきたのはカモノさん? どうしてここに?』
 サンショウ六は彼等に触れようとしたが、空を切るだけだった。
『止めとけやい、サンショウ六。わしらは光の集合体だい』
『光の集合体なにどしてまんまが出るかって?』
『思いーイ出がわしらを復元させたアアーのじゃ』
『分隊で過ごした日々は確かに短いス』
『短い事なんて関係なく俺達端お前似刻まれる!』
『オオここを幻と呼ぶのオオならさっさと目覚めろ! アア帰りをオオ待つ者がお前を捜しに潜った!』
『帰りを? まさか--』
 気がつくと空を見上げるサンショウ六--そこは光だらけの景色と異なり、海に濁った青い世界……。

 未明。
 サンショウ六は深部五まで沈んでいる事に気付くものの、全身複雑骨折のせいで思い通りいかない。
(イデデ……死にたくないとこれほど思えるのに?
 動け……デデデ? 動いて、くれ?)
 何度思っても身体は沈むばかり--息苦しさもまた増すばかり。
(今まで都合が良すぎた罪をここで払ってしまうのか? 死にたくないよ? まだまだやりたいことはまだ見つからないけど、守りたい生命は居るのに?
 このまま……あ、れは?)
 サンショウ六を助けるべく一名の山椒魚が泳いでくる!
(間違いない……サンショウ子さん? 彼女が助けに来たんだ?)
 サンショウ子は傷ついたサンショウ六を抱えるとそのまま力強く泳ぐ--およそ一の時をかけて引き揚げる!

 未明。
 プハアアア--サンショウ六が息を吸い直すとそこには歪みから晴れてゆく青い空が見えた!
「イデデ……湯が見ない青い空を見るなんて初めてだ?」
「綺麗でしょ? 私も初めて知ったわ? 歪みない青い空がこんなに綺麗なんて?」
 どうやら山一君も無事みたいだね--落下した傷が何事もないような表情で小舟を動かすドストリーニとイタ平。
「分隊長と小隊長……アダアアアア?」
「無理しないでよ、サンショウ六? あなたは二名よりも傷は深刻なのよ?」
「そこまで喋られるのならすぐに元気になるさっち。
 それよりも頂上まで登ったお日様を眺めろよっち、二名ともっち!」
 四名はお日様を見つめる--歪み無き空のお陰でお日様の光は今まで以上に神々しい物となる!
(僕はもう二十歳に成ったのか? これからは少年と呼ばれなくなるのか? 青年山一サンショウ六……今一実感が湧かない?
 はあ、さっきまで威勢が良かったのは多分みんなのお陰だったりして? これから僕の青春は続くのか? お日様の光は僕を祝福してくれてるのかな? もうわからない?
 眠ろうかな? 久々に仲間達に会えたとはいえ、もう一度会いたい? ベアケット隊長、スメラビノ副長、きね由さん、マルノオビさん、メエメンさん、サイ頭さん、カモノさん、そして藤原小隊のみんなや他にも多くの仲間達……会っても良いよね? 会っても良いよね、ラディヴェヴァルデェンさん……?)
 お日様の光は今日の遠い過去でも照らし続ける……それはどんな銀河連合でさえ放つ事のない真っ直ぐな濁りのない黄金の輝きを出しながら




 ICイマジナリーセンチュリー百六十八年一月一日午後零時零分零秒。

 第五十二話 光不変の先へと 後篇 完

 第五十三話 再誕の火 真正神武最後の最高官 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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