FC2ブログ

一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(気)

「あ、足に絡みついて?」
「花は植物です。なので茎を使った攻撃なんてのを平気でやれます」
 冷静に説明してる場合じゃないでしょ--絡みついた茎を解こうと必死になるサンショウ六。
「歴史を変えてはヴィスターにも影響します。ひょっとしたらヴィスターさえ存在しなくなります。
 そ、れでも我は誰かを助ける為にヴィスターの思い出に手を出す!」
 ラディヴェは左手を天井に掲げる。すると左手の周囲から立体円を描くように不思議な文字列が広がる!
「あ、れは……ワワッチャ?
 もう少しで食べられそうだった?」
 文字列に触れた者はラディヴェとサンショウ六を除き、文字として解体される。
 不思議な光景を目撃したサンショウ六は最早突っ込む気力さえ無くす。
(きっとラディヴェさんは手が素早いんだよ? 文字が花を文字にするなんてどう考えても飛躍しすぎるもんな?)
「もう少しです。もう少しでヴィスターの思い出は消えます。それまで我に引っ付いて下さいまし、サンショウ六君」
 は、はい--サンショウ六は言われた通りラディヴェの側に引っ付く。
「計算に狂いはありません。数値に少しでも間違いがあれば大変な事になります。様々な公式を用いる事で魔法と同等かそれ以上の奇跡を起こせる『龍道』は我の武器です。これをもってしましても百億年の叫びは--」
 何かを言いかけようとした時、今度は噴火と津波が互いに混ざり合った轟音が二名の鼓膜を破裂させかねんくらいに響き渡る!
「「あがあががあああ--」」
 轟音は一の分経過しても響き渡り、二名の気を失う寸前まで苦しめてゆく!

 未明。
(……止んだ? あの音は一体? それにしてもまた……光景が変わって?)
 サンショウ六は気付く--海に浮かんでいる事に。
 彼を救出すべく『ハヤブス』と同じ大きさの船が近付く。そこから計七名から成る救出班が海から出て、彼を慎重に運んでゆく。
 山一サンショウ六は意識を失うまで天使族と思われる雄がどこにいるのかを探った。
(……あれは夢なんだよ? 大体四十八で二十代の容姿なんて有り得ないし、人族の姿で背中に翼を生やすなんて有り得ない? そうなんだ、夢なんだ?)

 そして、十二月百二十四日午前十一時十五分十二秒。
 場所は珊瑚島直轄船『星季』。大きさはほぼ『ハヤブス』と変わらないが、こちらは戦闘用に使うのか、側面に砲弾と呼ばれる鉄の玉を出す武器が装着される。実験用である為、使用すれば船が沈む恐れが大きい。なのでほぼ飾りと変わらない。
 ちなみに名前の由来は大陸藤原で亡くなった真正神武初代副最高官天同星季にちなんだもの。製作を依頼したのは二代目最高官天同美世。彼女の名をいつまでも遺す為に星季の妹美世が製作を依頼し、完成したのは美世が亡くなってから僅か一の月が経ってからの事。
 『星季』は現在、シャーク傭兵団に譲り渡される。こうしてサンショウ六の救出やそれ以外の使用を任される。
 そんな船に救出されたサンショウ六はお日様を見渡す。
(ここに所属するアリゲラルさんに聞いたけど、『フォウルン』には誰一名として生存者は居なかった? 僕らのやった事は意味を為さないのか? 僕を運んでくれたカモノさんの死は結局報いる事が出来なかった?
 それだけじゃない? 他にはもう一名この船に所属する--)
 ここに居たの、サンショウ六--甲板の階段から上ってきたのは齢二十二なったばかりのラテス山椒魚族の女性糸風サンショウ子。
「サンショウ子さん? 正直恐いんだよ?」
「まさか『ハヤブス』が銀河連合に食われたことを聞いて安心出来ずにいるの?」
「そう、それが安心出来ない? 僕は結局みんなの命を意味あるものに出来てない? どうすればいい、サンショウ子さん?」
「そうだね、難しく考えないことね? そうそう、サンショウ六はもうすぐ二十歳?」
 そ、そうだけど--何故そんなことを聞くのかというような表情になる。
「どのくらい先になるの?」
「明日になれば?」
「明日かあ、じゃあ盛大に祝わないとね?」
 祝う--困り顔になるサンショウ六。
「そうだよ? 『二十歳になったら祝う』って古式神武では古くからやってるわ?」
「真正神武に国籍を置いてるから知らなかった?」
「『成者式』なら出たわよね? あれとは異なり、『二十歳式』というものがあるんだ?」
「大人になる『成者式』なのに『二十歳式』は只単に二十歳になるだけじゃない?」
「そうかしら? 二十歳になったらもう少女から女性になるの? あなた達雄なら少年から青年に?」
 へえ、そう--興味が全くなさそうな表情をするサンショウ六。
「はあ、これだから雄というのは飾り気がないんだわ? もう少し飾りを好まないと異性の心がわからないわ?」
「御免、サンショウ子さん? 僕はその……そのの?」
「どうし……たのよよ?」
 二名はさっきまで快晴だった空が突然辺り一面を覆うように銀河連合が埋め尽くされている事に気付く!
「あわわわ、こ、これは絶対に--」
 報告しないといけないわ--サンショウ子は思わず階段の方に走ってゆく!
「どうし……ワワ!
 痛いじゃないか……じゃなくんてさっさと戦闘準備に入るんぞ!」
 齢三十五にして一の月と一日目になるキュプロ栗鼠族の中年ドストリーニ・メデリエーコフに集まるように六つの分隊員が次から次へと甲板に集結する。
「「了解、メデリエーコフ小隊長?」」
「言っておくんが、山一よ!」「何でしょうか、小隊長殿?」「お前は戦わなくんてもいいんだぞ」ドストリーニは救出された一の週も経たないサンショウ六を気遣う。
「お言葉ですが、それはいけません? 僕は戦います?
 死んでいった仲間の命が僕にあります? なのに戦わずして逃げるなんてどうかしてます?」
「ここに居てもまた生命の死を見てしまうんぞ、いいのか?」
「死なせはしません? それに僕はもういつだって死にに行く覚悟です?」
「『死にに行く』ん? それはつまり『誰かの命を守る為なら自分の命をなげうってでも銀河連合を出来るだけ多く倒す』……でいいんだな?」
 はい--サンショウ六の眼には最早一片の迷いはなかった!
「その眼だ! その眼をわしは待っていた! じゃあ許可するん!
 ただし、死ぬ事は許可しない! 若い命は次を創るん為に残さねば隊長の資格なしだ、わしとしては!
 なのでこれからも生き抜け、山一サンショウ六!」
 了解しました--船内全てに聞かせる勢いで返事をするサンショウ六!
「いいの、サンショウ六?」
「雄の心は少しでもわかって欲しい、サンショウ子さん?」
「雌は一方的なのよ、サンショウ六?」
「お喋りするんな、二名! さっさと自分の所属するん分隊に付け! ただし、所属分隊のない者はわしの所に来い!
 いいな?」
「「「「「「了解しました!」」」」」」
 メデリエーコフ小隊は全部で六十名。そして、メデリエーコフ小隊以外の小隊九つの内、二つが甲板に集まる。それらを合わせると合計百五十。サンショウ六は百五十名と共に空から降る銀河連合と対峙する!
(僕は……もう迷わない? そうだろ、ラディヴェさん?)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR