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一兆年の夜 第五十二話 光不変の先へと 後篇(零)

 サンショウ六はおよそ十秒ずつ五日間の記憶を思い出そうとしていた。
(僕はどうしてここに? そうだ……僕は中で--)

 十二月百十八日午後五時零分四十七秒。
 場所はフォウルン海洋種族用鯨族区域。事実上船の動力源となる鯨族専用の区域に入ったサンショウ六。
(銀河連合はどこかに潜んでいる? それだけはわかる? だから僕は……やめよう?
 今は少しでもいいから生存者を見つけないと?)
 血という光を目印にサンショウ六は奥へ泳いでゆく--その先に何があっても!
 そして、彼は船の動力部に入った!
(これは……え? こんなのってありなの?)
 彼が見たモノは僅かな希望でもなかった! ましてや悲観的な光景でもなかった! あったのはどちらでもなくここは……体内そのモノだった!
(あ、わわわ、あ、あわわ? ぼ、くは、は、はは、今まで銀河連合の体内に入っていたっけ? 居たのは、は、あ、ああ、船の中だよな、な、あ?
 な、の、ににんんんどどど、うう、し、いい、て--)
 どうして赤黒い生々しいモノが見えるんだよおオオオ--サンショウ六は叫ぶ内にここが海の中ではない事にも気付く!
 彼はいくら頭を回転させても今まで海にいた自分が突然、陸に……それでいて銀河連合の体内にいるのかを理解出来なかった! 彼は海に潜る際には息がどこまで続くかも覚悟していた--それだけに突然息継ぎの出来る空間に出た事には整理しても整理出来なかった!
(そ、そうだ? だ、だ、脱出しなくちゃ……あれ?)
 後ろを振り向くと既に通路はない--代わりに血管の浮き出る赤く蠢く壁が目に映る。
 彼は恐怖で顔が真っ青になりながらも注意深く振り戻る。それから三回深呼吸して足を踏み出す。
(切り替えはだだ、いじ、な、なんだ? ででで、なないと、死んでいった仲間達……ベアケット隊長やスメラビノ副長にマルノオビさんやメエメンさん、きね由さんにカモノさんとサイ頭さんに叱られれてしまま、う?
 僕は山一サンショウ六……父サンショウ兵衛の第二子なんだ?)
 彼は体内に居ることもあって父の名前を思い出しながら勇気を奮い立たせる!
 踏みしめる音といい、感触といい、彼は改めて快くない場所に立っている事を実感。彼がここへ来たのは生存者を確認する為。今はこの中を脱出するかを探る!
(一体いつ銀河連合が僕に襲いかかる? 上も下も横も全て注意してる? 薄暗いけど血管らしきモノで僕の身体を引き裂く? それとも実は壁で僕を押し潰す……そんな碌でもないことを考えるなんて神様に申し訳ない?
 今はそうじゃない? 銀河連合に気を付けるのはいいけど、ここを脱出する以外に道は無い? 確かに生存者の方を考えもしたけど、ここにいるかさえわからない?
 ここは……やめよう?)

 未明。
 この中に入ってだいぶ時間が経つ。サンショウ六の足は蹌踉めき、目は虚ろになる。戦闘による疲れと海洋種族用の船内を泳ぎ続けた疲れが一気に出て、彼を眠りに誘う。
(まだ、だ? どこま、で、つ、づく? どうしよ、う? 寝ようか、な……?)
 だらしなくうつ伏せになりながらサンショウ六は目を閉じる。

 未明。
「……きるのです」
 サンショウ六は聞き覚えのない声を耳にする。
「……きるのです、山椒魚の者」
(聞き覚えのない声、訛り? もしやここが『竜宮』--)
「起きるのです、山椒魚の者」
「んあ? 誰……かな?」
 彼の目に映ったのは人族らしき青年……だったのか?
「はい? えっと、翼?」
「起きましたですか、山椒魚の者。喋ると言う事はあなたは銀河連合ではないのですね」
 誰--サンショウ六が見た背中に白い翼を生やした茶髪の男。
 見た感じでは二十代半ばで成人体型は一とコンマ二くらい。訛りはですます調。顔付きは今で言うなら美形には程遠い。
「良かったです! ここに君のような生命が居て! 君の名前は何て言うんですか、山椒魚の者」
「本当は僕の方から質問したんだけど……いっか?
 僕は山一サンショウ六なんだ? こうゆう訛りは山椒魚族独特なんだ? 齢は十九にして十一の月と……日にちがどうしても判断が付かない? ここに来る前は確か二十四日目だったんだが?
 まあいいや、出身はラエルティオ? ラエルティオ山椒魚族の山一サンショウ兵衛の第二子として生まれたんだ? 宜しくね、翼を生やした者?」
「ラエルティオ? 十一の月? 齢は十九? 随分変わった自己紹介ですね」
「あれ、そうなの? 僕達生命の間では普通なんだけど? あなたはなんて種族なんだ?」
「我の事ですか? 我の自己紹介を初めていいかね?」
 いいとも--サンショウ六は変わった男の自己紹介を促す。
「我の名前はホーウェイジェウェン・ラディヴェヴァルデェンと申します。種族は天使族です。君の紹介で言えば高村天使族になるのです。年齢は四十八です。月と日はさすがにわからないです。父は国会議員を務めるホーウェイジェウェン・ラディヴェレルディンです。我は父の三男として生まれました。宜しく」
 彼等は互いの手足を出し、固い握手(握足)を交わす。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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