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一兆年の夜 第六話 特別配達員 シュラッテー(二)

 午前十一時二分八秒。
 場所はエウク町北西地区二番地。
 シュラッテー・ベンデルウムは特別官秘書臨兵キュー香と共に特別配達員探しを始めた。
「シャウルルトクベツカンハ、アトヨンメイサガセナンテムチャヲヨウキュウシマスネ!」
 特別官の話によると、たった一名では特別配達は出来ない。その為、特別配達に必要な飛行能力を持った配達員の探し出しが必要になる。
 だが、配達本部にいる配達員で特別配達員を立候補する者はいない。理由は先に説明した特別配達員の制度を考えれば納得のいく話だ。
「ダカラトイッテドウシテ、マチジュウヲサガシマワラアナイトイケナイノ?」
 キュー香は満足しない焦りを吐いた。それをシュラッテーはいつも通りの調子で聞き流した。
「ダイジョウブ? アナタミタイナ、ツバメゾクノモノヲサガスッテムズカシイコトヨ!」
 シュラッテーは飛べたら燕族以外でも問題ないと反論した!
「エッ? ナンデ?」
 シュラッテーがどうしてそんな反論をしたのか?
 それは特別官の話に燕族だけとは一言も出てなかったからとキュー香に言った。
「ソレッテヨクナイリクツジャナイ? デモオナジツバメゾクデナイト、ハチョウガアワナイジャナイ?」
 それに対してシュラッテーは辛そうな口調で何とかなると言った。
「ソウコウスルウチニハヤクサガサナイトダメジャナイ?
 エッ? イマハテガミハイタツガサキダッテ!
 ドウシテッ、テ、マッテ!」
 シュラッテーは現在各番地それぞれの手紙を送る仕事をしていた。それは特別便と呼ばれる方面配達である。

 午前十一時四十二分五秒。
 二番地にある五番目に小さな民家。
 そこにはゼノン雁族の二名の親子が暮らしていた。
「コレ? 母さん宛の手紙カナ?」
 受け取ったのは齢十六にして二の月と六日になる少年だった。
「ドウヤラコノコトノオカアサンハジュウビョウミタイネ!」
「ヤマイで良くなかっタナ!」
 少年は母親の病を激しく好まなかった。
「ザギジ! 配達員さんに怒らなイノ!」
「ゴ、ごめん母サン! イマスグ手紙を持っていクネ!」
 シュラッテーは少年の姿を不思議そうに見た。
 シュラッテーにはアデス村に三の年より下の妻と二名の子供がいた。
「マサカシュラッテーッテ、コノオヤコヲミテアデスムラニイルサイシノコトキニナッタノ?」
 シュラッテーはすかさず肯定しなかった。それを聞いた少年はシュラッテーにこう訪ねた。
「オジイサン、名前なんて言ウノ?」
 シュラッテーは自己紹介した。それに対して少年も同じようなことをした。
「オレノ名前は遠山ザギ次ダヨ。ヨカッタ! 同じゼノンぞクデ」
 ザギ次はシュラッテーに興味を抱いた。同じゼノン族であることに。
「デモゼノンゾクハゾンメイダケド、カンジンノゼノンムラハニジュウサンネンマエニクワレタンダヨネ!」
「オマエに聞いてナイ! ゼノン村は今だって生きテル! オレ達ゼノン族のなカデ!」
 シュラッテーはキュー香の口を塞いだ! キュー香も塞ぐ中で口の慎み無さを後悔した。
 そして何よりザギ次がゼノン村が食われた当時のことを知らないのもよく分かっていた。
 それでもシュラッテーはザギ次の気持ちを理解した。ザギ次は立派なぜノン族であると。
「オジイサンって優しいんダネ。オトウサンと同じみタイ。
 デモお父さんの代わりは務まるカナ? モウ俺のお父さんは五年前にお母さんをかばッテ……ウウ、お父サン!」
 シュラッテーはザギ次の悲しみを受け入れない自分を悔しがった。自分がもっと特別なら受け入れることが出来たことを。横にいたキュー香はザギ次の悲しみに同調した。
「ウウウウ、クヤシイデス! カナシイデス! モットコノオヤコノキモチヲシレタラ~!」
「ザギジ! イツマデ配達員さんを止めさせルノ! イイ加減にシテ!」
 シュラッテーはザギ次の母を宥めた。
「ゴメン、お爺さん! オレのせいで仕事を止めさセテ」
 シュラッテーは自分のせいにするなと言い聞かせた。
「ア、アノ。キョウはザギ次の話し相手をしてありがとうございマス。ナ、ナンテお礼をしたいイカ。ア、ゴ免なサイ。ヨカッタラまた今度ここへ来て下サイ。キットザギ次も喜ぶと思いますノデ」
 シュラッテーは時間があったらまた来るとザギ次の母親に返すと、二名の前で一礼してキュー香と共に仕事へ戻った!
 この時シュラッテーは気付かなかった。遠山ザギ次が彼の部下になるとは。

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Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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