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一兆年の夜 第五十話 エーテルは否定される(五)

 午前十時三十二分四十八秒。
 巨大鮟鱇型から逃げ続けて十分経過--三名の内二名の疲労は限界に達しようとしていた。
「どうしたのよ、アン駈歩先輩にチヅヨ先輩。フラフラになってたら銀河連合に食われますよ」
「それがし達はずっとこの海域で泳いでいたんだよ」
「お前は疲れるほど泳いじゃいないからそう伝えられるんだよ」
 ふうん--こう呟くもタッツ代は貴重種を目撃して心が高鳴る。
(タッツ代はいいけど、わてらはもう限界だ! どこか隠れる場所があったら体力を回復できるんだが、その場所を見つけるにはこの深部は暗すぎる! つまり逃げ続けなくてはならないとは。こうなれば空想話のように都合良いことが起きたらなあ……待てよ!)
 アン駈歩は一瞬、全ての鰭を止める。「何してるんだよ、アン駈歩!」とチヅヨの叫びも空しく彼は鮟鱇型に呑み込まれる!

 午前十一時三分六秒。
 銀河連合巨大鮟鱇型の体内。
(わてはどうして銀河連合の体内に入ってるのか? それはうっかりしすぎたからだよ。団長やラブカイオーン、それにオニ子先輩の所に行けば助かるとついつい鰭を止めてしまって--)
 だからそれは俺の名前じゃねえ--目の前に居るのはラブカイオーンと間違われた羅鱶族の青年。
「ところでどうしてラブリーゼンが? 大王烏賊型を追っていたんじゃないのか?」
「だからそれは……まあともかくよくわからん。俺だけでなくシャーケンもオニ子班長も呑み込まれたんだが、どこに居るやら?」
「それがしも一応呑み込まれた。間抜けなのはどうやらそれがしも含まれていたとは」
「俺達も変わらん……ついでに大王烏賊型なら何とか倒せたぞ! だからもう心配はないぞ、その部分だけ。
 問題はどうやって銀河連合の体内から脱出できるか、だろ?」
「ここはおそらく胃の中のはず……胃液が薄くて助かったよ。さすがはアン駈歩ら鮟鱇族を模した銀河連合の体内だぜ!」
 ちっとも誉めにならねえ--アン駈歩は真っ赤な表情になる。
「喧嘩は止せ! 現在の俺達がやり遂げねばならない目的はいかにして穢れそのものである銀河連合の体内から脱出するか、だろ?」
「だろうけど、それがし達はあいつらの体内に入る為に体を小さくされてるんだよ。途方に暮れてしまうと思うけど」
「ああ、こんなことなら藤原マス太の子孫探しの仕事を受けるんじゃなかったって! 出なきゃあ万事は運んだのに!」
「用法正しいの、アン駈歩?」
「正しいと思うぞ、アン貴茂……ってどうしてお前がここに居る?」
「この雌は……確か捜索班の藤原アン貴茂だな」
「お久しぶりです、ラブレイエン先輩!」
「その名前じゃないし、先輩と呼ばれる年じゃない! 俺の名前は--」
「本当のことを伝えると五名救助した矢先に鮟鱇型に呑み込まれたの!
 たぶん、五名とも危険はないわ。近くにあった洞窟に避難させといたから」
「なるほど、それならしょうがないな。あれは大きすぎてさすがに逃げる以外選択なかったのにこうして俺達三名は呑まれてしまって!」
 居たのかよ、オニ子班長--唐突に現れたオニ子に驚いて鰭をじたばたさせる誰かはわからない羅鱶族の青年。
「俺だけじゃない。団長も居るぞ、ほら!」
「覚悟が足りないから銀河連合の体内に放り込まれたんだ」
「だらしがないぞ、シャーケン!」
「お前に言われたくないな、ラブッツェン!」
 お前まで俺の名前を間違えるか--青年は落ち込む。
「別に名前とかいいだろ! とにかくここから出ようぜ、何なら口から出る方がいいかも!」
「アン駈歩……口へと通じる穴が閉じてるんだ」
 は--チヅヨが告げた事実に納得いかないアン駈歩は問題の個所まで泳ぐ。
(あれ? わては自分の体内には詳しい。なのにどうして穴どころか始めからここには出入り口がないような……銀河連合に新事実判明か。
 あいつらとわてらは体内の構造が大きく異なるとは! そうだよな、小さくさせる連中が体内まで一緒とは限らんもんなあ。畜生!)
 まあいいじゃない、楽しいし--気がつくとタッツ代が合流していた。
「お前もその原因だろうが、タッツ代!」
「まあまあ、そのくらいにしてさっさと探検始めちゃいましょうよ!」
「少しは恐がれよ、タッツ代!」
「そんな怖がらないの、ラブリュイランさん!」
「俺の名前は--」「タッツ代の伝える通りだ! 探検も脱出する為に必要なこと。往くぞ皆の者!」シャーケンは強引に話を打ち切った。
(これが空想話ならどこで区切りを付ける? わてが創作者ならこの場面だろう。けれどもここで区切って良いのか? 今までの線はどうやって回収する?
 『藤原マス太の子孫』やら『光観測』やら『残り五名の捜索』やら。『銀河連合の打倒』や『貴重種の調査』はほぼ回収したも同然だが、果たして……そう思ったら他にもあった!
 『竜宮』の件は回収すべきかな? 頭を悩ますなあ)

 未明。
 銀河連合を増殖させる区域に到着した七名。
「今更だけど、見てしまうわ、風景を」
「後十四文字足りないけど」
「アン貴茂もタッツ代も遊んでないでさっさと鰭を動かせ!」
「どうしてか、何で鰭動かす、より速く、それは花びら、天井見よ」
「現実逃避中だね、アン貴茂さんは」
「いや……アン貴茂の短歌によればそれがし達に向けて降ってきました!」
 あいつらは子作りだけ励めばいいものを--羅鱶族の青年は数百体もの卵型銀河連合の襲撃に迎撃の態勢をとる!
「戦えるのは俺とラブカッターに団長のみ!」
「だから俺の名前は--」「じゃあわてら四名は先に行きます!」アン駈歩ら四名は増殖空間の先を急いで泳いでゆく!
「それでお前は何て名前なんだ?」
「俺の本名はニニミサキノラブカスケだ。数多の戦場を駆け抜けた雄の名前くらい覚えとけよ!」
「まさか応神海出身者だったとは。つーか気かしたんじゃないだろうな、ラブベルド!」
「さっき本名伝えたのにもう忘れたのか!」
「もういい! 二名ともさっさと鰭を動かすぞ!」
「「了解!」」

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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