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一兆年の夜 第五十話 エーテルは否定される(三)

「お前はアン貴茂! ここで何の仕事させられてんだよ!」
「普通は挨拶しないなんてどうゆう神経? お早う御座います……これくらい言いなさい!」
「はいはい……お早う御座います。今日は絶好の深海日和で御座います。
 これでいいか?」
「まあ、ないこともないわね」
「それでどんな仕事をしてるんだ? こんな深い所で何もしないはずないだろ?」
「そうねえ、言っていいかわからないけど伝える?」
 構わんだろうが--アン駈歩は催促する。
 彼女の目的は深海遭難者捜索任務に当たる。深海では浅海に比べて光は届かず、エラ会話どころか泡会話でさえ役に立たない。そこでシャーク傭兵団は深海系の海洋種族のみで構成される捜索隊を設立。
「まあ長い説明はともかくとしてあたしはこうして残り十名を救助しに泳がずにいられないわ」
「それで何名浅海に帰した?」
「二名だけよ。今日は石版に書いてある十二名を死なせず救助するのよ、鰭伝う?」
「断る。わては藤原マス太の子孫捜しで暇じゃないから」
 藤原マス太の子孫って--アン貴茂は藤原マス太に僅かながら興味を示す。
「興味あるみたいだけどさすがにこれは鰭伝うことじゃないだろ! と、とにかく救助せずは良くないぞ!」
「た、確かに救助に鰭抜いたらいけないわね。じゃ、じゃあ鰭伝うのを待ってるわアン駈歩!」
 二つの髭を揺らめきながら真っ直ぐ泳いでゆくアン貴茂--それを後ろから見守るアン駈歩。
(遭難者なんぞすぐに見つかる訳ないだろ。いっそのこと石版を見りゃあ良かったかな? まあ関係ないことはやめて……とにかく銀河連合と鉢合わせないように元の所まで戻らないと)
 アン駈歩は安心出来ない面持ちの中、来た道を戻ってゆく。

 午前十時十八分三十六秒。
 アン駈歩が戻る頃には二名の姿はなかった。代わりにまん丸な鯛型銀河連合の死体が漂う。彼は用心深い正確なのか、成人体型五十まで離れながら横切る。
(死体は気を動転させるから困る。どうして人生に必ず死体を見なければならないのかさっぱりわかんないっての! 葬式なんかそうだ! 今は亡き両親の葬式は辛い。だって動かないんだぞ。これほど気を動転させるものが他にあるのか聞きたい……ってそんな考えを浮かべていいのかなあ?
 何かさっきから死体がワテから離れないような気が--)
「そこの鮟鱇! 見えるんなら急いで鰭を動かすんだ!」
 はあ--目の前にいる齢二十七にして七の月と七日目になる武内鮫族の青年に勢いよく泡を突きつけられて答えに詰まるアン駈歩!
「もう一度伝える! 急いで鰭を動かせ!」
「『鰭を動かせ』って伝えてるわけない?」
「ややこしい訛りだな。そう伝えてんだよ! 早くしないと死ぬぞ!」
「死ぬって……うわれべげばべっぜ」死んだはずのまん丸な鯛型が突然襲いかかってきた事に全身をじたばたさせるアン駈歩!
 全く学者肌の生命は--鮫族の青年は力強い泳ぎで素早くアン駈歩と鯛型を切り離すと、鯛型の腹目掛けて強烈な噛み突きを浴びせる!
(あ、あの噛み突きは……武内鮫族だ! とするならあの鮫はまさか--)
 でりゃあああ--青年は身体を引き千切るように右捻り回転で噛み砕く!
 鯛型は今度こそ息絶え、右半身と左半身が別れるようにそれぞれ浅海と深海を漂ってゆく……。
「あ、あなたはシャーケン! シャーケンじゃないだろうな!」
「呼び捨てか、年下だから! まあいいけど、俺の名前はシャーケンで間違いない!
 こう見えて--」
「わかってる! シャーク傭兵団団長。所属する者が知らないはずがありません!」
「まあそうだろうな。それにしても運が良いな、そこの鮟鱇! 名前は何て言うんだい?」
「わて……いえ自分は遊撃調査員の藤原アン駈歩と申さない訳には参りません!」
「アン駈歩……知ってるぞ! 確か愚痴が多いせいで『藤原マス太探し』をさせられているあの--」
「痛い所突かないで下さい、団長!」
「そりゃあ済まなかったな、ハッハッハ!」
 シャーケンが高笑いしている中、二名の右横から「オーイ、オーイ」と貝式エラ会話で呼びかける物部チヅヨがやってくる。
「また鉢合わせか、チヅヨ!」
「『光観測』していると普通はこんな所に来ないはずなんだけど……ってあなたはシャーケン団長じゃありませんか!」
「何をしているか聞きたいか? 実は狙ってるんだよ、『大王烏賊型』とやらを」
(『大王烏賊型』……確か深海に潜む生命の中には超巨大な種族も居るんだった。だから『大王烏賊型』は多分--)
「二名とも急いで逃げろ! どうやら俺が打倒しようとしている銀河連合が背後から来たぞ!」
 背後って--アン駈歩は振り返る。そこにはシャーキンが目当ての大王烏賊型が三名を絡めようと全ての腕を駆使する!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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