FC2ブログ

一兆年の夜 第六話 特別配達員 シュラッテー

 ICイマジナリーセンチュリー二十年三月五日午前七時零分二十八秒。

 場所はエウク町配達本部左館上空特別官室前。
 そこに齢四十七になったばかりの老年が扉の前で立っていた。老年は扉を
二回ノックした。
「はああ入れ!」
 扉の奥の方から声が聞こえた。その声を聞いた老年は扉のノブを回して中へ
入った。扉をゆっくり閉めた老年は椅子に座る中年に向かって名前と種族名、それに
所属を一通り言った。
「良おく来たなあああ、シュラッテー・ベンデルウムうん!」
 老年の名前はシュラッテー・ベンデルウム。ゼノン燕族にしてかつては
ササーキー燕隊に所属していた配達員だ。現在は配達指導員を務める。
「シカシイツヤメルトモシレナイオスヲマダハイタツホンブニノコスノハドウシテ?」
「キューう香あ! シュラッテー殿に礼をおおう欠いた言動は慎むううのだああ!」
「モ、モウシワケアリマセヌ、トクベツカンドノ!」
 シュラッテーは二名の会話を聞いて、少し笑った。けど、すぐに笑いを抑えた。
 ちなみに二名を紹介する。
 椅子に座る特別官と呼ばれる雄はエウク梟族のヒシャウ・シャウルル。
齢三十二にして二の月と十日目になる中年。かつてストルムが存命中は
上空配達総長だったシャウル・シャウルルの第三子にあたる。
 もう一名はアデス九官族の臨兵りんぴょうキュー香。齢二十一にして一一の月と三十日目
になり、一応雄である。特別官所属の秘書であるが、少し口を慎まない性格が
玉に瑕。
「すううまないなああ、シュラッテー殿おん。身を崩す真似をして。ではああ、
本題に入るぞうい。シュラッテー殿、あああなた様はいい加減んん空を飛んでみたら
ああどうかね? いいいつまでもおおここで雛鳥育成員(配達指導員)んんを
務めええても生きてるうう心地がないぞおおん。ま、まあ空を飛ぶのが恐いという
気持ちは分からなくは……」
 シュラッテーは迷っていた。勿論その理由は空が恐いわけではない。
 年をとるにつれて自分の身体に来る衰えに対する迷い。
 恐怖を抗うことが出来なくなる精神状態。
 そして何よりかつての仲間達がもういないという孤独感から来る迷い。
 彼にはかつての仲間達みたいに名を残すほどのこともしなかった。記憶に
残るようなこともしなかった。いつだって存在すら忘れる配達員だった。
 だが、今までだったらそれで良かった。けれども齢四七になるとそれが焦りとなって
夜も眠れない日が続く。そして現在に至る。
「ムリムリ、シュラッテーッテロウネンハソンナイシナンテナイッテ!
 ズットマドギワゾクデオイヤラレルウンメイダッテ!」
「だあああからあああ口を慎まんかいいいいん、キュー香ああ!」
「ゴ、ゴメンナサアアアイ!」
 二名の予想に反してシュラッテーはもう一度空を飛ぶことを受け入れた!
「ひ、引きいい受けてええくれるというのかあああ!
 でえ、でもおお予想外だああよ、あなたのようううな方ならああ断るるうと
思ったのにいい」
「ナニ? イツマデモナガレニノルノガイヤ? ド、ド、ドウシテ?」
 シュラッテーは自分の心境を語った。
「そうううか、ここにいい来た時いいにはもううう決意していいいたのかああ!
 いいだろおおうううん!
 こおおれよりシュラッテー・ベンデルウムを特別配達員んんんに任命すううる!」
「トコロデトクベツハイタツインッテナンナノ?」
「おおう前はシュラッテー殿のおお声かああ!」
 シュラッテーは特別配達員とは何なのかを聞いた。ヒシャウの話によると、
通常の配達が民間同士での手紙のやりとりが村から村に渡る時、
どうしても山から山へ、川から川へ渡ると移動効率の良くなさが発生していた。
そこで旧エウク村野村長であるエウク鳩族にして長の二番目の兄にあたる
柊ハル朗が自身の家で配達本部を開業したことが始まりだ。
ICイマジナリーセンチュリー三年五月百八日の出来事である
 配達本部開業以降、旧エウク村のみならず、全ユークリッド中に広がった。
ユークリッドの各村で配達本部が開業され、生命と生命の繋がりは一層強まった。
「ソノアトハユークリッドノミナラズ、アリストテレス、ソクラテス……
トハイタツホンブハゼンコクニヒロマッタワ!」
「まあああ八の年より前ええには配達本部ううの貢献を機いいに
前市長柊ポッ多様が町宣言んんをしたわけだよううん。生命のためええに
やることおおは良いものおおだよおおん」
 シュラッテーは納得の頷きをした。
「何? ああ、すっっかりいい忘れたよおお。特別配達員のおお説明を始めるううよ」
 特別配達員とは一般では対処できない配達をする役員のこと。
 例えば、長の一族関係の手紙や贈り物を一般の配達に回せば
一般配達員の万が一のことに宜しくない。そうゆう仕事は一般の配達員は
心の葛藤をしかねない。そこで一般配達員には出来ない仕事を穢れになれた
配達員で送る特別配達員制度が誕生した。
 その職務に配属できる者は長と関係ある者、余命幾ばくしかない者、
覚悟の据わる者など。
「ダカラコソアンタミタイナジジイハエラバレタノヨ! モウジュミョウガ
ツキカケテルッテイウンダシ! アッ、ゴメンナサイ!
 コンナコトイッタラカミサマニモウシワケナイ!」
 シュラッテーは頭を振ることでキュー香の機嫌をとった。キュー香も「許してくれた」
と機嫌を良くした。
「それでどんんんな任務を受けるかああ良うううく聞くのだああ!」
 それ以降、ヒシャウは真剣な眼差しでシュラッテーに任務内容を説明した。

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR