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一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火(八)

 午後六時十九分五十八秒。
 七名だけになった小隊は最早分隊と変わらない。彼等の部隊は現在分隊長にアララギノアラツネ。総長に息子のアラカツが就く。副長はイルカナとタダナガラノイカレガ。彼等が残りの傭兵を支える。
(といっても三名だけになった部下自分達よりも少ない。本来自分かイルカナ平隊員降ろされるべきだったがそういかなかった。自分どこまでも只の七光りなのか? 情けない。自分自信が持てそうにないな)
「また自分を後ろ向きに評価するのか、アラカツ?」
「だからどうなんだ! 自分にはいつだって彼等に助けられてばかりじゃないか! こん--」
「前を向くんだ、若! 我は何度も伝えているだろう! 我々は前に進む以外道はないと! でなきゃ明石分隊、東郷分隊、山本分隊、シャチルソン分隊、それにヒト菜、クラ彦、雲丹、ヤッドンにどう顔を上げきったままでいるか!」
「『顔を上げきったまま』って伝えたの?」
「案外古風な方なんだ、分隊長は」
「今じゃあもう副長だよ。それでもお前らが部下であることに変わりはないぞ!」
 副長に昇格とは元分隊長も偉くなったよなあ--誰か知らない者は羨ましい気持ちを示す。
「あんまり伝言してばかりじゃあ良くない! いくら深部五という暗闇に向かっているとはいえ、油を断ち切れん。いつでも現分隊長と総長、それに我の指示とイルカナ殿の信号が来るまで体勢を整えるんだ!」
「ええ、そうね」
「そうか、僕達は『燃える氷』に向かって泳いでいるのか」
 現アララギノ分隊は深部五と呼ばれる暗闇の世界に入ってゆく。どうしてそうなったか? それは現分隊長アラツネの精神状態が度重なる部下の死で危険状態に達しようとしてた。
 アラカツによればアラツネは昔から死にそうな言葉を自ら伝えるのに終わってみれば何故か自分だけ生き残るという矛と盾にぶつかる。一桁代ならそれで済んだが、彼の場合は傭兵団に入ってずっと仲間の死を見続けた。一命前の青年に成っても、中年に成っても、更には現在の老年に成っても。死者の中にはアラカツの兄が八名含まれており、それが年を追う毎に彼を苦しませた。そして、抱え込んだモノはやがて深部五で破裂しようとしていた……。

 午後七時零分四十秒。
 場所は深部五……のはずだったが--
「理解出来るのか、イカレガよ」
「申し訳ありません、分隊長! 我ですらここは理解が困難だ!」
「真正細菌族の命の輝き……ではないのか?」
「たい亜……これ炭化水素よ!」
「本当ですか、先輩! となるとこれがかの有名な『燃える氷』?」
「わかることを伝えていいか、父上?」
 エラ会話を許可する--アラツネは光る世界で混乱していた!
「ここは間違いなく『秘境』に近い! いや、正確にはここは神々が眠る場所だ!」
 アラカツは六名全員にエラ会話で表現する--燃える氷で辺りを照らす深部五の中で!
 そこは表現しようにも生命がまだ理解とはほぼ遠い位置にあった。泳ぐ城壁頭の巨大な人族像に三つの何かがくっついて一つの人型に成った人族像、背中に二つの棒を突き刺した鞄を埋め込んだ人族像。他には両肩が頭よりも大きな巨大な人族像、目がなく剥き出した人族像、三点望遠鏡を回す首なしの小柄な人族像、歯を剥き出して両肩も長く、顎も長い巨大な人族像などそれらが分隊の周りで漂う。理解だと出来るはずもない。
 呆気に囚われている間に空気を一変させる存在が分隊の十倍以上で迫る!
「……は! イルカナか!
 どう……本当だ! こんな時に現われたか、銀河連合ウウ!」
 アラツネ、イルカナ、そしてイカレガを除く四名は度重なる死で怒りが頂点に達しつつあった!
「今すぐに先輩達の仇を--」
「早まるのではない、四名! 気合いで何とか出来る世の中じゃないんだ! ここは奥へ逃げるぞ!」
「でも私達の心はもう--」
「自分だって同じ思いだ! それでも命令は絶対だ! 自分が我慢しなくて誰が我慢するか!」
 七光りが何を伝えてやがるか--琴線に触れる言葉を見せたが、イルカナは誰か知らん者の身体を覆う事で回避!
「ここで争うのは銀河連合を有利にさせる! それでも争うなら我に考えがあるぞ!」
 イカレガは一名だけ銀河連合に特攻してゆく!
「ちょ、副長! 何してるんですか、戻って下さい!」
「カブ弥か? もう我は疲れた……これから先は一の分以上持ち堪えてやるからさっさと行け!」
「どうして自ら死ぬような--」
「死ぬ? 死にはしない……想念の海で自我を保てれば我は死なん!」
「戻れ、イカレガ! またわしを長生きさせるのか!」
「御免、分隊長。最後に命令無視して……後は若が支えるんだ!」
「七光りに何が出来るって--」
「出来る! そうでなくちゃ我の上司は務まらん!」
「イカレガ……わかったよ! 最後くらいは背ビレで送る!」
 それでいい、若--アラカツがようやく一命前の雄に成るのを見たイカレガは銀河連合の大部隊へと頭を向ける!
「我は最後まで前向きに泳いでやるぞ!」
 分隊とイカレガは互いの背を感じながら一方は生き残る為に! もう一方は……大部隊の僅かを噛み千切ってゆく--全身が跡形もなく消えるその時まで精神を保ちながら!
 イカレガアアアアア--ここにアラツネの精神は限界点を超えた!
(自分……自分支える! もう自ら前に泳いで生き残る! 例え無理だとわかりながらも最後まで命を輝かせて……輝かせて!)
 六名はもう一つの秘境へと入ってゆく……!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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