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一兆年の夜 第四十九話 燃える氷の怒り火(五)

 若布型は二手に別れた。それを見たヤッドンは「左を狙うからナマンダかカブ弥を同行させていいか?」とアラツネに聞く。アラツネから返ってきたのは「同行以前に左は壁に近い! 右を狙え!」であった。
「どうしてなのかしら、小隊長! 左の方が隙だらけなのに」
「全体を見渡して行動しろ! 若布型は紙のように引っ付く。特に壁際なんぞは……伝える暇を与えないか!」
 二体の若布型は挟み撃ちをするようにそれぞれ左右の回転をしながら体当たりを敢行! アラツネは--全力で通り過ぎるぞ--と泡で指示した! 四名は指示通り挟み撃ちを回避し、体勢を整える!
「まだ追ってくる! 今度こそ左を--」
「待て、ヤッドン! 全体を見渡さないと--」
 そんな暇があるか--ヤッドンは命令無視しながら一見すると蹌踉めく左側の若布型に泳いでゆく!
 その時、ヒト菜は左側には位置する若布型に銀色の後光を見た。「あれは何?」ヒト菜は命令無視して突進するヤッドンの後を左回転しながら泳ぐ! ヤッドンは成人体型二十まで近付いてやっと--
「あれ……は裸亀貝! 寒い海域にしか居ないはずの種類がどう--」
 危ない、ヤッドン--裸亀貝型に思わず硬直したヤッドンに襲いかかる若布型の攻撃から全身を乗り出したヒト菜!
 遅れて三名はヤッドンの後を追うが、時既に遅かった……!
「これが運命かああああ!」
 アラツネは思わず咽を使って痛み悲しい叫びを上げる--海という音さえ伝わらない世界で一名の部下が食われてゆく姿を目にしながら!

 午後二時三十分十七秒。
 アラカツら五名はアラツネ達が隠れている洞窟に到着しようとしていた。彼等はそこにアラツネら四名が潜伏している事も一名の傭兵が食われた事も知らずに。
「ところでイルカナ? 酒で落ちることは伝えてはいないぞ。と、にかく『いつでも対応出来るように』と伝えた?」
 イルカナは上唇を隠す--『はい』という言葉だ。
「ありがとう、いつも自分を支えてくれて! イルカナが居なかったら自分は何度死んでいたかわからない」
「後ろ向きな話はいいですよ、七光り。あなたは前向きに進めばいいのよ!」
「勝手に割り込んでいいのか、雲丹」
「イルカナ副長は無口だし、いいでしょ?」
「あんまり信号を送るなよ、皆の者! お前らの隊長は我だ!
 若の命令を的確に示すのは我の仕事だからお前らは我が指示を出すまで黙っているんだ!」
「別にいいよ、イカレガ。この状況出し今は……済まない、イルカナ!
 もうすぐ自分達は洞窟に入る! 合図は深部三でやった時と同じだ、いいな?」
「「「オオウ!」」」
 よし、突入--アラカツを先頭に洞窟へ入ってゆく。
 そこで見たのは大きな掠り傷を受ける父アラツネと悲しみに暮れるヤッドンにヤッドンを見つめるナマンダとカブ弥だった。
「うお、アラカツよ。無事じゃ……ないみたいだのう」
「申しわけありません、父上。クラ彦を死なせました!」
「俺が列を離れた為にあいつは--」
「悔いるな、誰だか知らんが! 僕なんか命令無視したせいでヒト菜を死なせて--」
「二名の死にいつまでも悲しむ暇はない! 我等は二名と今まで死んだ四分隊の為にも生き恥を晒す以外にない! わかるよな、我の部下共よ!」
「全く分隊長は観察が達しすぎるわ」
「そうではないぞ、ナマンダ。誰よりも責任が重いからこそ無理をしているのだ」
「それを世間では『達観』と呼ぶわ。そうでしょ、カブ弥?」
「雲丹先輩に聞かれても困りますが」
「全く緊張感が欠けるよな、タダナガラノ分隊は」
「そこがいいじゃないかのう、アラカツよ。けれども彼等をよく見ると実は--」
「わかってますよ、父上。だけど、それ以上エラ会話で内緒する意味はないと思う。
 自分達は一刻も早く支部に戻るしか道は--」
 果たしてあるかのう--アラツネは含みある言葉を泡で伝える。
「どうしました、分隊長殿! 我等にわかるような言葉を出すなんて!」
「何でもない。とにかくここから先はわし自らのエラでこの海域に関する重大な話をしようじゃないか!」
「「「「「「は?」」」」」」無口な者を除く七名は唐突なアラツネの切り口に口(隙間など)を開きっぱなしになった!
(全く父上考えは読めない! どうして唐突に!
 そんなことよりも父上上層部から『ある情報』知ってるみたいだ! ここで話して大丈夫なのか? それに話す時間はあるのか! 途中で銀河連合が来たりしたらどうしよう!
 ええい、そうなればイルカナ頼む以外に臨戦態勢を整える方法はないな!)

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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