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一兆年の夜 第四十八話 大陸移動の予兆(四)

 青く光る炭化水素はバラバラに散らばる。散らばりながらも赤い光を出しながら上昇。ほぼ九割近くが深部四に到達する前に海水に溶け込み、原形を留める事はない。『燃える氷』は真正細菌族による労働の結晶。生命の循環によってもたらされた上質な炭化水素は現在も海の底に眠り続ける。
 明石サン幕は現時点で正しい情報を基にそう思考しながらも、『燃える氷』の美しさに者目惚れる。
(……っちゅうか! 俺は頭を冷やすべきっちゃうか? そもそもどうして深部五の環境がこんなにも暖かいっちぇ? 暖かいっちゅう事は、えらを通して送られる空気は薄い証拠っちゃうか?
 だとしたらっちゃあ、上がるしかないっちゃああ!)
 サン幕は急いで深部四に上ろうとしたが、境目に触れると想像を絶する寒さで思わず下がった!
(ブルブル……やっぱやめようっちゃ! 『北風とお日様』という空想話は本当に学べるっちぃ。寒い空気は服を余計に脱がせないっちゅうが、暖かい日差しは熱くて服を離すっちゅうお話。実際の所っちゅうのは、俺が解釈するとこうだっちゃ。
 生命はいつだってお母ちゃんの温もりを感じたいからそこから抜け出せないっちゃあ。
 俺にしては良い事を思い付いたと……あれっちゃ? どうして銀河連合が来てるのかなっち?)
 サン幕はもう一つの北風に震える--さっきまで秋山班を苦戦させた銀河連合の内、三割がサン幕を包囲する。
「こうなったらエラ会話で助けを求めよう! 待ってくれ、銀河連合! ここで戦ったら炭化水素が反応して燃えかすになる! そうなったら折角俺を食っても得はしないぞ。本当だからさっさと退いてくれないかな……あれ? 近付いてるのかな? エラ会話だよ。海ではいくら声を出しても聞こえない所で効率よく相手に伝える事が出来るエラ会話。三国共通の通信歯段であるエラ会話が……いやあ! 俺を食っても美味しくないよ!」
 烏賊型が捕食する為に八本足で絡めようとする……がそこへ魚影がサン幕を更に深く下ろしてゆく!
「わわ……あばべばでえれえけこ--」
「無理してエラ会話するな、サン幕! 部下を助けるのは上司の役目だろ! 特に班長たる私は使命を放り出すなんて出来るか!」
 サバ蔵とサン幕は深部六へと下りてゆく……そこはもはや真正細菌族でさえ棲みつかない暗き世界。

 午後十一時三十分三十秒。
 場所は北アリスティッポス海深部六。そこは最早生命すら棲んでいるかさえわからない。
「ええ、と。班長? 伝わってるかな、班長?」
 海洋種族共通の通信歯段も目で捉える事が出来ないと何の役にも立たない。
(エラ会話が通じないっちゃあ。つーかここって深部六だよなっちぃ? つーか上と下がわから……ぎりぎりわかるかっちゃ! 浮力が上方向に働く以上は……つーかここに来て水圧を気にしてきたっちぃ。俺達は深く--)
 突然彼の身体に何かがぶつかる。彼は眼を向けるとそこには……秋山サバ蔵と思わしき眼が見えるのか?
 エラ会話が出来ないのなら、眼で通信するんだ--サバ蔵(?)は眼でエラ会話を実行!
 あわわ、はがべじゃ--瞬きもままならないサン幕。
「この方法は本来、貝族が得意とする開閉式会話だ。開け閉めを利用した会話はエラ会話に比べて複雑さもなければ、多様性も薄い。けれども効率性は十分。
 本来はすぐに慣れるべきだが、いつ死ぬかわからない環境である以上はじっくり慣れるといい」
 れうそれささばっち--眼によるエラ会話になれないサン幕はおよそ十の分もの間苦戦する。
「あかさたなはまやらわ……よし! わかってきた!」
「慣れてきたな……じゃあ伝えるぞ! 私から離れるな! 出来る限りくっつきながら逃走を図れ、いいな?」
「はい。えっと--」
「長文だったな。ここは私に離れるな! まず一つ!」
「『私に離れるな』……でいいんだね。次は?」
出来る限りくっつく。わかったか?」
「『出来る限りくっつく』……だな。最後は?」
逃走を図れ。もう一度伝えるか?」
「結構だよ。『逃走を図れ』って伝えてるんだろ? よくわかりました、班長!
 長文に直すと『私に離れるな! 出来る限りくっつきながら逃走を図れ!』だろ!」
「短期間だが、さすがは学者だ! すぐに慣れるならもう十分だろ! とにかく見えない世界では耳が重要となる! 耳で俺が居る位置を探れ! そうすればくっつきながら行動出来る!」
「安心出来ないですよ、班長! 銀河連合に食われたらどうする--」
 そんな可能性が私にあるとでも--強さに絶対の自信があるからこそ出る言葉。
(だよなっちゃ! 班長の強さは生意気なサケ眼でさえ認めるんだからっちゃあ)
「ゆくぞ、サン幕!」
「は、はい! どこまでに付いて行き--」
「と伝えている所で既に我等は囲まれてしまったな!」
 またですか--目でも耳でも捉えられないサン幕には銀河連合が居る事さえわからない。
 けれども生粋の傭兵秋山サバ蔵の言葉なら直感で信じられる。現在二名は生存の可能性すら薄い暗闇の世界で空想話における奇跡を信じようとしていた。
(んな奇跡をどうして信じようっちゃあ! 俺はもう全てを壊してでも元の明るい世界を拝みたい気分っちぃのに!)
 この時、この場所にいる全てのものは大地の声を捉えていなかった……第二波が刻一刻と迫りつつある事を!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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