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一兆年の夜 第四十六話 ニュートンが支配する世界で(五)

「じゃあ『エーテルホーラウ返し』の第五部と行きましょう。舞台は建物の外から中へ移ります。突然にして窓から蹄程の面積はある隕石がぶつかり、中の方へ硝子の破片が飛び散ったものだから近くを通りかかった従業員は驚いて客室の扉にしがみつくって訳だよ。気持ちはわからんでもないが、情けない事にそいつは雄だな。更に情けない事実としてそいつは熊族ときた。名前はリック・真鍋。真鍋傭兵団との繋がりは多少あるのに窓硝子の破片出すら恐がる情けない雄だよ。
『危なかっタア! 刺さったら痛いカアラね』
 リックの齢は二十三。傭兵団を自主退職して以降、職探しに日々を過ごし、やっとこさ就けたのがこの宿泊施設。ところが、この施設で困った事が発生。それは板垣親子による最強を巡る喧嘩だった。ただの親子喧嘩なら問題にはならない。だが、あの野性的で有名な天文学の親子。喧嘩を観戦しない野次者は興味ない者や都合がある者を除けば観戦しない者は存在しなかった。今日という日は運勢が良いものではないせいも相まって喧嘩が始まる前に隕石が降ったり、五階以外の客が一斉に板垣親子の居る客室まで詰め寄ったり、隕石が連れてきたのか定かではないにも関わらず銀河連合が襲来するなど一体全体何が起こってるというのか!
 リックは頭が混乱する中で更に迷わせる事に遭遇--隕石が中に入ってきた!
『き、き、きと僕の日頃の行いが良くないせいダア。ださ、ださから隕石が飛び上がっタアんだ、きっトオ!』
 リックの答えは筋違いだった--隕石は外にいる羊と山羊が力を込めすぎて二階まで届いた事に気付かない。
 気付くはずもないが、リックは日頃の行いのせいだと自答して悩み始めた! そんで彼は二階に誰も居ないのをいい事に独り言をあれこれ呟く。
『きょ、きょきょは伯母さんの薦めでアアった腹筋百回するつもりガア、僅か九十九回だったことニイ神様がお怒りになったのかな?
 そ、それかか? 毎日塩分を摂る為に欠カアセない味噌汁を、今日に限って一回も作らずに済ませたのがいけないかな? み、み味噌汁は辛いから毎の日一回食ベエるのが辛かったから一日くらい減らしてもいいトオ考えたのにお怒リイかな?
 そ、それかかな? 真鍋家が代々早朝にやる真鍋の踊りを今日に限っテエ一回もしなかったのがいけないかかナア? あ、吾、あれは柔軟な体操もは入るカアラ痛くて千切れそうで音が好きじゃなかっタア。間接が軋ムウヨうな音は僕、好きじゃジャアない!
 た、多分異なる。ど、どれも神様がお怒りすスンニはむるりなこと! あわわ、まだ心当たりないことデエお怒りしてんかなあ!』
 リックは隕石を見つめながら自分の行いの何がいけないのかを悩むがどれも当てはまらない。そりゃあ当てはまる訳がない! なのにこの熊は事もあろうに隕石の前で土下座をするわ、真鍋の踊りを披露するわで一体全体訳がどうなってるやら。こんな場面を目撃するものの目には何と映るかわかったもんじゃ……いや目撃者が出てきやがったぜ!
『何してんの、真鍋君?』
 リックよりも一の年より先に就職した先輩従業員リザリウタ・メデリエーコフだ。彼女は齢二十四になったばかり。栗鼠族では美雌に当たる快い匂いがする者だ。
『あ、ハアいメデリエーコフさん! 隕石に触れていいかどうかデエ悩んでましたが』
『あれ? 隕石? どうんして外にあるんはずんの隕石が二回のしかも落下軌道じゃあ有り得ない場所に落ちてるんのよ?』
『え? メデリエーコフさんにはわかるんデエすか?』
『腰砕けな答えよ。実際わかるんわけないわよ、目撃してないし』
『だよね。で、でも触れレエバ銀河連合が--』
 出るわけないでしょ--リザリウタは用心せずに左足で隕石に触れる。
『だい、じょうぶ?』
『私だって恐がったわよ! で、でもほら……持ち上げても骨伝導で何か伝わるんはずんなのにそんな気配ないわよ!』
『本当ダア……っよりも骨伝導ナアンてわかりますか?』
『わかるんと思うんようんに見えるん? 適当に言っただけよ』
『メデリエーコフさんの言葉は腰砕けに聞こえナアイって。エーテルと言ってもメデリエーコフさんなら--』
 そんな事よりも--隕石が入ってきた窓の方に近付くリザリウタ。
 彼女は外で仰向けになってじたばたしながら助けを呼ぶ二名の者に気付いたのか、こんな事をリックに言ったぞ。
『真鍋君! 至急一階まで降りて裏口に出るんわよ!』
 え--リックは走ってゆくリザリウタの後を追う!
 まあこの後二名は外で仰向けになったマハルーンとエリフュウリを助けた訳だ。うーん……この後はそうだな。
 この後は突然五階で歓声が沸くのを聞いた四名。急いで中へ入ろうとするが--
『あ、れ? どこへ行クウんですか、メデリエーコフさん!』
『決まってるんでしょ! 今の状況なら五階へ上るん方法はただ一つ!』
『それ木登りが出来ナアイと無理ですよ!』
 偶然にも四名全員、外から五階へ上ることは朝飯前であった! かくして彼等はこんな言葉を編み出した……『エーテルホーラウ返し』という常識をひっくり返すものを!」
 ……。
「それで落ちを決めたつもりかの? さすがにそれではきまりが良くない、イカランよ」
「……仕方ありません! けれどもこれ以上話を膨らませても意味はありません! それじゃあ落ち語りとしては長すぎて客が欠伸をします!」
「ま、まあいいじゃないかな。『エーテルホーラウ返し』は綺麗に幕を閉じたし」
綺麗……某にはそう感じないの」
 うう。なな、んだか良くない予感がするする。
「済まないですが、第六部は思い付きません。わしはもう力を使い果たしました。
 後は……タコタルゾ。お前に任せる以外にない」
「え? 今なんて言ったの?」
「わしはもう無理なんだ。いくら想像してもこれ以上の複線回収は思い付かない。ここは落ちは碌なものではないが、複線回収だけは上手いタコタルゾに任せる!」
「宜しく頼むぞ、タコタルゾや」
 え? え? あれ? どうして僕が任されてるの? そもそも言い出しっぺは--
「これも『万有引力』の作用じゃ。某はもうこれ以上種は蒔かん。蒔かせん。そもそも言い出しっぺが度であれ投げられたものをみすみす捨てる行為を落ち語りする者がやるんじゃない。
 どんな状況でも難なくこなすのが落ち語り家じゃ! とにかく当たって砕けてでもいいから力を出し切れ!」
 あわわ、あんじゃそら! もう心が折れそう折れそう。
「心配いらん。考える時間を設けるから第六部をじっくり考えろよ、タコタルゾ!」
 イカランまで誰に向かって伝えてるんだよだよ!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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