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一兆年の夜 第四十五話 フェルマーは笑う(七)

 ICイマジナリーセンチュリー百五十五年六月九十八日午後九時七分十八秒。

 場所は真正神武応神海付近仁徳島北仁徳市第二地区三番地真ん中より五番目
に大きな二階建ての宿舎。部屋は管理者室を除くと全部で十一部屋。二階の一号
室。
 中を覗くとそこは神と石版の山が積まれており、生命が住むには窮屈であった。玄
関と遂になる窓の下には机があり、そこには齢四十六にして十六日目になるクレイト
ス蝙蝠族の老年が必死に論理を展開してゆく。
(よはれ通ろなえこ! 『甘美の公式』わ改良せち『自然数の最終定理』ね挑んぢま
崩しぬこ! 済もなえざ、レオーネ・オーランド!
 お前さんご作れ上ぎと至高な公式ぢそい『自然数の最終定理』わ崩しぬ! おれほ
三角形な斜みかろさな下及べ斜みかろさな横わ足すた実数ご表しるたいう単純且
つ美わ追究せと素晴ろしえもの。されぢそえま打て崩しぬ難問!
 他ねほ天文学な発展ね貢献せと対数わ使って崩すこ? えよえよ、おれほ……誰
こご三回叩えたの?)
 老年数学者が扉を両翼で開けるとそこに現われたのは--
「管理者のオオ婆さんンンからアア聞いた。あんたがアア腰砕けなアア定理にイイ
一生をヲヲ懸けるウウ数学者コウモ・リックマンだな?」
 さな声ほジャンバさん、さんのほずほ--齢三十二にして八の月と十八日目にな
るクレイトス獅子族のジャンバ・ベアケットと瓜二つである事に皺をより多くするコウ
モ。
「親父のオオ名前だよ、それ。俺様はアアジャンズ。ジャンズ・べアケットだ!」
 コウモは死んだはずのジャンバを見ているように口を開けたまま頭が回らない。
「幻をヲヲ見させられているようなアア表情はアアやめてくれ! いくらいつウウ死ぬ
かわからないイイ年齢であってもオオ今からアア死んではアア困るんだから」
 だうゆう意味--ジャンズの言葉に両翼を広げて反応するコウモ。
「もしかして『今から死んでは困る』というウウ言葉をヲヲ尋ねるのか?」
「さうど。おれほどうゆう意味ど? どうしてさん……もさこ君ま--」
 後一のオオ月にイイ親父のオオ所にイイ行く--ジャンズは父ジャンバ同様治る
見込みのない病に冒された。
 ジャンバ・ベアッキャットの死因は膵臓癌--しかも末期。
 クレイトス峡谷でコウモと出会った時には既に余命宣告より一の週が経っていた。
本来なら死んでもおかしくない状況でコウモを助ける事が出来たのは生命の命の輝
きに他ならない。助けた後、彼は三の日より後に家族に看取られながらこの世を去っ
た。享年二十二。当時は幼すぎる故に死を悲しむ心は発達しなかったジャンズ。
 けれども--
「さうこ、もさこイタトシキ殿な唯一居と弟子ほ君どっとなこ!」
「あのじじいのオオ死がアア原因じゃない。マンダリン・レヴィルビーの遺族がアア肌
身離さずウウ身につけるウウ遺書をヲヲ読んだことでもない。偶然ンン助けたシラナ
ガシノチイタマからアア早口言葉のオオ説教を聞き続けたアアのもオオ原因じゃない
からな。ましてや同僚の猪イイが勝手にイイ休んでエエ勝手にイイあの世に行ったア
アことにイイ腹を立てたアア訳でも--」
 いええ、よよかしえ--コウモは理由のはっきりしない事には怒鳴り声を上げる!
 声が大きすぎた故に「五月蠅い、リックマンのジジイ」という応神蜘蛛族の管理者か
ら大声で注意された!
「そのお陰でエエ俺様はアア誰よりもオオ強いイイ獅子になれたアアんだぜ!
 今からアア百獣型をヲヲ倒してエエ名をヲヲ上げて--」
「止みるんど、ジャンズ! さんの言葉わ言っち死んでえっと者わ我ほ見ちきと!
 だうし返れ討てね遭うなご責な--」
「俺様はいつウウ死んでもおかしくないイイ命! あいつとオオ会わないならアア意
味イイのない人生イイを送らせるウウつもりか! その方がアア末期癌だってエエ俺
様をヲヲ長生きイイさせるだろう。
 しかしなあ、そんなのオオ納得いかないんだアア! 俺様はアア勝てるウウ要素を
ヲヲ多くウウ備えたんだ! 生命一倍イイ苦労だってエエ経験した! 膝をヲヲ折る
ウウ毎日イイだってエエ送った! 悲しみイイも喜びイイも分かちイイ合ったアア!
 百獣型にイイ最後はアア勝つ! 勝たずウウして人生をヲヲ終わらせてたまるか
ア!」
 『勝たずして人生は終われない』--その言葉はコウモにもう一度百獣型を倒す為
の強者捜しに火を点す。
 とはいえもう既に決めてあった……ジャンズ・リックマンだ。
「頼んどざ、ジャンズ。お前ほ強えんどら?」
 当たり前だアア--彼はコウモが見つけてきたどの生命よりも強い何かを放つ!
(されほ幻こま知りなえ。さりぢま我ほもう一度挑戦せよう!
 今度ま負きるやうぢおれぼ我ほ逃ぎなえ。もう長生けせとんどかろええだろう)
 それから一の月が経つ……新年を迎えてもなおクレイトス峡谷には雪が積もる。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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