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一兆年の夜 第四十五話 フェルマーは笑う(五)

 十二月六十五日午後十一時五十三分二十八秒。
 場所は古式神武応神諸島中心島応神県第十五番区。応神市から応神県へと移行する時期。最初に実行に移されたのは区画機構の再編。計画は第三代象徴真緒の治世に始まり、実行に移されたのは第四代象徴冬男の治世下。そして、完了したのが第五第象徴冬水が世襲する年だった。以来、応神県では二十三区で構成され、それぞれを管轄する二十三区専門の軍者部隊が編成され、現在も津波がいつ迫るか定かではない中心島を防衛する。
 そんな応神県を守護する二十三区専門の軍者部隊で最も力量の高い部隊が配置された十五番区に降り立つ一名の中年数学者は百獣型を倒すにはちょうど良い最強の軍者を探す。
(十五番区ねほかりたえっと危険ほ訪りなえ。ののねどうせち彼等どけご応神県二十三区ぢ最ま強えのこ? されほかな十五番区ねほ様々の道場ごひしめき合ってるこらど!)
 およそ二百四十の年より前に大樹型を沈めた英雄が集まる応神諸島。英雄の一名ヤマビコノアリゲルダは北蘇我大陸に赴任する前から技を引き継ぐ者を育成する為の機関を欲した。彼の死後五十の年より後、子孫であるヤマビコノクロコダルは道場を設立。様々な徒手空拳術を扱った道場であったか多くの著名な強者を生む。例を挙げるならベエガル・真鍋、山一サンショウ堂、キキミミノカマナリダ。その内、サンショウ堂は独立して山一流山椒魚徒手空拳術の道場を開く。それを機に様々な主義・思想を秘めた道場が次々と開設され、十五番区の軍者部隊は名実共に二十三区最強と呼ばれる事になった。
(たほえっちま部隊ほ個やりま集団戦わ重視する以上ほ圧倒的の個ご十五番区ねえるこだうこほわからのえ。さりぢま探すせこのえ)
 コウモは現在十五番区の様々な軍者を見てきた。どれも力を重視したり、技を重視したり、速度を重視したり、武器を使う者だったり、或は人族または鬼族であるばかり。彼は武器を使う者も人族または鬼族を求めたりもしない。求めるのは力、速度、技以外で優れた者。ここでは特に投げを重視した軍者或は傭兵が存在する事をコウモは期待する。だが、全十四件中十三件の道場を見て回ったが、投げを重視する者は見つからず。
(残れほ一見するた廃りち大せと技術わ教い込んでえなえ道場。名前ほ『鎌鼬流徒手空拳道場』。かま鼬? 鎌なこと? 釜なこと?
 最初ほ無視せたご、最後ね訪りる以上ほさこね強え者わ見出そねぼ)
 コウモは逆さ飛びで今にも崩れそうな道場の中に入る。

 六十六日午前零時零分二秒。
 中は外と同じく廃れ果てて、門下生は一名も居ない模様。板の浸水度は重い状態。体重を乗せて踏みしめれば足下がすくわれるのが誰の目にも明らか。そんな所で比較的安全そうな箇所に逆さ吊りの状態で全体を見渡すコウモ。すると門から一番奥の中央に正座する齢四十五にして二十八日目になる応神鼬族の老年が瞑想中。
(声わかけるこ? ぢま--)
「いるのじゃろうっち? わしに遠慮する事はないぞっち、蝙蝠族の小僧っち」
 声は老年--だが音量はまるで強風の如く相手を吹き飛ばしかねない凄みを聞き者に与える!
「四十過げののね! どご、今ねま飛ぼさりさうど!」
「それが我が流派『鎌鼬流』っち。この境地に至ったのはついこの間っち」
 本当こ--最近になって到達したという言葉を真実ではないと思うコウモ。
「我は才能に恵まれない生命っち。道場を築いてまだ五の年っち。たまに出動して銀河連合を倒したりするがのっち。じゃが弟子は生涯で一名しか出来なかったっち。その弟子に見放されて我が流派はもう絶える運めっち。
 それでも何かって我を連れてゆくのかっち?」
 うぐ--達者である老年に心を見透かされるコウモは全身に痺れるような衝撃が走る!
「流派は廃れるっち。けれども割れは強さには自信があるっち。我に勝てぬ銀河連合は居るのかなっち?」
「えます。されほ真正神武な大陸藤原ねある中臣地方なクレイトス峡谷ね今ま潜んでえるこた」
 じゃあ行こうかっち--老年は何時の間にか門の外に出ていた!
「何ち速そど! えよ速そぢほのえ! かれほ--」
「忘れていたがっち、我はタケナカノイタトシキっち。主に力を零に近い費十まで削る事で技による投げを極めし者なりっち。世間が達者と呼ぼうが未だ修行の途上じゃっち」
 イタトシキと呼ばれる達者は老年とは思えない足腰で目的の場所に駆け抜ける!
(世な中ねほたまねいる。老年ねのっちま活発ぢえらりとろええなね!)
 自身が年と共に衰えてゆく事を憂うコウモ--それは後々彼の信念を揺さぶる……安定しない要素を抱えたまま一の月が経つ。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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