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一兆年の夜 第四十五話 フェルマーは笑う(三)

 六月三十五日午後十時一分五十九秒。
 場所は大陸藤原中臣地方クレイトス峡谷。
 コウモは百獣型が元居た場所に構えるかを確認。すると、隙がありそうに眠る百獣型を発見。
(我な目ご衰えているなこ? もう少し近くね寄ればええこの?)
 死角から死角へと飛び移るようにコウモは百獣型から逃げられる最短距離を定めてゆく。それは正に定理を様々な技術で責め立てるように--少しでも穴がないように息を潜める。
 しかし、理論と現実の隔たりは埋められない--うっかり大きな音を立てて翼をはためかせたのか、百獣型に気付かれた!
(近付くざ! 確認以前ね早くかな場ころ離れのいた!)
 楕円に大きく左旋回して速度を上げるコウモ--勢いをつけて翼に送られる風を調節しながら百獣型との距離を広げてゆく!
 だが百獣型は峡谷の地理に詳しいのか近道でコウモを追い詰めようと試みた……その時だった!
 知識だけの蝙蝠よりも俺を相手しろ、銀河連合--風を切る速度で百獣型に組み付くチイタマ!
「来ちくれたなこ、チイタマ!」
 お喋りはここまでだああ--百獣型に背負い投げを見事な受け身で流しながら左後ろ足踵で百獣型の顎に攻撃する!
 百獣型は回避する。けれども、それはチイタマの狙い通り--反対の後ろ足で百獣型の顎髭に絡ませながら体重を乗せながら勢いよく顔面を地面に接吻させてゆく!
(きま--)
 らなかった--百獣型は右前足甲で直撃を避ける!
 攻撃を躱されたチイタマは一旦距離をとる為、後ろへ跳ねる! 百獣型は体勢を整えるように獅子の構えで静止。両者はこの後より十の分もの間、相手の出方を窺う。
(隙わ見しなえようねしてる。隙ほ勝負わ決みる最大な要因。かな間ほ両者ご動く為な布石。だかぢ動く?)
 一陣の風が横切る--チイタマと百獣型は遠目からでも残像が見える速度で突進!
 それは一瞬の出来事だった--地面に最後まで立っていたのは百獣型の方だった!
(何ご起かっと? どうしち口ころ血わ吹えち宙ね浮くなど、チイタマ!)
 速度は紛れもなくチイタマの方が上だ。ところが、百獣型はそれを見越すように直前で後ろ両足を地面に着けて左前足を握りながらチイタマの顔面に一撃を与えた--チイタマの顔面に一杯に巨大な皿模様は毛の眉間よりも深く形成する!
 殴られたチイタマの肉体は成人体型七まで浮かび、そのまま奈落へと向かう。
(最速た謳をれる陸な種族チーター。さな中ぢまチイタマほ技術ま備いと雄! さりご速度わ見切ろれち一撃な下ね倒それるのんち!)
 まさかあのチーター小僧ヲ倒すとは、もしや本物だな--百獣型に気付くような声で背後に立つのはマンダリン。
(来ちくれたんど、マンダリンさん!)
「一応遺言ハ書いた。けれどもあれハ家族宛ダケニ書かれてハいない。
 そんなことよりモ俺ト勝負しろ、百獣型よ」
 マンダリンと百獣型は互いに構えた。半の分も経たずに百獣型が攻めに入った!
マンダリンは風を切りかねない速度で攻防を仕掛ける百獣型の攻撃を一つ一つ捌いては着実に胸や顎のみならずあらゆる箇所に軽い一撃を加えてゆく!
「倒すニハ至らない。それでもとどめノ一撃ヘノ布石。済まないよ、銀河連合」
(マンダリンさんほとど発展せと系統なめならず、古え型ま確こめちいる! 有効の型わ探すなめならず、百獣型ね波長わ読まれのえようね気わ配ってある)
 それでもマンダリンにとっては必死の表れだった--読みを外すように仕掛ける百獣型の動きに翻弄されながらも最小の動きで捌く為、両の前腕には無数の擦り傷が増えてゆく。
 更には最初の二の分まではマンダリンが優勢だった。だが、それ以降はいくらマンダリンが捌きつつ突きと薙ぎを放っても次々に防がれる! それに気付いたマンダリンは百獣型の攻撃を利用して後方に下がった!
「どうやら俺モ切り札ヲ使う時ガ来た! ここから先ハいくらデモ攻撃ヲ受ける!
 その代わり--」
 マンダリンは初速は遅く出た……かと思った矢先に相手に体感速度を読ませながら一気に加速!
 百獣型は一撃を眉間に貰い、後ろに飛ばされる! マンダリンは先程と同じく初速を遅く出て……一気に加速して今度は鳩尾に攻撃! 百獣型は今ので動きは読めたと踏むやすぐに攻勢を開始--動く前にこちらから攻撃を仕掛けに出る!
 ところが、マンダリンは百獣型の攻撃と同時に左返し突きを臍に食らわす--地震の突進にかかる力も乗る事で成人体型八まで飛ばされる!
(おりぢましっかりしがみつく! 予想以上ね打とり強えざ、かな百獣型ほ!)
 登り切った百獣型を待つマンダリン。彼は構えるのを確認すると先程のように初速は遅く、相手が読み終えるのを確認するとすぐに……出ない?
「これ以上ハ読まれる。何せこれハ俺ガ考案した新式カンガルー拳法。防御を捨てて攻撃ニ踏み込む為じゃない! 攻撃の波長ヲ調整する為ニ俺ノ勘デ考案された『音叉の型』だ。真正神武において完成した以上、後はとどめノ一撃ヲ加えるのみ!」
 その言葉と共に雄叫びを上げるマンダリン--最速の踏み込みを持って最も強い突きを放った!
 だが、現実は情けを与える余地を与えてはくれない--
(首ご……マンダリンさんご、死んど?)
 マンダリンは首なしのまま、想念の海がありそうな扉に向かって谷底へと飛んでゆく!
 百獣型にはマンダリンがとった一連の動きはどうでも良かった。最も大事なのはとどめの一撃を放つ際にどうしても全ての者は僅かな隙を見せる。そこを狙ってマンダリンの首を喰らった!
(逃ぎのいた! このままぢほ……来やがっと!)
 百獣型は蹌踉めきながらもコウモを追尾する! だが、出だしが早いお陰でコウモは距離を広げて見事に逃げ切った!
 しかし、彼の心にはまたもや負けた者が受ける悲しみが広がる。
(我ほ二名な優りと生命わ死のせと! かんの状態ぢ一体どうすればええんど!
 もと探すせこのいこ? おりわ倒しる生命わ! 出来るなこ、我ね?)
 コウモの中では最強の百獣型を倒す事と『自然数の最終定理』の証明は同じ問題に感じた--どちらも有効な方法を見つけたかと思うと挑戦者を笑うかのように崩してゆく点に!
 そんな悲しみを背負いながら彼は十の年を重ねてゆく……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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