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一兆年の夜 第四十五話 フェルマーは笑う(二)

 午後十時四分四十一秒。
 場所は第三南地区輝星通り。この通りは真正神武当初から構想され、初代最高官天同輝星の死と共に完成する。披露日はあまり前向きではない雰囲気だった--第二代最高官に世襲する前の天同美世が姉である星季の骸を首都六影まで運んだ後だった。
 そのような理由なのか、ここを通って行く生命は月平均百を下るのも珍しくない。ただし、星季通りと同じく下半期毎に整備されるのと必要最低限の軍者は配備され、日夜警戒を怠らない。
 コウモはそんな生命通りが少ない輝星通りを駆けてゆく--今も歪む快晴の空に押し潰されそうになりながらも!
(今日ご快晴ぢ運ごない。これのろもど晴れこ曇りのろ良かった。おな歪みご出来たなほ十八な年やれ前。こな球体予想わ立てたカーモネーご歪めな種類わ示す論文わ発表せち次な年ど! カーモネーぢそい予想出来ない巨大の歪めご出てくるんどかろ一体だんの流れ星ご来るこ安心出来なくなったや)
 現在も空に出る歪みの大きさはお日様を超える。それは即ち最小四十二の年から最大六百六十六の年までに水の惑星の大半を覆う未曾有の流れ星が降る事を意味する。
(次もぢ後二十四な年ののこ? それとも……もうえいこ。
 今ほ最強な百獣型わ倒せる生命わもう一名探すことわ集中しよう。武器わ持つ者ぢほない。我ご探すなほ徒手空拳ね優れた生命ど。百獣型ほ徒手空拳わ器用ね使う以上ほかちろま徒手空拳わ器用ね使う者わ探せて勝たねば!)
 そうこうしている内に一名の酒に酔ったチーター族の青年を発見する。コウモはすぐさま彼の様子を見に駆けつける!
「大丈夫こ、チーターな青年!」
 んなわきゃれえ--齢二十四にして九の月と十五日目になる応神チーター族の青年は呂律が回らず今にも建物の角にぶつかりそうな勢いであった!
「一体何ごあったなですこ? 訳ほおな路地裏ぢ聞きますや!」
 俺の真ん前にある居酒屋の裏通りか--青年は場所がどこなのかを把握する能力は残っていた。

 午後十時三十分八秒。
 コウモは元傭兵で現在は生活保護受給者であるチーター族の青年シラナガシノチイタマの話を聞く。彼の言い分ではあまりに落ちぶれた生活を一の年以上も続けた為に区役所職員が生活保護を打ち切ると言い渡した事に腹を立てて五件もの居酒屋を周り、残った生活保護全てを酒に当てて酔い潰れたとの事。
 そんな情を同じく出来ない理由を聞かされたコウモはこう言った。
「生活保護休符全ち使ってしまったろこれから先わ生きて行けのいざ。どうするなそ?」
 決まってる、せびればいいだけ--落ちぶれた者がいう言葉が返るだけだった。
「その前ね飢いぢ死んだろ神様ね申し訳つきませんざ。恥ずかしくち死ねきれないだろう」
 説教するのか--説教が一番好きでないチイタマだった。
「じゃあこんなことわ質問せちええ?」
 何だよ、気になるからやめろ--早口すぎてコウモの耳に届かない言葉だ。
「元傭兵っち聞いたきだかつてほどこね所属せと? 真鍋傭兵--」
 違う、カゲヤマ傭兵団だ--かつては五本の指に入る実力者なのか、底だけは酔いであっても狂わないチイタマ。
「『カゲヤマ傭兵団』? 聞かない傭兵団どの。だんの所ど?」
 ききたいんらな--かつて所属した傭兵団なのか、嬉しそうに酔いを回すチイタマ。
 話によると『カゲヤマ傭兵団』は秘密裏に結成された傭兵団体。創始者はかつてアリスティッポス大陸の生き残りである最強の鬼族カゲヤマノツクモノカミの第一子タタラノカミ。主な活動内容は徒手空拳による傭兵育成である。つまり次世代の傭兵を育てる為の傭兵団である。依頼があっても戦い以外の引き受ける仕事内容は子育て支援及び孤児の育成。だが、あまりに狭い活動範囲故に資金面では赤い文字が並び、二の年より前に傭兵団は解散。世渡りが上手くない傭兵は各地に散らばって生活保護にありつく始末。チイタマもまたそんな傭兵の一名だった。
「知らなこっと! さんの傭兵団ごあるのんち! 政治団体制度ご真正神武ねま根付いてえれぼカゲヤマ傭兵団どっぢ存続した! だけども……もういいこ、過ぎたことほ。
 ねしたっちあんたま生活保護にありつくよりままったいいことね挑戦すべきどや」
 そんな虫系が良い気分になれうことあるか--現実は情無き世界である事は認めるチイタマの言葉。
「確かねさうど。良い気分ねなれる話ごおっとのろ今頃ほ『自然数の最終定理』どっち証明それちいる。そんな現実でも少しは虫の良い気分になったっていよ、例えぼ真正神武なクレイトス峡谷ね潜む最強な百獣型をこの酔った足ぢ倒したっちいいじゃないこの?」
 今何と言った--チイタマは記憶の隅々を探し始めるようにコウモから話を聞き出そうと前両足で両翼を鷲掴みする!
「エデヂ! 飛べなくのっとろ--」
 いいから聞かせろ--せがむチイタマ!
「いった、今もぢな百獣型たほ思えない技術わ駆使するんど! 幹わ十回以上足蹴れせたれ、相手な動けわ僅か一ころ十な分足らずぢ読み取ったり。
 あれね勝てる生命わ探してるんど、我ほ!」
 その話に乗るぞ、蝙蝠男よ--両前足を両翼から離し、目から生気が戻ってゆくチイタマ!
「勝てる見込めほあるなこ?」
 俺は実力者だぞ、今から行くか--目的の者に出会いたくて全身の毛を揺らめかせるチイタマ!
「そうかい。けれどま出発ほもど早え。宿泊施設わ出て行くなた、他な挑戦者達な日程わ考慮すれぼ最低一な月かかるごえいこ?」
 了承してるらろ--まだ酔いに苦しむチイタマ。
「された百獣型わ倒してまお金ほ出ないご、えいこ?」
 金の為じゃないんだから、いいだろ--あくまで戦う者の使命に懸けて百獣型との対峙を望むチイタマ!
「じょおクレイトス峡谷ぢもと会おう、シラナガシノチイタマ。しっかり力わ付けろや!」
 数学してる奴が偉そうに--前後の両足が左右に揺れながらコウモとは反対方向に去ってゆくチイタマ。
(もど探さねぼ! 二名だけぢほもど百獣型わ倒せる証明ねならない! 勝負まもと、ある証明た同じくはんなちゃったぢま見逃せない厳しい世界!)
 そうして次の日も優れた生命を探すが見つからず結局見込みがあったのはマンダリン・レヴィルビーとシラナガシノチイタマだけ。彼等が当日来る保証はない。けれどもコウモは信じる--二名は戦う者の誇りに懸けて峡谷に足を運ぶ!
 そんな確かでない自信を胸に一の月が経つ……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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