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一兆年の夜 第四十五話 フェルマーは笑う(序)

 ICイマジナリーセンチュリー百四十七年十二月二日午前一時十四分十四秒。

 場所は真正神武大陸藤原中臣地方クレイトス峡谷。
 大陸藤原では数少ない片仮名が使用された地域。遠方にあり、闇を好む生命が主
に棲みつく。
 そんな場所で齢十五にして九の月と八日目になるクレイトス蝙蝠族の少年は二つ
の問題に悩まされる。
 一つは目下に出現した現時点最強の百獣型。歴史上数々の百獣型は腕(または
足や翼)の良い生命一名いれば容易に倒せる中堅級の銀河連合だ。ところが今度
の百獣型は大きく異なっていた。
 それは様々な武術を駆使して、挑戦者を次々と喰らってきた!
 そして--
「馬か鹿、カ、エ? ク、マガァ……」
 真鍋傭兵団出身の藤原熊族の中年藤原クマ吾が力と技と心をかけて挑むものの
百獣型の予想以上に柔らかい肉体と前足の平から放たれる独特の攻撃で沈んだ!
(こ、こいつほ強え! 我ほおる問題わ解こうた必死なのね、もたしてま難題わ突き
つけられるのんち! おんのね強い百獣型わ目撃せたろまうかちろもぢ興味わ示し
てせまうざ!)
 彼は蝙蝠族独特の逆向き訛りで驚異的な難題である最強の百獣型を誰が倒せる
かについて悩む!
(クマ吾ほ五十体わ相手ねせてま大丈夫の傭兵どっとや! さ、されご足ま牙ま叶わ
ないのんち! まう一度考えのいた! 
 さんのことやれまあいつね見られとろ今度ほ我もぢ巻き添えわ受ける! に、逃げ
にぼ!)
 少年は命を懸けて最強の百獣型から逃げ切ろうと羽を広げる! だが、深夜の風
は蝙蝠族の翼には重荷だった--予想以上に向かい風であったのか、低空飛行で
飛ぶ事が叶わず、成人体型五まで浮いてしまう!
(見つこっと! 蝙蝠族な翼ほ上ころ降下する際ね風わ受けて飛行出来るようねのっ
ちる! ののぢ自力ぢほ飛ぶことほ出来ない構造ど! 向かい風ご強きれぼ強いほ
ど安定させのくちほいけなくなるころ自然に浮かんで……幹ね足蹴りせちかってね来
る!)
 少年は翼をはためかせながらも百獣型から必死に逃げようと試みる。けれども向
かい風の影響と器用に幹蹴りする百獣型の技術で徐々に距離が縮まってゆく! そ
れでも必死で百獣型から逃げる少年だった!
 ところが百獣型は楕円軌道を駆使して、とうとう先回りをして少年に立ちはだかる
事になった!
「逃げしちくれよ、銀河連合! 我ほもど死ねたくのえ! 食ってま美味しくのえから、
に?」
 そう言いながら左横に翼を動かす少年。だが、また先回りされる!
(遊んでる! 銀河連合ころほ逃げられのえなこ!)
 望み絶たれた表情になってゆく少年--黒から青く染色してゆくように!
 その時だった--オオ俺にイイ任せろ--という声と共に一名の獅子族の青年が
百獣型に立ち向かう!
「あ、なた様ほクレイトス獅子族なジャンバ・ベアケット! 勝てるなこ?」
 勝たなきゃイイいけないイイだろう--齢二十二にして一日目の青年ジャンバは一
族の誇りに懸けて百獣型に挑む!
 その攻防は十二の分も続く。無名であるジャンバに圧倒的に利のない戦いと思わ
れた。
 ところがジャンバは百獣型と対峙する際、戦法よりもまずは百獣型がどのような種
族なのかを考えた。その結果、系統が同じである事に気付いたかのように前半の六
分はジャンバに軍配が上がった!
「がああ! やはりイイ強い! ここでエエ負けるウウのか?」
 けれども後半の六分は予想通り百獣型の勢いであった! まるで先読みされるか
のように事前にジャンバの攻撃が避けられ、捌かれるばかり。更にはジャンバは的
確に攻撃を受けるばかりだ!
「クウア勝てる……そうウウ思ったアアのに! ンウやはりイイ百獣型はアアそこま
でエエ強いとは!
 ウアかくなるウウ上は--」
 ジャンバは前両足の平同士を目の前で叩くと近くに居た少年を連れて逃走する!
「逃げるんぢすこ! 勝てないたをかっち!」
「ややこしいイイ訛りはアア聞いててエエ怒りがアア沸く……ってエエそうウウじゃな
い!
 オオ俺はアア勝つウウ為にイイ逃げる! でもオオ逃げエエ切れるウウか?」
 追って来る百獣型相手に必死の逃走船を仕掛けるジャンバ! それは足の速さを
懸けた死闘ではない--環境を駆使しながら相手との距離を離す戦いであった!
 この死闘に持ち込む事でジャンバと少年は百獣型から逃れる事に成功する。しか
し、彼らは負けた……百獣型相手に!
「逃れたなねかんのね悔しい思いねなるのんち! あいつね勝って欲しこっとや!」
 仕方ないイイだろ、怖いんだ--ジャンバは初めて弱気を見せた!
「我ほ悔しい! おな『自然数の最終定理』た同じくらい解けのえ謎ご現れたことご!
おんの百獣型わ倒せないのろだうすれぼえいんど! 教えろ、ジャンバ!」
「わかるウウとオオ思うウウのか、アア才気溢れるウウ数学少年ンンコウモよ!」
 少年の名前はコウモ・リックマン。蝙蝠族では珍しい数学者。
 若くして『自然数の最終定理』である三以上の自然数種について甲の種乗足す乙
の種乗は丙の種乗となる零でない自然数の組は存在するのかという定理。答えは
簡単だが、どうしてそうなるのかについてはあまりに余白が狭すぎて書ききれない故
に多くの数学者を悩ませる超難問。少年コウモはその難題を生涯かけて解き明かそ
うと思った矢先にそれと同等と思われる難問『最強の百獣型』を倒す生命は存在す
るかにぶち当たってしまう!
 コウモと二つの難問との戦いはここに幕を開ける……それからじゅうの年を経たせ
たまま。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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