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一兆年の夜 第四十三話 選ばれしは凡庸なり(四)

 代議士は皆、選挙に勝つ為なら格好を付ける事も辞さない。現在、代議士の多くが先程の理由で甲板に残る。
 だが、パタ吉は異なる。彼はいかにして大王烏賊型銀河連合を倒すかを探る。
「パタ吉氏よ。わしらは議員なのじゃん。議員んは戦ってんはいかんんのだよん。震え声んで表されるん通りん議員んは格好付けんの集まりんなのじゃん。ここんは船夫んと軍者ん、それんに傭兵んに任せるんだん!」
「それは出来ない相談やわ。俺はこれでも寝技を得意とした家系なのですよの! 絡みつくことに関しては議員になっても修練を欠かせないつもりよの。前に踏みだその!」
 早まるんなん、パタ吉氏ん--制止する声を背に受けて、パタ吉は戦いに赴く!
(わかってますよの、タヌ蔵先生やわ。代議士がどうしてお守りを必要とするのかわ?
 万が一に命を落とせば政治空白を作ることよの。後継者擁立が困難になることよの。更に補欠選挙を急遽実施しなければならないことよの。代議士一名だけでもこれだけ大切にしなくてはならない理由として十分ではないかわ!
 しかし、俺は代議士以前に一生命だわ! 命を懸けて銀河連合を倒すよの!)
 大王烏賊型は船に迫る--船体に穴を開けるだけでは済まない速度で!
「あ、あなたは代議士ですんね! その議員留め金を見ればわかりますん!
 ……っていくら代議士でも戦うんことだけはやめて下さい! ここは我々に任せてさっさと船内に退避して下さい!」
「俺も戦うよの! こう見えて寝技を得意としてるぞの」
「いや、説明になってません! あの銀河連合の成人体型を見て下さい! どう見たって十三を超えますん! とても寝技で絡めるん奴じゃあありません!」
「だがやわ、黙って甲板に立っても解決しないよの! ここは議員であっても一矢報いる覚悟で踏み出すのが一番だろうよの!」
「何が『一矢報いる』ダア? お前は俺の従兄弟が所属する党の頭ダロオ? 不心得者が戦場に出るナア!」
 あなたは真鍋先生の従兄弟で現真鍋傭兵団団長ベアガル・真鍋よの--齢四十二にして十一の月と十一日目になるテレス熊族の老年にして歴史上数少ない五十体を相手に出来る生命ベアガルの方に顔を向けるパタ吉。
「お前はこう思っテエルだろ? 『老いぼれになったあなたに勝てる保証はない』トオ。その通りダア! だからコオそ--」
 ベアガルの前左足が頭上まで掲げると甲板及び船内にいる軍者及び傭兵が一堂に会する!
「だからこソオ我等心得者は協力し合って巨大な銀河連合に立ち向かうのダア! お前のヨオウな者は偉そうに我等に無茶を要求するのダア! その権利がアアル!」
 偉そうなのはどっちだわ--パタ吉は前右足を大王烏賊型に向けて突き出す!
「議員先生が指令を出したゾオ! 我等は軍者と傭兵の垣根を越えて今協力し合おうではないカア!」
「団長ス! 網及び縄の用意が完了しましたス!」
「それで烏賊の距離はどのクウラいだ?」
「今で五百を切りまし!」
 戦闘開始イイ--合計二十五名にも及ぶ合同隊は大王烏賊型が成人体型二百まで近付くのを待ち構える!
「真鍋団長やの。差し出がましいようですやわ、飛んでくるという可能性はありますかの?」
「それはついさっき自分も脳裏を通った所ダア。そんな可能性があるならば命令された彼等を信ジイるのだ。烏族の集まりみたいに一見統制が取れないように感じても長年の厳しい訓練に耐えし者同士の掛け合いは案外上手く行くノオダ」
 投げ棒な意見やわ--左米神付近から汗を出すパタ吉。
 成人体型が二百五十から突然驚くような事が起きた! それは左甲板の方角に何かが落ちた!
 波の音に反応するようにパタ吉が振り返る先には船を揺らし、三名の行方不明者を出した大波がまたも襲いかかる!
(右は銀河連合やわ! 左は波……いや異なるよの!
 あれは……二体目の大王烏賊型なのかわ!)
 波に乗っかるように二体目の大王烏賊型は船を沈めに迫り来る!
 そんな中で船は何かを掴んだように右へ大きく傾く! 幸いエピクロ栗鼠族の船夫が直前に投げた縄を掴んだお陰で海に投げ出されずに済んだ!
(左に大王烏賊型と波よの! 右は現在合同部隊が倒すのに夢中やわ! 左が明らかに薄いやわ! こ、こうなったら俺は--)
 ま、待つんだ--船夫の声も空しく縄による遠心力を利用して左甲板へと飛び移ったパタ吉!
 寝技を得意としているのか通常よりも高い握力は傾斜が急であっても僅かな隙間があれば指を入れても滑り落ちることなくよじ登った! そして左甲板の橋に後ろ両足で直立しながらパタ吉は船が元の角度に戻るのを待つ!
(恐らく成人体型六百は切ったわ! 後は真鍋団長が指揮する合同部隊が引き上げるのを待つ……ウオ!
 速いよの! でも飛び込んでやるよの!)
 急激に角度を戻す時に生じる反動を利用してパタ吉は今、大王烏賊型とそれを乗せる波に突っ込む--船との成人体型が五百二十を切った所!
 パタ吉は既に縄を離し、大王烏賊型に接近してゆく!
(どんどん下がってゆくよの! だが、間に合えやわ! このまま俺はこいつに一矢報いてやるよの! 父が死んだ時に何も出来なかったわ! でも今回だけは何かをしてやるよの! そこで死んだのなら俺は劣名を遺すだろうの! いや、そんな後ろ向きな考えは死ぬ者に相応しくないやわ!
 死ぬんなら恐さだって払拭するものだろうよの! 俺はまだ生きたいんだわ! 恐怖が取り除けないなら生きてお叱りを受けよの!)
 結局一矢を報いるよりも先に生き恥を優先したパタ吉は鰭にぶつかり、そこで意識を飛ばした!












(ん? やわ? あれよの? 声がするよの? 俺が死んだにしてはどうして真鍋団長と真鍋先生よの、それにハルトマン先生に他の者の声が--)
 目を開けるとそこは成者の世界だった……彼は不思議な表情で生きている事を実感した!
「そうかの。生き恥を晒すのも議員の務めなんだわ。いいだろうよの。政治の世界に生きる者は都合良く生きないといけないよの」
 時間はどれくらい経ったかはっきりしないが、パタ吉にはわかる。そこは『ホエ人』にある代議士専用の客室である事を。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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