FC2ブログ

一兆年の夜 第四十三話 選ばれしは凡庸なり(三)

 十一月二十一日午後八時十五分二十八秒。
 場所はエピクロ海鬼ヶ島方面。
 成人体型縦八十、横三十、高さ五十にもなる木造旅客船は鬼ヶ島に向かってゆっくりと進む。
 看板で夜空を眺める生命は皆、客者ばかりではない。陸族院議員蘇我パタ吉は右看板にもたれ掛かりながら客者達と同様に夜空を眺める。
(この船の名前は『ホエ人』やわ。かつて旧国家神武領ラテス島に巣くう大樹型を倒した英雄の一名を称えるべく付けられた名よの。俺は英雄に憧れる気持ちはないやわ。出来るならば英雄を作れる環境を整えないといけないという思いはあるやわ。いや違うよの。
 この場合は英雄が気持ちよく働ける環境を整えるべきよの?)
 何考え事をするかな、蘇我パタ吉氏よん--齢三十九にして八の月と九日目になる蘇我狸族の老年がパタ吉に声をかける。
「あなたは海洋党の陸族院議員でアリスティッポス大陸アレテ出身の蘇我タヌ蔵先生ではないでしょの!」
「おやおやん、わしに声をかけられるのがそれほど珍しいと思う年頃かね、パタ吉氏ん」
「そりゃそうでしょうやわ。第三党である海洋党の政調会長であられるのですよの、先生はや! 滅多なことでは声をかけられる機会は少ないよの!」
「そこまで謙遜なさらなくともん。さて、挨拶はここまでにしようん。
 わしが君に声をかけたのには訳がある。まずは答えて貰おうかん?」
(引き入れる為よの? それとも蘇我大陸出身の同胞として思い出話を持ちかける為やわ? 他には党そのものを吸収させる為やわ?)
 タヌ蔵が何故自分に声をかけたのかを考えながら察するパタ吉。どれも後ろ向きな考えであった。それに気付いたのか口に出す言葉は--
「『流れ星に気を付けろ』でしょうかの?」
 見当違いじゃん--狸族なのに余計に目の隈が広がる程の表情を晒すタヌ蔵。
「じゃあ『船酔いになってないか』ということでしょうかの?」
「それも違う! そもそも君は船旅に慣れた方だろうん! ってそうゆう事じゃなくわしが言いたいのは他にある!
 それは『どうやって議席数を増やす』のじゃと聞きに声をかけたんじゃん!」
 それですかの--そこまで鋭くない答えに溜息を吐くパタ吉。
「後三の月もすれば陸族院総選挙が始まる! この一戦で九議席以上確保しないと党として認められず解散する以外にないのじゃぞん! これは百の年より前から連綿と受け継がれる党制度なのじゃぞ。前回の選挙で十を下回りながらそれでも力道党として活動出来たのは党制度における五の年まで党を名乗る事が許された救済措置があるお陰じゃん!
 けれども今回はもう救済は働かずん、下回れば即解党し、無所属扱いとなるぞん!」
 党制度に於いて少し説明をするならば国会で陸族院と空族院併せて十議席以上に成れば正式に党認定を受ける事になる。ところが、それを下回る場合は党として認められず諸派(または無所属)となり、国会の場に於いて党として認定されない。なお一度党として認定された政党が一度の選挙で十議席を下回っても解散がある間で救済措置として党を名乗る事を許可される。それも次の選挙で十議席を上回るまでの話。一度十議席を下回った党がもう一度十議席を上回って再度下回る事があれば救済措置は認められず自動的に解党される。
 なお解党された党は同じ名前で党を再結成する事は許可されず、紛らわしい名称も認められない形となる。理由は党の主張がねじ曲げられるのを防ぐ為以外にもあった。
(名称は使い回せば重要さが落ちてゆくよの。党制度は今でも議論される制度やわ。
 けれども党制度にもやっていいことが他にもある。それが俺達力道党が今やろうとしている他党への選挙協力よの。今は二名だけでなく付き者にも口外しないようにしてあるがの、どこまで隠し通せるかやわ?)
「また考え事かん? まさかわしら他党に延命措置を頼もうとしているのではないじゃろうな?」
 ま、まさかよの--思わず冷や汗を顔中に出すパタ吉。
「まだまだ青いのん。政治に携わる者は常に無表情が……そんな事ん言ってるん間にんできなくんなってん申しわけんないん!」
「恐怖口調になったわ! ま、まさか--」
 パタ吉が振り返る先には恐怖が目の前に落下--波を起こしながら、船に襲いかかる!
「えっと先生方! 急いで私の方に付いて下さい! 波は一瞬で生命を流しますん!」
 あ、ああわ--パタ吉とタヌ蔵はエピクロ栗鼠族の船夫の言葉に従って退避する!
 波は甲板を襲い、大きく揺らす! 幸い横転する事なく横に大きな揺れ幅をもたらすだけで済んだ。だが、これによって海に投げ出された生命が十五名--その内の三名は海の底に沈んだ!
 全身塩水塗れになりながらも海に投げ出される生命を見てここを痛めるパタ吉。
「全く船旅に於いて海神様は荒ぶる……と言いたいがこの一件は神様のせいではない!」
 どうし、て--パタ吉が振り向く先には波を発生させた落下物跡から得体の知れない大王烏賊族のような巨大な剥き出しが船に迫ってくる!
「あ、あ、あわすぁ、ああわ! あれは、は、銀河、連合よの!」
 蘇我パタ吉が力道党に入る切っ掛けとなったモノとは異なる。それでも彼に力を付ける意味を教えた存在--銀河連合--は甲板にいる者達全てに恐怖を湧き起こす!
(しかも大きいよの! 議員である俺がここにいる者達と共に戦えるのかわ!)

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR