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一兆年の夜 第四十三話 選ばれしは凡庸なり(二)

 午後六時五十五分六秒。
 場所は赤兄県支部三階党首部屋。
 パタ吉は現陸族院議員の真鍋べア太と現空族院議員のハルフェン・ハルトマンを招集。
「偶然にも二名が北蘇我大陸に居て良かったよの。別の大陸だったら短くて二の日はかかるからどうしようかと思ったよの」
 ボスヨオ、用件を言っテエ下さい--齢三十四にして三日目になるテレス熊族の中年は前左足の人差し指と中指で顎髭を弄りながら招集した理由を尋ねる。
「真鍋先生やハルトマン先生を呼んだ理由は短刀を直に入れるように宣言するやわ! 近々開発党と選挙協力を申し出るつもりやわ!」
 何だってえ--叫び声が最も大きいのは齢三十七にして四の月になったばかりのエピクロ隼族の老年ハルフェンだ。
「本気カア! いくら何でも後がなさ過ぎるゾオ!」
「古参政党と呼ばれし力道党もここまで落ちぶれてえ。まさか他党にお願いしなければならない程にまでえ」
「別に党の為ではないやわ。これは全生命が危機感に目覚める為よの、平和に慣れないようにする為の足及び翼やわ! それがちょうど力道党の延命措置に繋がったやわ!」
「開発党がそんなお願いを聞き入れマアスか? あいつらは科学に信念を込めタア連中だ! 断られるに決マアってる!」
 こちらだって軍事力に信念を込めた党やわ--力強くパタ吉は意見を通そうとする!
「まさか信念を貫く部分を狙って協力関係を築こうとするでえ? 商いにおける契約がいくら政治の世界で通じるとは言ええ、概念を持ち込んでも引き受ける可能性はごく僅かでろう、党首殿でえ」
「ごく僅かでもやらないよりやる方を優先するよの。やらなければ可能性は零やわ。わかるよの?」
 二名だけでなく言った本者ですら分の圧倒的不利な賭け--概念による取引は曖昧故に利益に成り得ない。
 それでもやる価値は十分にあるとパタ吉は強く繰り返し主張し続ける!
「--数学の世界だろうと科学の世界だろうとどこの世界だろうとの、先駆者は必ず報われることは少ないやわ! 後に成って報われたりやわ、遅すぎた日に報われたりとどこまでも現実は厳しいよの!
 けれども先駆者が居たからこそ今の我々が居るやわ! 百の年以上前の先駆者が居たからこそ今の新天神武があるよの! 今の力道党があるよの! ならば我々は選挙協力の先駆者に成ろうやわ! 例えなんて言わないやわ! 必ず力道党……いや全生命を生き残らせる道を作るよの!」
 『力なき国に未来はない』という文字を背に受け、パタ吉は二名を説き伏せてゆく!
「若さは違うでえ。わしも党首殿くらいの若さがあればでえ」
「ワシモオ同じ意見だ。わしが議員になった年はもう三十日か近付く頃だったナア」
「被選挙権がもう少し早い時期に二十五以上からになってたら真鍋先生も早くから父上の後を継げたのにやわ」
「協力……する前に開発党の議員の平均年齢はいくつくらいでろう?」
 パタ吉は慌てて開発等に関する書類を探し回る! それが完了するのは二十七の分が経ってからだった。
 陸族院は合計二百五十六名。空族院は合計百二十八名。諸派になるのは十名を切った辺りから。開発党は陸族院に六名。空族院の四名。合計十名達する為、諸派に当たらない。
 重要なのは開発党党首カマクラノカモノハナを除いて議員九名の年齢は三十八から三十。平均年齢は党首を入れると四捨五入して三十五になる。
「ボスの資料を拝見すると年寄りを除けば平均三十ジャアねえか! 若すぎるゾオ、彼等は!」
「聞き入れるには若すぎるでえ。選挙協力してくれるかでえ?」
「例えよの、もしもよの、万が一も考えるなやわ! カマクラノ先生ならよの、カマクラノ先生ならやわ聞いてくれるやわ!」
「もオウ、何も言ワアない! 信じるゾオ、先生イ!」
「では開発党党首といつ会談するのですけえ?」
「一の月より後に緊急招集がかけられるやわ! その時に開発党の面々と目を合わすよの! その時に我々三名で開発党の面々と話し合おうやわ!」
 新天神武では与党は必ず首都ボルティーニに滞在しなければならない。しかし、野党は重要法案や緊急招集といった緊急を要する以外は各地区で選挙活動以外の調査や情報収集に当たらなければならない。与党が出来ない仕事を野党が務める。そうする事で国民の声を政治に反映する機構が確立する。
(弱点は与党に圧倒的な不利をもたらしよの、政治空白が出来る可能性が高いやわ。別に政権を握るのは三の次やわ。
 一に全生命をよの、二に力の強化やわ、そして三にようやく政権交代やわ。これを忘れた党は長続きしないやわ。かつて政党制度発案者にして自由党初代党首カゲヤマノスサナミキは『政権はまず後回し。重要なのは全生命の為に命を懸けられるかどうかだ。力も大事だが、力だけでは生命の為にならない。まずは全生命を守る為に命を懸けよ』と人族訛りで訳された言葉こそ新天神武の方向性やわ!
 そう考えると力道党がこんなに落ちぶれたのも納得がいくよの。だからといって方向性を今更変えられはしないやわ! これは先代の党首達の思いが詰まった党よの! そう易々と変えては力道党は例え存続しても死んだも同然よの! まだ理念も方向性もぶれてはいないやわ!)
 三名は二階にある会議室に入り、明日から首都ボルティーニへ向かう為の準備を始める。ボルティーニ着くまで最低九日はかかる距離。その為、それまでに食費から旅費までの計算及び書類作成代と調査報告書などを書き上げなければならなかった!
 それが完了したのは明くる日の午前十時。出発は一日ずれる形となった。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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