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一兆年の夜 第五話 恐怖心と怒り(六)

 西地区で二番目に大きな建物。特徴となる部分は天辺が半円体であること。左右に隣接するは対称的な三角錐。
 ストルムはこの建物を眺める度にこう思う。
(いつか俺達もこんな建物を造ろうか? 無理であろう!
 何せ俺達がいくつもの先祖を遡ろうと既に先祖達の前にあろうから。
 その様はまるで神様そのようだ!
 って何訳分かるまい考えるか! 恥ずべきだろうて!)
 彼は今思ったことを誤魔化すように建物の中に入っていった。

 午後七時零分二秒秒。
 1階の左館にある中央室。その部屋には合計四百八十名分の椅子がある。
 そして中断の席に立つ者が点呼を開始した。
「ほほうん、これより今年度百七十四の回、上空配達夜の会を開会するうん!」
 齢三十九にして五の月と十日目になるエウクふくろう族の老年による貫禄ある点呼であった。
 そこで話し合われた内容は今日の夜における天気情報。後は空難事故に対する注意の呼びかけ。延着、届け間違い、手紙紛失、破損零目標の徹底は当たり前だ。
 ただし、最近空難事故を騒がせるとあるモノの話になると部屋中の空気は一変。辺りは恐怖と案じない空気で充満する。勿論この話を聞いたストルムも例外ではなかった。
(あれらの件になると俺は居ても立ってもおられん! それだけは駄目だろう!
 俺は今日ラテス島配達を任し始まりしばかりだ! こんなことではたちまち空難事故どころの騒ぎではなかろう! 俺には六名の雛鳥たちがいよう! あいつらには一人前の鳥にならなくて死んでいきし者達に申し訳が着かなかろう!
 俺は絶対あいつらが鳥になれないまま死んでたまろうか!)
 彼は自分の中にある赤いモノを押さえつけるために毎日ずっとこんな考えを巡らして過ごしてきた。
 彼がそうこう思う内に点呼は終わった。
(では行こうな。と言っても出発まで三の時はあろう。今の内に届けるべき手紙はどれだけあるか調ぶるか。ついでにラテス島まで何の時かかろうかも、それからラテス島に関する地図もよく見ずして延着しようものなら神様どころかお客様に面を上げきったままの状態になろうから。
 俺に関する心配はある程度出来よう。問題は雛鳥達の方!
 頭がでかすぎるスラ貴は口だけになりがちだ。かと言うるが筋トレばかりのフッケンでも迷い道に嵌りかねん。それに遅刻癖のデュー雄はちゃんと時間通り間に合うか? お喋りな孫諾は口をよく滑るから心配になるが、さすがに口数の少なすぎたあいつ……えっとシュラッテーではかえってお客様が気付いてくれないという可哀想なことになろう。後は大陸藤原出身のカエ彦だな。まああれは真面目すぎるのが難点であろう。俺とよく似る。けれども俺に似るべきじゃないよ。)
 こんな事を思う内に彼は自分が部下を心底可愛がっていることに気付いた。
(愛着を持とうものは何も親子だけの関係ではないな。俺は部下を--雛鳥たちを心の底から愛そう!
 だからこそ俺はあいつらを鳥にしなければならん!)
 ストルムはこの時、気付かなかった。その想いがやがて自らの運命を決定づけることになろうとは。
 運命とは過去も現在も未来も真っ暗でしかない。光へと向かう時も、闇へ向かう時も

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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