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一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今(眠)

 ICイマジナリーセンチュリー百九年一月十九日午後三時一分七秒。

 場所は新天神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同七の間。
 退陣を表明した天同七は最後の案である『三国会談案』を満場一致で可決し、今
日に至る。
 『三国会談案』が成立した年は七が『新天神武』初代最高官に就任して八の年の
最後の月。『古式神武』二代目最高官林原コブ八の了承、『真正神武』二代目最高
官天同美世の了承の他には八の年までに積み重ねてきた政策がようやく功を奏し
た事が背景にあって満場一致の可決に至った。
 それから二の月が経ち、会談場所が発案者の国の首都で、なおかつ三国にとって
出発点となる神武聖堂に決定した。会談内容は政治、経済のみならずあらゆる分野
での話し合いであり、いかにして自らの国益とするかにかかる。
 なお会談に参加者は三名。『新天神武』から発案者にして三国分領宣言をした元
最高官天同七。齢五十にして一の月と十日目になる仙者。顔立ちは三十代終盤に
見紛われる程。
 『古式神武』からは象徴天同恵弥。齢三十にして四の月と二十六日目になる仙者。
現在は第一子(ただし、雄の子ではあるが仙者に非ず)が産まれ、近々後継者に育
ててゆく予定。
 『真正神武』からは現最高官天同美世。齢三十二にして六の月と一日目になる仙
者。輝星の遺児の養母となり、赤子が生者を迎えるまで最高官を務める予定。
 彼等は昼食を済まし、これから先の事について話し合う。
「--望遠刀に代わる飛び道具は開発された。だが、大きすぎる故に持ち運びは不
便だ」
「火薬弾って言うんだ。それならば銀河連合数体を倒すのに最適かも?」
「じゃがまた穢れを深めるんじゃな。わしらは一体いつまで穢れれば気が済むかわ
からんのう?」
「永遠でしょう……でも穢れから逃げても奴等は必ず私達を傷つける! 私は例え
穢れを増大させたとしても銀河連合全てを倒す以外に全生命が生き残る道は無い!
例え彼等が私達の対抗策を講じたとしても!」
「全てを倒せる時期はいつなの? 九星の頃なの? それともその後の世代なの?」
「わしの見える先は『空が落ちる』までじゃ。それ以降が全く見えん」
「私も同様です」
「あたくしもよ」
「誰かを傷つけるような物ばかり作っても仕方ないじゃろ。わしらが本来造るべきは
誰かを幸せにする物じゃ。何かないかの?」
「あたくしの国なんですけど……『音楽』は聞いたことあります?」
「『音楽』? まさか我等の先祖生子の歌じゃないでしょうね?」
「言い伝えじゃあ、あんな物は歌とはとても思えない恥ずかしい物じゃ。
 話を戻して、『音楽』とは歌とどうゆう違いがあるのじゃ?」
「発明者はわかりませんけど、噂じゃあ数学者の集団が建物の木板や瓦から導き
出した音を元に娯楽にしたと聞きますが、本当でしょうか?
 とにかくそんな噂もあって現在『音楽』は『真正神武』で流行してます。それを国益
上一部ですが、二国に送って宜しいでしょうか?」
「いいですね。一つに集中しすぎる職者集団の励みになればこれほど高ぶることも
ないでしょう!」
「同感じゃ。是非とも『音楽』とやらを聞きたいぞ!」
「交渉成立するには恵弥と叔父様が提供する誰かを幸せにする物を聞きたいの」
「私の国は技術集団の類だよ。だったら引退軍者に一名……健康法を確立した者を
知ってる。そいつは現在、同種族の者を弟子にとり、様々な健康法を開発中だ。彼
に説得して弟子の数名を派遣するのもいいかも」
「にしてどんな健康法なの?」
「強いて言うならば『体操』。老若男女の誰もが出来る簡単な体操なんだよ。詳しくは
発案者に聞いてみるといい」
「その発案者の事を知りたいんじゃが」
「それは国益に繋がる以上は言えない。けれども『体操』は最適な健康法だ。幸せに
するには十分じゃないかな?」
「そうね。健康ってのは大事よね。あに様がもっと早くそれを知っていれば--」
「過ぎた事じゃ。わしらは彼等の死を胸に前に進んでゆくのじゃ。
 んでわしからも提供すべき者を用意しないとの。まあわしが発案しても議会に通さ
なくてはならんからのう。引退した者の言う事を信じてくれるかの?」
「いいから早く言って下さい、おじさん!」
「それじゃあこれを二名に渡そう」
 七は大事にしまっていた日記帳の写本を渡す。
「写本、ってことは初めからあげるつもりだったの?」
「そうじゃ。これなら議会を通すという面倒な事をしなくて済む。それをお前達の国で
出すのじゃ。まあ売れるかは購入者と訳者次第じゃ」
「まだ書くんじゃないでしょうか? 今は出すのを控えた方が--」
「もうわしには必要ない。わしの物語はここで終わるのじゃから」
『わしの物語は終わる』……その会談を機に天同七は政治の舞台から身を退き、行
方を眩ます。

 それから十五の歳月が過ぎる……。
 舞台は復活した氷の大地アリスティッポスに移る。
 降り立つのは齢四十九にして三の月と二十四日目になる武内人族の老婆がある
者を探しにやってきた。
(ここにいるのよ。あの方が)
 彼女は見届けるという信念を胸にここに辿り着く--ここに必ずあの雄は居ると!
(寒い。復活しても寒い。全くどこまであの方は私を困らせば気が済む? 老体に重
荷をかけさせて!)
 そう言いながらも老婆は足を踏み出す!

 アリスティッポスに降りたって一の月が経つ。
 老婆は中心点に暮らす者が居る事を聞きつけ、案内者である齢三十九にして十五
日目になる仁徳人族の老年。運命学の創始者にして現在は大陸移動研究の先駆
者だ。
「--大陸が移動していると本気で思うの?」
「そうさ。だってここは星だぞ。星がいつまでも同じ形でいられるはずがないだろうに。
だったら答えは簡単さ。『度重なる地震で少しずつ移動してる』とね」
「根拠のないことでよく威張れるわね。バルケミンの者はあなたみたいなので一杯か
しら?」
「礼を失する見方だな。まあ半分は合ってると言える」
「半分じゃあ正解に程遠いわ」
「婆さんは数学者じゃないんだから完璧を追い求める必要はないぞ」
「あなたに婆さん呼ばわりされる覚えはありません。とにかくあなたは黙って中心点にある小屋
に案内しなさい」
 へいへい--年に見合わず軽快な喋りをする老年。
(本当にアリスティッポス大陸は銀河連合に奪われたのか不思議なくらいに復活して
るのね。もはや全ては過去に帰結してゆくわ。体験した全てがもう体験出来なくなる
ように。それは悲しいことのようね。
 それでも私はあの方を見届けることだけは過去に帰結したくない。せめて余生だけ
でもあの方と--)
「着いたぞ、モーラという者よ」
 バルケミンの者はモーラと呼ばれる老婆を案内し終えると無言の挨拶で別れを告
げて、どこかへ去ってゆく。
 モーラは小屋を見る--それは小屋と言うよりも氷で出来た建物。
(氷で作ったら中が凍えるでしょう! 何を考えて--)
 無断で中に入ってゆくモーラ。すると中は思っていたよりも暖かな空気に包まれた。
「これ……は?」
「どうじゃ? わしの墓としては立派に出来てるじゃろう?」
 氷の小屋の住者--齢六十五になるいつ死んでも不思議ではない老年。
「やっと会えました……七様」
「ここを気付かれるとはのう。どうしてわかった?」
「わかりますわ。私はあなたを見届ける側の者ですのよ。あなたが政治の舞台から
去って十五の年。私はあなたの代わりに『新天神武』に全てを賭けました!
 任期は四の年。再選は一回まで。後は陸族院と空族院の創設。果ては三権分立。
行政府、議会府、それに軍府の創設にどれほど私の人生は費やされたかわかりま
すか!」
 わからんのう--七ははっきり答えた。
「でも、私も一の年より前に政治から身を退きました。もうあなたの代わりを務める必
要はなくなりました。責任をとって下さいね、七様」
「わしは君に頼んだ覚えはない……なんて言い訳は通じないの。
 どうじゃ? このままここで暮らすかの?」
 ええ、喜んで--モーラは眠りに就く事を受け容れた……。






『わしの物語は氷の大地で終える。その話は本当なのかそうでないのか?
                                   真実とは物語よりも奇なり』


 ICイマジナリーセンチュリー百十二年九月百二十日午後十時零分零秒。

 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今 完

 第四十三話 選ばれしは凡庸なり に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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