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一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今(五)

『生命は一体どうして生きているのか? わしには科学的な事はさっぱりわからな
い。わしは寧ろどうして肉体に魂が入り込むのかについて興味がある。アリスティッ
ポス大陸で氷型銀河連合との戦いからじゃ。本来は居るはずのない者にまで魂と
は畏れ入った。普通の生命ならばあれは万物の神がどうとかで済む話じゃが、わし
は少し異なる見解じゃ。そもそも魂とはどうしてあるのか? 運命に従う為なのか?
それとも運命に立ち向かう為なのか? 勝手すぎるのう。
 そう言えばアリスティッポス大陸について話さねばのう。現在もまだ生命が住むに
は不十分じゃ。このまま二十の年になっても住めないのでは困る。確かにあの環境
は普通に考えても生命にとっては砂漠以上の厳しさじゃ。それでも住める範囲はあ
るはずじゃ。せめてその範囲だけでも生命が暮らせれば。贅沢な願いじゃな。
                        冬の時代はまだ終わらない今日この頃じゃ』

 十月二十日午後十時八分十五秒。
 場所は東藤原海洋。現在は海底火山を通過した辺り。
 天気は雨が降り始めた頃。
 美世様、どうか中へ--声をかけるのは齢二十八にして三十日目になるロディコチーター族の青年にして護衛兼偵察係のチーティス・バーバリッタは美世を気遣って比較的遅い速さで呼ぶ。
「後数分でそちらに行く。それまでにチーティスは寝て」
 でも--それでも美世を中に入れようと足を踏み出すチーティス。
「やめな。美世様は青くなりたい時期なんだ。あんなことが--」
 止めてくれない、マルメロ--感情的になってマルメロの方を向く美世。
「済みません。俺は目上には礼儀が取れない性分なんで。おい、チーティスだっけ?」
 呼び捨てするな--年下にタメ口を吐かれてムキになるチーティス。
「美世様の言う通り早く寝るんだ。これから俺が中へ入れるように説得してみせる」
 出来るのか、マルメロ--確認をとるチーティス。
「出来る。俺を誰だと思う……運命学の創始者だぞ」
 ま、まあそれならいいか--根拠はないが説得力のある言葉を出されたら去るしかないと考えたチーティスはそのまま自室へと戻ってゆく。
「また後ろ向きな話?」
「異なる。今度はどうして船に乗ってまで伝えようとする? 使者を送って伝えれば早いのに」
「あたくしの流儀よ。あね様には口で伝えないと真実と思ってくれない」
「手紙で伝える使者ばかりじゃないのに?」
「だから言ってるじゃないの。あたくしの流儀だって!」
 ふうん--心の内を探ろうとするマルメロ。
「雄が雌の心を読むなんて無理よ。あなたは雌の心が何なのか解ってないのよ」
「そっちを探ってない。俺が探ってるのは美世様がこれからどのような道を進むかというのを探ってる」
「あなたが運命学の創始者だから?」
「済まない、それが俺の進むべき道だからだ!」
「はあ、雌の心よりも先にあたくしは雄の心を知るべきだった。
 どうして雄は必要なさそうな知識を追究するのかしら?」
 趣味だからさ--これまた根拠のない凄みある説得力を持つ言葉を出すマルメロ!
「趣味……ねえ」

 十月二十一日午前六時四分二秒。
 場所は大陸藤原鎌足地方新仲麻呂町第二西地区。かつては天同星季の父星央と叔父である八弥が仲間と共に銀河連合から取り返し、十数年の内に復興させた町。かつての名前は恵美町。
 齢三十七にして三の月と十六日目になる天同星季は父星央の思いが詰まる町に滞在していた--三の日より前に美世が出した手紙を読みながら。

『--あに様の回復ぶりは凄いよ。今までひ弱だったことが本当でないようにあちこ
ち動き回るんだ。あね様も戻ってくる時元気なあに様を見て下さい。きっとあに様は
喜びのあまりあね様に飛びつくかも知れない。その時、あに様の赤子を連れてこら
れたらあに様に一度でもいいから抱かせて。
 その時にね。じゃあ六影の都で待ってるから。
                                              美世より』

「あの子がそんなに回復するなんて神様は大変な褒美を与えて下さったのね」
「ウンウン、ヨロコバシイコトハイイコトデスワ!」
 じゃあ早速、返事を書かないと--キュー次郎に運んで貰う手紙を書く用意をする星季。
「ううう、あああああ!」
「この、声はまさか清花! まだ九の月に達してないのに!」
 悲鳴を聞いた星季は急いで「乳母を連れてきて、早く」と臨兵キュー次郎に命令した!
(急いで清花の心を和らげないと……その前に--)
「カナ子居るの、返事して!」
「ハッ、星季様ですか、っと。フッ、どんな用件、って?」
「相変らず頭に来る訛りね。そんなことよりも緊急の用件よ、緊急の!
 大至急十名以上の軍者をここに集合させて!」
「フッ、どうしてでしょう、って?」
「決まってるわ! あたしの予想ではいつ銀河連合が来るかわからないもの。あたしが庇わないように軍者に守りを任せるの!」
「ヘッ、つまり……輝星様にお会いするまで死なない為の布石を造るの、って?」
 そう--星季は二の日より前から認めたくない別れを見続ける。
 内容は……天同輝星が夜中に眠るようにこの世を去ってゆくという夢。後を追わない為に彼女は自分が万が一に庇わないように軍者に警護して貰おうと考えた!
(あんな夢なんて真実じゃない。あの手紙がその証拠よ! 輝星は今も元気に活動してるのよ! 本来あるべき仙者の強さを身につけて!
 だから夢が真実でないのを証明する為にあたしは生きるのよ!)

 それから一の時と三の分が経過。合計四十二名が建物の外から清花が必死に戦う部屋の外まで四六時中休まず警戒する!
「ホッ、これなら安心ね、星季様」
「寧ろあたしが驚いてしまうくらいだわ! やっぱり本物の軍者は訳が違うわ」
「エ、イママデミテナカッタンデスカ?」
 腰を砕けてるのよ、キュー次郎--星季は安心させる為にそのような事を言っても見せる。
(自分の安心。これで--)
『姉ちゃん……本当に守るべきはそこじゃ、ない』
「幻聴、かしら?」
「ヘッ、どうしたのです、星季様?」
 聞こえてないの--星季以外の者はそんな声が聞こえるはずもなかった。
『この、ままじゃ、さや、か、が!』
「まただわ! これは幻聴じゃないわ!」
「はい? 星季様の仰ろうとされることがさっぱり--」
「あたしにしか聞こえない?」
 星季は自分がおかしくなったのではないかと感じ始めるが--
『だからさ、やかを、清花を助けてく、れ、姉ちゃん!』
(聞こえる。そう、そうよね! あたしが助けなくて……誰が助ける、の?
 あなたの思いの者を今--)
 天同星季もまた開いてしまった--想念へと導く扉を!

『ん? あれ? あたしは何をしてるのだろう?』
 確かに星季は藤原清花が苦しむ部屋に入った! 気がつくと彼女は大勢の軍者が何かを囲む姿を見ていた。
『何をしてるの? あなた達は大勢で清花を囲むのを……清花?』
 清花は星季のすぐ側で苦しんでいた--目を瞑ってはいるものの出てくる涙は苦しみを意味するものだけではなかった!
『何の涙? 悲しい? 子供が産まれるのよ。あなたと輝星の子供が産まれてくるのよ。そ、そんな涙なんて……あれ?』
 星季の体は宙に浮かぶ--部屋中にいる全てを見渡すように!
『銀河、連合は死んだの? 他には……え?』
 ようやく現実に引き戻されてゆく--彼女が見上げるのは木で出来た天井。

「遅かった、よ。ねえ、腰砕けた態度は止めて!」
「美世様。終わった命を呼び戻すのは後ろ向きになるのと同じだ。そっとするんだ」
「ねえ、あに様の子供が産声を上げてるのよ。清花ちゃんが笑顔で子供を抱いてるのよ。目を開けて」
「いや、確かに開いていた。でも、誰かが眠らせる為に閉じさせたんだよ。その意味を--」
「マルメロは黙ってて! あたくしは、あたくしは!」
「もう終わったんだ! いい加減に認めろ! あなたの姉も、あなたの兄ももう--」
「言わないでよ、マルメロ! あね様も、あに様も--」
死んだんだよ! 運命ってのは誰にでも等しく突きつける刃だ! いくら逃れようと無理なんだ! 死を宣告された者は特に!」
 そんなの認めないわ--天同美世は認めてしまった!
「だったら抗うのか? 拘るのか? それは死んでいった者に失礼だ! 彼等が何の為に死んだのかを考えれば自ずと!」
「ええ、あたくしは抗う……けれども拘ることはしない! 折角喜ばしい事が目の前にあるのに!
 喜ばないといけない。だって近くにあね様……とあに様がほら!」
 マルメロには輝星が居る事はわからない。けれども一瞬だが美世には輝星が見えた!
「心霊現象もまた己自身の運命を決める……のかな?
 なあご先祖様!」
 マルメロには先祖代々から受け継がれるモノがあった……だが、それはこの宇宙では決して出会わない存在。
「マルメロ、まさかと思うけど--」
「美世様にそれを感じるかと思ったが……見当が外れたな」
「美、世様? どう、かこの子を--」
「まさか清花ちゃん! この子は雄じゃないの?」
「雄です……そして紛れもない--」
 美世はこの後、真正神武の正統後継者を首都に連れて行く……二名の意志を継いで!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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