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一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今(四)

『シャーク傭兵団は現在海を治める武闘派集団じゃ。わしらが陸を治める。海は泳
げる種族が限られておるからのう。何でこんな話をするか? それは近年シャーク
傭兵団が海に潜む銀河連合を倒し続けたお陰で束の間の平和が訪れようとしてる
のじゃ。これはまだ未確認の情報故、引き続き調査を擁するものじゃ。
 仮に本当だとしたらそれは大変喜ばしい事よのう。わしら全生命が夢を見ていた
平和が訪れるなんぞ。いや、まだ安心出来ないのう。わしの書類は今も混沌として
おる。仕事者にも平和が訪れて欲しいものじゃ。けれどもそれは叶わないものじゃ。
少しでも気を抜けばあちこちに穴だらけの住宅及び検問所が出来てしまう。それだ
けは避けなくてはいかん。生命一名一名の暮らしを良くしなくて何が最高政務官で
あろうか。生活水準の向上が仮にも神々の逆鱗に触れてもやらねば意味は成さな
い。これもまた銀河連合を倒し続ける行為そのモノとも思えるのう。
 例え銀河連合全てを倒して本当の平和が訪れるとしたらどれほどの理想郷と為る
のか? ひょっとしたら平和を求める事そのものが烏滸がましい想いかも知れん。
原初に還り、文明・文化をかなぐり捨てる時代に逆戻りしてゆくかも知れんのう。そ
れが良い時代は果たして訪れようか? わしらは恵まれすぎたからのう。そう言え
ば輝星は恵まれた環境で健康になっているかの?
       あやつの心身が回復している事を祈るそんな就任から八年目の朝じゃ』

 十月十一日午前九時零分六秒。
 場所は真正神武大陸藤原鎌足地方新仲麻呂町第二西地区。その中で最も大きい一階建て木造建築。
 植木鉢に囲まれた庭部屋に齢二十三にして五の月と五日目になる大陸藤原人族の女性はまん丸にお腹を出し、年に似合わず植木鉢の手入れをしていた。
「遅いですね。二の日より前に妾に伝えられたというのに輝星様はどうして遅いのかな、ねえカナ子や」
 彼女の声に応えるように齢三十にして八の月と九日目になる大陸藤原金糸雀族の熟女にして令嬢の付き者藤原カナ子が令嬢が手入れする植木鉢の頂上に乗っかる。
「ハッ、どうせ姉君に断られてるんでしょう、っさ!」
「おかしいですわね。星季様はこと恋愛では妾の両親と二の時かけて話し合われて互いの両方を得てますわ。どうしてでしょう?」
「ヘッ、まあそんなのは気にしない、っの! フッ、とにかくお嬢は第一子が出来ますから植木鉢の手入れしながらゆっくりしましょう、っよ」
「この子は天同で育てるの? それとも我が藤原一族に入れるかしら?」
 カナ子は令嬢の言葉を聞いて彼女の周りを飛びながらこう言う。
「フッ、雌が産まれるとしたら藤原で育てる、っさ。ヒッ、でも雄でなおかつ仙者であるなら……天同家に引き渡します、っし!」
「何だかお腹の子は仙者のような気がする、かな?」
「ヒッ、それは我が藤原家が絶える時です、っだ! デッ、そんなことがあっても雌だったら私達藤原家は安泰、っそ!」
 そんなに私を嫁がせたくないの、カナ子は--現在この家に住むのは令嬢と付き者のカナ子のみ。
「ウッ、両親の願いです、っし」
「父上と母上の……願い」
 空を見上げる令嬢--時がいくら遡ろうとも高貴な者達の拘りまで捨てる事は叶わない。

 午前十時十八分十五秒。
 場所は真正神武首都六影中央地区真正神武聖堂。
 『三国分領宣言』以降『古式神武』と共に建造開始した。以来八の年もかけて造り続けるが、完成の日を見ない。
 そんな未完成の建物で唯一住める空間が三つあり、どれも天同星央の三名にもなる遺児が暮らす。その中で第二子輝星の間で齢三十三にして二の月と八日目になる神武人族の中年は今にも命を散らそうといていた。
「無念……僕がこんな、こんな身体で、なけれ、ば!」
「あに様! 無理して喋ってはいけない! まだ、まだ生きられます! じ、自信を!」
 必死に説得するのは齢三十一にして五の月と二十一日目になる末っ子美世。病気に苦しむ輝星と看病する美世は共に仙者であった。
「姉ちゃんは? ど、うして姉ちゃんが、いない、の?」
「あね様は現在向かっておりますの! 新仲麻呂町に住む人族の令嬢清花様の所に!」
「清花、ちゃんの? ど、どうして--」
「あに様の代わりに産まれてくる赤子を見に!」
 輝星が新仲麻呂町の清花に会う理由--それは生まれてくる子供を見る為であった!
「ぐぐ、姉ちゃんに迷惑、かけられ、ん! 僕は、いか、ないと」
「無理しないで下さい、あに様! その身体では--」
 ぐううううう--無理して起き上がろうとした瞬間輝星の身に異変が起こった!
 左手で強く胸を押さえつけながら呼吸不全に陥る輝星!
「あに様! ど、どうしました、あに様……こうなれば!」
 美世は大声で聖堂付近にいる全ての者を呼んだ!
 どうかなされたんですか--チーター族の青年達を側まで寄せると「医者を呼んで」と命じた!
(一刻も早くあに様を助けないと! 助けないと!)
 彼女もまた輝星を助けるべく応急措置を行う!
(死なないで、死なないで! あね様いえみんなが悲しむ! あたくしが悲しむ!)
 遅れて申し訳ない--成人体型一とコンマ四もするほどの青肌の老年が輝星の下に駆けつける!
「あなたはダッジャール先生!」
「いか似模……自己紹介端後似する! 私端今すぐ輝星様……いえ患者乃容態尾触診する!」
 テネス鬼族の肌は他の鬼族と比べて滑らかで擦っても傷が付かない性質。故に鬼族の中で医者になる者が居ても不思議ではなかった--齢四十八にして七日目になる『六影一の医者』と呼ばれるギガンティック・ダッジャールは医学の道を歩んできた一族の申し子であった。
「どうです、先生!」
 静かにして下さい、美世様--上下を隔てず患者を平等に診るダッジャール。
「コラ、ジジイ! ミヨサマヘノクチノキキカタヲ--」
「いいのよ、臨兵キュー次郎さん。先生は医者の鏡なの! だから何があっても特別扱いせずにあに様を診てくれているのよ! そうだよね、先生?」
「全く美世様模困った方じゃ。私みたい奈平等主義者尾呼ぶ斗端! 優先順位牙比較的小さかった羅どうするつもりなの科?」
「それは考えられない。何故ならあに様の容態は命に関わる程なんですもの」
 彼女は誰よりも自分の兄を信じていた--だからこそ出せる言葉であった!
「……触診乃結果だ。緊急手術似入る!」
(緊急手術……そこまで深刻なの、あに様は!)
 それは医学関係者以外は全て天同輝星の間から追い出される程だった--美世は関係者故、入口で立ちつくす!
 手術はダッジャールの想定では三の時で済むはずだった。手術開始から三、四、五の時が経っても未だに終わる気配はなく、それどころか入口付近での出入りが激しくなるばかり!
(どうなってるの! こんなに時間をかけたらあに様の容態が!
 今すぐあに様を……あに様を!)
 そんなに心配なのか、輝星様のことを--どこからともなく声をかけるのは齢二十三にして二十三日目になる仁徳人族の青年にしてバルケミン出身者だ。
「あなたはマルメロ・バルケミン?」
「いかにも。俺は別に慰めもしないし、手術の行方をどうこう言えるたちじゃない。
 だが、これだけは言っておく」
 マルメロは運命学の創始者--美世にある事を告げた。
「それって何?」
「運命ってのは遅かれ早かれそう決まる。ここで仮に……だろうが待っているのは悲しみしかない。
 じゃあどうして引き延ばす?」
「決まってるわ。それが……それが--」
「勝手なことじゃないか。まあ俺が美世様を止める権限なんてない。俺は黙って手術の成功を祈るだけだ」
 勝手なのはそっちの方よ--マルメロをあまり喜ばしく思わない美世であった。
 マルメロが現れて一の時と十三の分より後、とうとう入口からダッジャールが姿を現す!
「先生! どうでしたか、あに様は!」
「……単刀直入似言おう。成功した!」
 やったああ--嬉しさのあまりダッジャールに抱きつく美世!
「た、ただし! 今後端お外似出歩く事端控えるよう似!」
「こりゃあ随分と勝手な医者だ--」
「あなたよりかはよっぽど有用です! 学者の方はこれを機に帰って下さい!」
 全く三十にも成ってまだお子ちゃまかよ--文句を言いつつマルメロは聖堂を後にしてゆく!
 美世は輝星の近くまで寄るが--
「腰砕けだ! 手術後乃患者似近付く乃端やめい、美世様!」
 そうだ、忘れていた--患者は手術する為に免疫機能を全て低下している為、少しでも健康で雑菌族に触れた者に触れるとたちまち容態が急変する為だ。
「うう、ど、うやら僕は、せいか、んしたんだ」
 ええ、そうです--マルメロの言葉を気にしつつも美世は一時の幸せを感じ合う。
(マルメロは当てずっぽうを言ってるのよ! こうしてあに様が元気になってるのにそんな後ろ向きな事を言ってあたくしを安心出来なくさせてどうしますの!)
 その後一の週より後、輝星の容態は少しづつ回復に向かってゆく……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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