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一兆年の夜 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今

 四月三日午後十時二分十二秒。
 場所は新天神武首都ボルティーニ中央地区中央官邸。三階最高政務官室。
 旧神武の頃から変わらない部屋で天同七は残業していた。
「三つに分かれても終わらすべき案件だけは三分割されない。寧ろ増加の一途を辿るのう、モーラ?」
 齢四十七にして一日目になる神武人族の長にして最高官就任六の年目に成る天同七の問いに対して齢三十一にして四の月と二十七日目になる武内人族のモーラは--
「自分が作った業を自分自身で得るのですよ。私は秘書としては一名分以上の働きしかしません」
 と冷たい様子。
「じゃが、新たに秘書を採用するにも予算が通らないのう。財務長官デュー・ジニンは働き盛りな上にけちでのう。いくら理屈を考えても中々首を縦に振らんのう」
「当たり前です。だけども税収を増やせば良いという問題でもありません。税はお金周りが盛んな時や安定した時に増やすから意味があるの」
「しかし、お金周りは良いと言えるか? マンドロン硬貨の価値は三分割した頃と質は変わらん。じゃが、国民が一向に豊かにならないぞ。出来れば質を少し落としてでも金回りを円滑にしたいものじゃ」
「ですが、金銀を集めるにも限度があります。だから金の純度を減らした硬貨を市中に流しますわ。ですが、国民の皆さんは商いをよく知っている為、すぐに物の価値が上がります。確かに物価上昇は豊かにはしてくれますが、行き過ぎれば物々交換の時代に逆戻りもします」
「行き過ぎればの話じゃろう。けれどもわしら目上の者だって節穴じゃない。特にあのデューはしっかり見極める事に関しては信頼出来るぞ」
(はあ、毎日こんな話ばかりだわ。一向に進展しない。全くどうして七様は発想の先を考えないのかしら?)
 仕方ないじゃろ--まるで心を読むかのように呟かれて「わわ」と大声を張り上げるモーラ!
(あるとすればこうして心を勝手に読んでくる所だわ!)
「それよりもモーラ。任期の件は了承取れたかの?」
「はあ、それが交通大臣近藤イノ兵衛と防衛大臣大山ニャン太、それに自然科学長官鈴木チョウ代の反対もあって会議を開くには至りません」
「五年でも首を横に振るのか! いや、一名は左回りに飛ぶんだったな。
 と、とにかく会議を開かない事にはいつまでもわしが最高官のままになってしまうぞ!」
「その方が良いでしょ? だって国の頂点が任期満了或は任期の途中ですぐ止めて国民が混乱するよりかは遙かに--」
「あのなあ、モーラ。わしが『新天神武』という名前にしたのは他二つの国と異なり、人族以外でも頂点に立って導けるようにする為なんじゃよ。何でも天同家だけで政治を進めちゃあ前に進まないぞ、これは!」
「拘りですのね。捨てちゃえば気楽になりますよ」
「捨ててどうにか成るならいっそ……待てよ! わしもまだまだボケは進行しちゃいないのう。
 早速会議を開くぞ、モーラ!」
「明日にして下さい! 今日は遅い上にやるべき仕事がまだこんな山を築いてますわよ!」
「じゃあ気合いを入れて終わらせよう、モーラ!」
 はあ、まだまだ長生きしますね--それでも七が気になるモーラだった!
(ああゆうことを言わなければこんな目に遭わなかったのに!)

 四月五日午前十一時五分十四秒。
 場所は中央官邸四階。四階は新天神武が誕生してから大急ぎで新設された階層。現在も工事は続けられているが、唯一出来上がった部屋がある。
 それは新たな会議室。立方体にして成人体型は三千に満たずなおかつ二千五百を超える。四階が未開発な為か、左側にある三つと七が座る席に向かって奥の三つの出入口が使用出来ない状態だ。
 今日は七の提案で会議を開く事になった--二の日より前にモーラの一言で思いついた七だったが、睡眠不足と熱の影響でずれ込んだ。
「--納得しますかね? ゥイ誇りを傷つけるということだってあると私は考えますが」
 齢二十九にして十の月になったばかりのテレス蟻族の青年にして財務大臣デュー・ジニンに同調するように齢三十八にして十八日目になるルケラオス象族にして生活安全大臣マモリネラオス・アダルネスも七の提案に難色を示す。
「軍者には軍者ぞう、官僚には官僚ぞう、そして国には国の誇りがあるぞう。今のところ我も賛同しかねおう」
「うーん、良い案だと思ったが一日ずれたのがいけなかったのかのう?」
「関係ないわ、七様」
「コラアア、モーラ殿オオ! 最高官殿に向かって『口の利き方を正せ』と何回私から言わせれば気が済ムム!」
 叱るのは齢三十六にして八の月と八日目になるゲネス猪族にして交通大臣近藤イノ兵衛。モーラとは犬と猿の仲だ。
「はあ、あなたも口の五月蠅さだけは正さないのね。全く飽きないことよ」
「モーラ殿オオ! もういっぺん--」
 止めなよス、見苦しいス--齢四十一にして十一の月になったばかりの蘇我蟷螂族にして教育長官蘇我カマ美は喧嘩を止める。
「わしの案は後回しになったとしてこれからどうするのじゃ? 任期の事でもお前達は全会一致をしてくれないからのう。三分の二以上の賛成でも納得出来ないじゃろう。どうする?」
 それ似つきまして端私科羅提案牙あります--齢十九になったばかりの若くして頭脳支援者となった神武鬼族の少年カゲヤマノスサナミキは左手を挙げた。
「何じゃ、スサナミキの小僧よ」
「政党制度尾作って端どうでしょう科?」
「政党? 何故そんなものを作るのじゃ?」
「より新たな政策尾取り入れる為です! このまま一つ乃集団出案尾出し合って模意味端為しません。なの出政党尾設ける事出各自競い合い、勝った政党牙政権尾握る斗いう政治似しましょう!」
 七を初め、この場にいる者達は良い案だと思った反面--
(経済の仕組みを政治にまで及ぼすのね。でも、それじゃあ政権を握る為に政党が産まれる事だって--)
「若造の言う事を聞いたわしが馬か鹿であったのッツ! おっとッツ、わしは鹿じゃったわッツ」
 齢四十五にして二十三日目になるエピクロ鹿族にして文化長官シカッザ・ムーシと同じ意見を出そうとする者が居た。
 あたしもそれに反対っよ、選挙目当てになっちゃうわ--齢三十二にして五日目になる鬼ヶ島兎族のイサミ・ドウワンは両耳を横に振りながら反対を表明する。
「困りました。実端七様牙出した案乃お陰出私端選挙制度似競争尾盛り込んだけど。確か似皆様乃仰る通りです。
 この案端選挙目当て乃政党牙産まれる可能性だってあります。それ牙政権尾握ったりした羅国民乃生活端良くなりません。ですが、良い案尾通す政党だって同時似産まれる乃です! 後ろ向き似考えたりしない出いい乃です! 競争端幸せ尾産む斗端限りません。どこ乃世界だって競争出割尾食らう者牙居て当然です!
 です牙、殻似閉じこもるだけ出端内向き似なるだけです! そんな理由出『新天神武』牙出来た乃です科! そうじゃないでしょ、皆さん!」
 確かに--七は呟きは一同を鎮めるのに効果が抜群だ。
(そうだわ! 七様の理念はそうゆうものだわ! 内向きとかそうゆうものは星季様、輝星様、美世様が治める『真正神武』と恵弥様が治める『古式神武』が貫いて往けばいいこと。
 けれども七様が治めておられる『新天神武』は異なるわ! 誰にでも機会があれば最高政務官になって生命を導く政策を行うこと! それが『新天神武』が進むべき道……茨に最も触れる道なの!)
「わしの出した案はいずれ時期が来ればお前達……いやお前達の意志を継ぐ者も含めて賛同する日が来よう。それまではわしが最高官で居る間に選挙制度の整備を進めねばのう。
 どうじゃ、スサナミキの案に賛同出来ない者は論を出したまえ」
 はい--手を挙げたのは右隣に座る最高政務官秘書モーラ。
「お前かの。他の大臣及び長官かと--」
「私で良くないの!」
 御免、モーラよ--七は両手を広げて苦笑いしながら謝る。
「ふう、じゃあ聞くけど選挙で七様に反対する政党が現われたとします。その政党が国民の高い支持を得たまま選挙に勝利して七様が最高官のまま政権を握るとどうやって運営してゆくのですか?」
「わしが座を降りた後になる。第一それまでの空白期間中に引き継ぎを進めるのが普通じゃ。国家神武の頃から引き継ぎを正しく行ってきたじゃろう、皆の者も!」
 確かに--訛りは異なれど納得する会議室にいる全ての大臣及び長官。
「空白ねえ。じゃあすぐには反対に回らないことでいいのかしら?」
「確かに引き継ぎは安定に最適じゃが、効率が宜しくない。けれどもいきなり角度を大きく変えた政策なんて国民及び官僚が混乱するだけじゃ!
 じゃからこそしばらくの間は最高官にとって意見の合わない者達が政権を握っても都合の宜しくないように引き継ぎ制度があるのじゃ。いいかの、モーラ」
 はいはい--目上の者に敬う事が出来ないモーラだが、七とのやりとりではこれが普通の返事だ。
「じゃあ採決を行うぞ。顔下に置かれてある白い紙を中央に寄せると賛成の意を表す。逆に自分の方に寄せれば反対の意じゃ」
 カゲヤマノスサナミキが出した案の結果は全員賛成で成立するが--
「わしの出した案も採決を行ったが、わしとモーラ、それに官房長官色葉七不思議以外は反対に回って不成立か! まだ早いんじゃのう」
「仕方ないわ。それに星季様と恵弥様が同意してくれるとも限らないんだから」
 拘りはそう簡単に捨てられんのか--七は右人差し指と親指で顎髭を弄った。
(拘り……私だって素直になりたいけどそうはいかないもの。だってこの性格は先祖代々培ってきた素直になれない遺伝子なんだよ。今更変えようにも年をとりすぎたわ!)
 『新天神武』の明日はアリスティッポスの現状と同じく吹雪の真っ直中であった……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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