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一兆年の夜 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々(七)

『あれから七の年が過ぎた。あの宣言から一の年までに多くの生命は迷い、悩み、
そして進んでいった。血の正当性を求めるならば--真正神武--へ国籍を置く生
命もおれば、古き良き物を大事にするならば--古式神武--へ国籍を置く者も居
る。国籍? ああ、説明するのを忘れておったわい。
 国籍とは一の年までに説明が為された国に住む為に必要な印じゃ。これがないと
家を持つ事のみならず、議員になる事さえ出来んのじゃ。まだまだ出来上がったば
かりの制度じゃから現時点でも抜け穴がいくつか点在しとるのう。
 話を戻すぞ。新しい物を求める生命は--新天神武--へ国籍を置くのう。そう
して生命は三つの道を進み始めた。それが猶予までの一の年の間の出来事じゃ。
 次に猶予から一の年までの出来事を説明する前にまずそれぞれの国について補
足しないとの。初めに--真正神武--じゃが、最高官は天同輝星。副最高官に
天同美世、摂政に天同星季の二名で心身共に齢最高官を支え合うのじゃ。
 次に--古式神武--じゃが、最高官には今まで国家神武の官房長官を務めた
神武鼠族のヤマカゼノチュミノカゼが成る。そんで象徴は天同恵弥。上官だった者
に恵弥は支えられる。
 最後に--新天神武--についてじゃが、最高官はわしじゃ。今のところ選定制
度はわしが最高官で居る間に様々な議論を交わす以上は日記を書いている現在で
も完成しとらん。まあ未完のまま施行されるのはいつの世でも同じじゃ。けれどもわ
しが居る間には皆が安心出来る制度に補強しないといかんのう。
 それじゃあ猶予から一の年までの出来事を説明するぞ。といってもわしが最高官
の--新天神武--についてしか説明せん。他二つは詳しく書けん以上、省くぞ。
いいかの、最初の一年は大変じゃ。何しろ折角判子を押すべき書類が三分の一に
なると思ったら大きな間違いじゃ。至る所で調査に告ぐ調査、公共整備にかけるお
金の捻出、用材不足、なおかつ打撃的なのは三国分領宣言後は新たに傭兵組織
があちこちに出来上がってのう。そのせいで自主退役する軍者が増えて困ったわ
い。全く最近の若い者はどうしてそんなに発想豊かなんじゃ。わしにも発想の一つ
や二つくれれば仕事に追われる毎日も軽減出来るのに、羨ましいぞ。何て若者を嫉
妬してもしょうがないのう。
 二、三の年では新しい国に住むのが耐えられず--古式神武--に引っ越す者
をどうするかで悩んだのう。あそこは二頭体制であり、なおかつ技術が一点に集ま
る以上は暮らしやすいのじゃ。更には税金も軽くてわしの国に比べれば暮らしやす
いのは一目瞭然じゃ。だからこそわしらは困ったのじゃ。強制するのは却って若者
達を窮屈にさせる。かといって自由にさせすぎると老年しか住む者が居なくなる。行
き合ったりばったりで対策を執りながら聞き取り調査をしてゆくしかなかったのう。
 そんで対策が功を奏する四、五の年ではようやく流出は収まったが、ここからが大
変じゃ。わしも含めていかにして国から若者の流出を減らす作業と若者を呼び寄せ
る政策で話し合ったのう。わしらも大変なら星季達が舵取りする--真正神武--
だって大変じゃ。聞いた話ではそれまでの間に輝星はある令嬢に恋をしていていろ
いろと星季や美世に相談を持ちかけてるとの事じゃ。更には競い相手--古式神
武--の所に生命が流れるのを少しでも防ごうといろいろ政策を行ってるとの事
じゃ。あっちの国では学問分野の発展は著しいものの、それ以外での分野が遅れ
ておるから負けじと進めていっとるのう。予算は大丈夫かの?
 話を戻すが、わしらの国--新天神武--は二つの国との競争に負けじと若い
衆の意見のみならず、わしみたいな年寄りの意見も出来れば組み込んでいっとる。
じゃが、上手くいくかどうかは年を重ねないと効果が出ない。どの政策も最初の内に
は必ず反発するのじゃ。そんな声を聞く度に疲れが溜まりやすくて困るのう。
                 そんな感じで現在六の年に入った。今わしが居るのは』

 ICイマジナリーセンチュリー百八年四月二日午前零時二分四秒。

 場所は新天神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同七の間。かつては天同
六影の間と呼ばれた居間。
 齢四十七になったばかりの神武人族の老年天同七は座禅を組みながら黙想する。
代々仙者にのみ可能な予報を始めていた--本来は朝に行われるものだ。
 七は今は亡き七に直接会う為に深夜に予報を始めた。彼の様子を正座しながら正
面で確認するのは齢三十一にして四の月と二十六日目になる武内人族の熟女。
(全く七様の行動は読めない。仕事終りに死んだ母親に会いにゆくなんてどうかして
るわ! 奈々様の自我が必ずしも残っている保証なんてあるの? 私には信じられ
ないわ!)
 熟女の名前はモーラ。武内族に名字はない。あるのは名前がややこしくても出身
が解れば名字の必要はないからだ。
(まだかかるわけ? 困った生命ね。ちゃっちゃと済ませばいいのに!)
 モーラは現在も七の秘書を務める。理由は七の指名だけではなかった。
(あれから二の時が経ったわ。あーあ、自分の意志で七様を見届けるんじゃなかった
わ! こんなにも退屈にならずに済んだのに! これだから雄の者は困るのよ! い
つだって雌の心を解ってくれないんだから!)
 満足しない呟きが出そうになりながらもそれから一と二十五の分も待つ。
 ようやく七の目は開く。
「あんまり私を待たせないでね、七様」
「もう少し目上の者への言葉を選ぶのじゃ、モーラ。全くお前さんの一族は代々礼儀
の知らん連中ばかりで困るぞ!」
「そんなことは後で良いからさっさと言ってよ! 奈々様に会えたの?」
 七は首を横に振る。
「そう、やっぱり自我は融けたのね」
「わしとモーラも死んだら母の様に成ろう。じゃからこそ確かめたかった!
 母が死ぬ直前にどうして故郷に帰ったのかを!」
「結局返ってきたのは今後の予報なわけね。どうだったのよ?」
「言葉を選ぶのじゃ、少しはの。
 実は--」
(……『空が落ちる』? 何なの、それ!)
「大分先の未来図じゃ。いつ訪れるかは定かではない。逃れられぬ運命ならばその
間に対策は執れよう。わしらの自我が溶け込んだ先であってもの」
 七は亡き母が描いた六影の肖像画に目を向けた。
(三つに道は分かれたわ。でも七様はこう思っているはずだわ。いずれ予言の日ま
でに三つの道は一つに戻る。『奈々様が最後にとった故郷へと帰る行動はそんな予
言を表していたのかも知れない。後ろ向きな考えなら最後に故郷の土を触りたかっ
た』なんてね。
 今となっては当時の奈々様にしかわからない心情だわ。いくら雌の私でも雌の考え
はわからないわ。雌ってのは雄乗りそうとする像と異なり、感情に左右されやすい訳
じゃないの。時として理知的な行動を躊躇なく行っても見せるんだから!)
 国家神武は今、三つの道を進んでゆく……けれども、三兄弟の物語は続く。





 ICイマジナリーセンチュリー百八年四月二日午前三時二十分一秒。

 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々 完

 第四十二話 三兄弟物語 三つ星は今 に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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