FC2ブログ

一兆年の夜 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々(六)

『間に合わなかった。わしは運命にこれほどまで怒りをぶつけたくなった事は一度も
なかった。だが、いくら死を回避しても待っているのは将来の死。わしがもっと早く現
場に駆けつける事が出来たのなら姪っ子一名をあの世に送る事も流れ星への警戒
を怠らないようにする事だって出来たのに。
 三度の流れ星は三体もの銀河連合が現われる合図。一つ目が囮なら二つ目以降
は八理を死へ導く為の合図。それも高度に計算されたものじゃ。それは一重に銀河
連合の仕業ではない。未来がそう決めてしまった以上は手が打てんのじゃ。
 手が打てない。他にもあったのう。八理の死を切欠に二名の喧嘩もそろそろ抑え
る者が居なくてどうしたものか。特に恵弥は八弥兄さんに似ている分、いつ逃げても
不思議ではなかった。じゃが、わしはそんな事はさせまい。あやつにはこれからの
国家神武に必要な導き手じゃ。例え神々に叱られてもあやつには八弥兄さんの道を
進ませまい。あやつはあやつ、八弥兄さんは八弥兄さんの道がある。これも大人の
勝手な振る舞い。けれどもわしはわしの勝手を貫く。
 それは恵弥のみならず星季、輝星、美世にも言えるのじゃ。あの三名にもそれぞ
れの道がある。それぞれの道を進んで欲しい故にわしは母のように大人の勝手さ
を行使する。わしは年をとって母に似たのじゃ。じゃが、母のような道を進む気はな
い。ボケの進行が早まる前に手を打つのがわしの道。
 それが天同七の進むべき道じゃ。
                                  あの世で見ているか、母よ』

 七月三日午前九時三十七分三十九秒。
 場所は国家神武首都ボルティーニ中央地区神武聖堂前。
 大雨の中、数十万もの生命が今か今かと七の宣言に聞き入った。
「しかし本当に分裂するんのか?」
「星季ー様と恵ー弥様の中がすーんごく恐い状ー態だったーから仕方ーないだーろ!」
「空が落ちる日を生き延びるた家計である僕達はまた離ればなれるに?」
「お祖父ちゃんはこんな事を望むのかアアス?」
 アリスティッポスで死んだ兄も同じ気持ちかな--チアンジとは三つも年が離れた弟チアンダは早口言葉で心境を読もうとした。
「わしはどこへ行かれようが筋トレ出来れるるばいいであろう、フン!」
 群衆はお喋りをしながらも今後を安心出来ない--三つの分断されようとする国家神武の将来に自信を持てず、少しでも気を紛らわそうと必死だ。
 七の宣言は後半にさしかかった!
「--天同恵弥が示す国家像についての説明は終了する。
 これよりわし自らの国家像について説明する。初めにわしは国の指導者を決める制度についてじゃが、これには国民全てが成れる機会を与える。もう一度言う。国の指導者を決めるに当たって国民全てが成れる機会を与えるのじゃ!」
「え? え? 何て言ったにゃ?」
「俺達に舵取りイーをしろって言いたいーイの?」
「正気、七様!」
「随分と大胆う! 星季様よりも挑戦的う!」
 自分達でも機会があれば頂点に立てる--群衆は夢のような制度に喜びもしたが、一部では安じ得ない心境に成る者も現われる。
「--よって誰でも簡単に最高官に成れるものではない。そうなってしまうと政務を知らない人気車なら誰でも最高官に成ってしまう。それを防ぐべく、最初の最高官にはわし自ら成ろう。そうする事で後に続くものに指針が出来るじゃろう。そうなれば必ず『結局七様一名の好き放題じゃないの』という事に成るだろうが心配はいらない。そうならない為に--」
 七の話を後ろ側で聞く齢五十一にして二の月と二日目になる隻腕の杖つき老年カゲヤマノツクモノカミと七の秘書になったモーラはお喋りをする。
「本当に七様は権利を手放すと思うの?」
「思う。何故奈羅あの方端優しすぎる。三つ似別れさせるなんて七様だからやった事なのだ。星央様模八弥様模やらない。何故奈羅一つ似纏める事似精尾出す以上端。
 七様端優しすぎる。なの出権力尾手放す事だってやる」
 そうなの--モーラは七の方に目を傾ける。
「--以上でわしの国家像について説明を終える。
 これから先は皆もわかる通り、国家神武は三つに分断しよう!」
 七は三つの国家について説明してゆく。
 一つ目が天同星央の子供達が六影県を中心に北へ広がる国『真正神武』。
 仁徳島のみならず藤原大陸全てを包む領地。最高指導者は必ず仙者でなければならず、生者に到達しない場合は天同家の血を引く者が摂政を務めるか、或は中継ぎの仙者と成って幼少の仙者を補佐する。なお最高指導者は中継ぎを除いて必ず雄でなければならない。
 これが『真正神武』の簡単な概要。
 次に説明するのはタイガーフェスティ町を中心にやや南西に広がる国『古式神武』。
 ラテス島のみならず西物部大陸から現在最南端に位置する雄略大陸まで覆う領地。二頭体勢による政治体型と成り、従来の国家神武と同様に象徴と最高官が頂点に立つ。ただ異なるのは象徴は必ず天同家の男系が務め、最高官は従来に比べて門戸が狭く、国民による投票で選ばれても大臣選びで最高官による任命を経なければならない。それが通った後、大臣内で三分の二以上による投票を通す事で初めて最高官に指名され、象徴による任命を経て最高官に成る仕組みだ。故に今までのように象徴及び最高官の気分次第で選挙をしたり勝手に決める事が容易ではなくなる。なお最高官は天同家以外でも成れる模様。
 これが『古式神武』の主な概要。
 最後に説明するのは首都ボルティーニを中心にやや東に広がる国『新天神武』。
 東物部大陸から鬼ヶ島、エピクロス島、北蘇我大陸及びアリスティッポス大陸全てを領土とする。最高官は一定年齢に達すると全ての種族が成れる。ただし、一定年齢に達した国民全ての得票であっても各地域で当選した議員数に応じて最多得票数を獲得してなおかつ決選投票と呼ばれるもので最多得票を獲得出来た者が成るというもの。なお二つを通過しても決選投票で最多得票を獲得出来ない場合は一からやり直すという非常に厳しい選定制度である。初めの内は最高官の席に座るのは天同七。時期が迫ると制度は施行される。
 これが『新天神武』の示す概要。
「仙者のみが最高官に成れる『真正神武』。
 象徴は天同家だが、最高官は厳しい関門を通った者だけが成れる『古式神武』。
 そして、わしが示す『新天神武』……。
 猶予は一の年はある。それまでに往くべき道を進むのだ! 時間ある者は進むべき道の為に悩み抜け! 時間なき者は死に場所を求めて踏み出すのじゃ! そのどちらでもない者が居るならば猶予までに迷うのだ! わしは君達の中にある心を信じる。強くあろうとする精神を信じる。君達ならば進むべき道を踏み外さないとわかるのだから!」
 それは七自身に向けた試練でもある--己の道が適切なのかを知る術は遙か未来でしかない!
 大きな賭はいつだって幸せを逃がしてゆく。七の示した道は希望を突き放す賭けでしかない……それでも七は茨を裸足で踏む道を進んだ!
「--以上がわしの三国分領宣言である!」

コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
FC2カウンター
リアルタイムカウンター
現在の閲覧者数:
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
Powered By FC2ブログ

今すぐブログを作ろう!

Powered By FC2ブログ

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR