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一兆年の夜 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々(四)

 六月八十九日午後四時十二分八秒。
 場所は首都ボルティーニ中央地区神武聖堂天同七の間。かつては天同五生の間と呼ばれた場所。七はその部屋を受け継ぐ。
 九日前と同じく星央と八弥の子供達全員と七のみで会議をする。
「--という妥協案を作った次第でありますの案です。あたしの案に反論はない?」
 ある--反論したのは恵弥だった。
「またあなたね。国家神武ってのがかつては--」
「言われなくても解るよ。そもそも今の国家神武は僕らの先祖天同参花によって再建された国だよ。ただし大きく違うのは天同生子が建国した国家神武の中心地が旧名のアリスト。現在の中心地は最初に奪還した場所ボルティーニ……旧名はマンドロス。南に位置します。
 ですが、今更首都をアリスト……つまり現在名で言う所の六影県に移すのはどうかしてます」
「私も恵弥君と同じ意見だわ。それに何もそこまで国を変える意味があるの?」
「ごほごほ……百億光年先にいると思われる銀河連合の指導者を。
 ごほごほ……銀河連合の巣に対抗する為の道筋。姉さんはそう言いたいんだよ、ごほごほ!」
 だから無理なさらないの、あに様--美世は輝星の背中をさする。
「全生命は戦い続ける運命にあるのよ。いつまでも銀河連合が黙っているはずがないのないし。その為にもまずは形だけでも変えてその上で中央集権化の実現に踏み切る以外に他に--」
「断る! 現状がままならない状態なのに更に変化を起こせば余計に事態は良くない方向に向かう!
 パパはそうしていつも踏み外してきた。急激な変化は一生命に良くないからこそいつだって踏み外してきた! 星季お姉さんのやってることは逃げてきた頃のパパと瓜二つだ!」
「一緒にしないで! あたしは八弥と違う! 八弥のような真似とは違うのよ、違いすぎるのよ!」
「じゃあどう異なる! パパから学ぼうとせず、ただ--」
「『雌だから勝手な決めつけした』って言いたいの! 弟分の癖して生意気なんの生意気だよ!」
 二回も言うな、この--星季と恵弥は取っ組み合いになった!
 二名と止めるべく美世と八理は押さえつけようとするが、少し離すとまた取っ組み合いになり、収拾が付かない状態になったが--
「お前らの言い分はよくわかった……けど殴り合いをしてどうする?」
 今まで一言も発しなかった七が突然口を開く--我を忘れた二名や止めようと掴んでいた二名、そして咳き込む一名は七の方に視線を向ける!
「物事を決めるのは口論。口喧嘩になっても構わない。喧嘩しない議論など議論に値しないのがわしの持論じゃ。
 だけど拳または足のぶつかり合いは議論ではなかろう。そんなものは心の語り合いで行え……ここは今後を指針する為にお前達を集めた。殴り合いする為じゃない……わかったか、二名?」
 はい--星季と恵弥はようやく鎮まる。
「ごほごほ……じゃあ叔父さんは姉さんやめぐ君みたいに主張したいことあるの?
 ごほごほ」
「だから無理しないの! あたくしがあに様の代わりに弁論します。同じ仙者としてのあたくしの意見が混じりますけど。
 えっと叔父様はあね様や恵弥とは異なる主張がお有りかしら? または皆が納得する案も持っていますかな?」
「異なる主張については今は語らない。けれども納得させる案なら持つ」
「本当ですか! では僕達が納得する案とはどんなものでしょう!」
 七は深呼吸する--その後、口から信じられないことを放つ!
「そんな案じゃあ納得しないっての、私も恵弥君も!」

 午後十時二分十五秒。
 場所は中央官邸三階官房副官室。扉より正面に官房長官室のある場所。
 そこには父親譲りの豹族の鋭い目をした青年が官房長官ヤマカゼノチュミノカミから足渡しされた百枚以上にも上る書類に判子を押してゆく。
(結局おじさんは自分の主張したい事を言わなかった。代わりにあんな提案を!)
 七が考える事に納得のゆかない青年天同恵弥。父親と容姿は近いが、性格は異なる--八弥のような身体能力と戦闘に関する才能は全て姉である八理が引き継ぐ。
(僕は受け容れがたい! 天同参花が仲間の死と恩師の掟に従い、再建したこの国の方向を『あんな風にしろ』なんて納得いく案じゃない! 星季お姉さんと輝星お兄さんは納得しても僕と八理ちゃん、それに美世お姉さんは納得しなかった!
 あんな風にすることを国民に知らせたらどうするんだ! 大臣の選定はどうすればいい? 境界線では現場の者はどうすれば対応出来る? まさかおじさんは星季お姉さんと僕の意見を汲み取ってそんな案を出したのか!
 思い込みだよ、ぜった--)
 恵弥君、元気い--三回叩かずにいきなり八理が入ってきて恵弥に抱きつく八理!
「やめてくれよ、八理ちゃん! もう少年少女じゃないんだから恥ずかしいよ!」
「胸がこんなになった事が恥ずかしい?」
「それは……そんな事よりも僕達は血が繋がってるだろ! いい加減姉弟ごっこをやってる場合じゃ--」
「ふうん、恐いんだ。恵弥君は愛に目覚めるのが恐いんだね。わかりやすいんだから!」
 いや、その--困惑する恵弥。
「大丈夫よ、恵弥君。嫉妬はするけど恵弥君が決めた雌なら私、応援するよ!
 私は恵弥君みたいに頭は良くない。でも恵弥君を守る事は出来るよ! 期待してね!」
 って何言ってるんだ--恵弥がそんな言葉を発する頃には八理は部屋から去った後であった。
 只一名残った恵弥は書類を見て、やるべき作業に気付く。
(はあ、何しに八理ちゃんは来たの? いつだって実の姉が考えることを理解しかねる。僕を振り回しては気がつくと時間だけが意味なく過ぎる。はあ……疲れを癒せない)

 午後十時四分九秒。
 官房長官室に通じる道で女性は虚ろな表情をする。
「応援……出来ないわ。心が締め付くのよ。こんなの罪深い。こんな感情を抱いて生きてゆくの、恵弥君?」
 思った事を口にする八理に気付いたのか、目の前にはあごひげを蓄えた人族の老年が立つ。
「おじさん、聞いたの?」
「いや……ところでお前はどうして納得しない?」
「ああ、あの事ね。当然でしょ! みんなと離ればなれになるんだよ! 七はそれがお望み?」
「生命はいずれ離ればなれになる。生死を問わず……。八理よ、それは己自身が生きる時か或は--」
「それ以上は言わないで、おじさん! 恵弥君とは絶対離れたりしない! 死んでも恵弥君を守り続けるの!」
 まさかお前--七は信じられない未来を感じる!
「何考え込んでるの、おじさん? 大丈夫よ! お祖母さんみたいにすぐに死なないわ! 今年はちゃんと生き抜いて来年だって恵弥君を守るのよ、私は!」
 すれ違い様に別れる二名--だが七にとっては『死んでも守り続ける』という言葉に引っかかりを覚えた!

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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