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一兆年の夜 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々

『アリスティッポス大陸を奪還してからもう十一の年が過ぎた。
 この間にわしの周りにいる者は大きく変わってしもうたな。ログホラーニさんは五
の年より前に肺癌でこの世を去り、シャラワウは四の年より前に脚気で死んだ。
他にはイノ吉さんやカブ八などの有能な大臣が三の年から今年にかけて老衰や心
筋梗塞で想念の海に旅立った。
 後はアリスティッポス大陸進行作戦の生き残りだ。わし以外の全ては生還後すぐ
に軍者を引退した。あまりにも凍えた環境が原因で体調を崩した。その中でわに十
とワッシンは引退して一の週もの間に戦いの後遺症でこの世を去り、ツクモノカミ以
外の残り全ては去年までに老衰及び癌で墓の下に埋まった。未だに生きてるのは
ツクモノカミだけ。けれども彼もいずれ死んでゆく運命。
 後ろ向きな話はここまでにしよう。今わしが心配する事は三つある。
 一つはわしの母、奈々の容態が日に日に弱ってゆく。寝たきりで済めばいいもの
の母は付き者が居る前で用を足したり、便を出したりともはや手の付けられない状
態まで弱った。慰めても何かを聞き違ったのかすぐに狼狽したり、怒ったり、笑ったり
で心身疲労を増加させてゆく。彼等の中には--介護を止めよう--と身内に漏ら
す者が出て来る始末。こんなのは見てられない。母を楽にしてやりたい。けれどもそ
んなのは銀河連合と同じやり方だ。わしは出来ない。もう母の事をこれ以上記したく
ない。
 それよりも二つ目の心配事も記さねば。それは星央兄さんの三名の子である星
季、輝星、美世と八弥兄さんの二名の子である八理、恵弥だ。
 まず星季は昔から自己主張が強い雌の子。いつもわしの仕事を除いては至らぬ
所があると腹を通さずはっきり意見を出す。彼女はそんな事ばかりやっていたせい
か、何時の間にか政治の世界にまで顔を出すようになった。
 次に輝星だ。彼は美弥さんや両親の死に最も心的衝撃を受けた子だ。仙者であり
ながら病気がちで、いつも妹の美世に看病されっぱなしだ。わし以上に才能に体格
に恵まれない上、心の病は想像以上の青年だ。彼の状態こそ星季を余計に急がせ
てゆくのだ。
 そして星央兄さんの第三子美世。この子は仙者でありながら表に出る事をあまり
しない。いつも姉と兄を助ける事しか考えない困ったちゃんだ。周りがいくら持ち上
げても本者は知らんぷりな所がな。
 では八弥兄さんの二名の子八理と恵弥について纏めて説明する。八理は両親譲
りの武芸の才能に溢れ、様々な他種族の雄顔負けな腕力と技量を持ち合せ、一刀
一槍による遠近両用を行えるほどだ。そんな八理の為に恵弥は仙者である事を活
かして僅か十の年で政に関わるようになった。あの子は本当に脱帽する程だよ。い
つだってわしの至らない所をすぐに見つけては皆の意見を参考に改良してゆくんだ
から。
 五名をざっと紹介したが、どうして心配後とかについて説明する。それは政に深く
関わる二名、星季と恵弥が中心なんだ。
 星季と恵弥はそれぞれ仙者の為に政治に参加するか、或は一生命の為に政治に
参加するかで思想が異なる。星季はいわゆる仙者中心の政治を実現しようと考え
るんだ。父はいわば最高官と仙者の両方をこなした以上、出来ない道理はないと本
気だ。更には仙者が政治に深く関われないのであれば同じ天同の血統を摂政にす
る事で円滑に出来ると主張する。あの子の問題点は他者の意見を素直に聞かない
為、説得に時間がかかるんだ。
 一方の恵弥は従来通りの二頭政治を進める。ただし、異なる点がある。それは最
高官の方だ。彼は仙者が任命した最高官しか認めないようにするつもりだよ。彼が
言うには--全生命は自分も含めて全能ではない。故に選ばれた大臣による投票
で決めた最高官候補を数名出してはそれを仙者自ら吟味させ、眼鏡に適う者を見
つけるとその者を仙者自ら任命する制度にしないと全生命は前に進めない--と
の事。あの子の主張は一見正しいように感じる。けれども、どこかわしの中では異
なる気がする。どうにも他者の意見に引き摺られやすいというか何というか。
 とにかくこれらの主張のせいで星央兄さんと八弥兄さんの子供達はいっつも喧嘩
するのさ。いくらわしらが仲介してもキリがない。
 もう二つ目の心配事はここまでにしよう。最後の心配事がある。それは広大な領
土をどう維持するかだ。国家神武でやれる範囲を遙かに超えてわしら政の長達は
長時間勤務による心身疲労が増大するばかりだ。わしらだけではない。現場の軍
者及び中間管理職やその他諸々。派遣制度や傭兵制度をいくら駆使しても仕事量
は増えるばかり。このままでは八弥兄さんが逃亡したみたいにわしらや他の者まで
脱走してしまう。どうすればいいんだ。どうすればこの事態を解決出来るか。
                      そろそろわしは母の様子を見なければならない』

 齢三十九にして十の月と十九日目になる神武人族の長であり、仙者でもある天同七は領土問題への解決方法を思いつくが、十の分経つと意味のない案であると思考し、落ち込む。その毎日しか訪れなかった。
 母の死が目前に迫るまでは……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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