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一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く(決)

 九月七十七日午後十一時八分七秒。
 場所はアリスティッポス大陸中心点。
 進行部隊は全生命にとって念願だったアリスティッポス大陸の全制覇を成し遂げた。本来は喜ぶべき事実。
 けれども--
「何が成し遂げた……だよ! もう死んでしまったんだぞ!
 タイフェスも、星央兄さんも、チーチャルも八弥兄さんもベアレルもその他大勢のみんなの命を落として何で喜べるんだよ!」
 齢二十八にして十の月と十九日目になる青年は青く輝く髪を逆立てながらどうしようもない怒りを青空にぶつける!
「ここに来た進行部隊はもう私とツクモノカミ、それにわに十にワッシン、ついでにマモノスとシカック、それにバッファ鱗とフッザルだけになった。何を以てこんなものを語り継げる? 何を以て死んだ者達を偲べる? 私にはわからないよ!」
 青年は涙を流す--氷の大地なのに凍る事なく、滴り落ちる。
「大地は冷たいのにどうして頭を冷やしてくれない! どうして私を生かす! もう私は一名だけになってしまった。残っているのは星央兄さんの子供達三名と八弥兄さんの子供達二名、それに母だけ。父を悲しむ理由は見つけられないが、忍狭お祖母さんと美弥さん、それに星央兄さんに美智琉姉さん、後は八弥兄さん。私は彼等の死を悲しむ気持ちを背負ったまま長い時を生きろというのか! 神々はどうして仙者なんて存在を作った! どうして私達は長く生きる事を宿められた! 教えたら罪深いのか!」
 仙者は強い存在ではない--弱さも同時に身につけてゆく堅くも脆い矛と盾のような運命。
「だから私は誓う。生き残った者達の想いと死んでいった者達が共に分かち合える世界にすると! それは在っては成らない事でもあり、在って良い世界なんだ! 例え分断するような事があっても私は全生命を導く! 来るべき時までに礎として!
 それが私……天同ななの目標!」
 天同六影ろくえいの三名の子供達はそれぞれが異なる人生を歩む……。
 天同星央ほしおは基礎を作り続け、天同八弥やつみは星央の築いた基礎を応用し、そして天同七は二名の兄たちの礎を発展へと導い
てゆく……二名の子供達が旅立ちをしても三兄弟の物語はまだまだ続く。

『あれから十の年が経った。わしはもう星央兄さんの年齢も父の年齢もすっかり越し
てしまった。もうすぐ八弥兄さんの年齢まで越しそうな勢いだ。あ、そうだ。
 そう言えばわしはすっかり髭を生やした。一名称が気がつくとすぐ変わるもんだか
ら母に注意されないように髭を生やせば一名称だって文句言われないでしょう。母
はまだ生きてるって。生きてるよ。ただしもう起き上がる事さえ出来なくなってしまっ
た。付き者五名による懸命な介護は見ていて辛い。ああなってしまったのは一つに
八弥兄さんの死だ。ただでさえ息子が死んで辛いというのに更に追い打ちをかけて
九の年より前にはもう起き上がる事もままならなくなった。仙者としての命運びが母
を余計に苦しめた。もうわしでもどうにかなる状態じゃなくなった。
 そう言えばどうにもならない事が他に出来た。星央兄さんの子供達と八弥兄さん
の子供達だ。あの五名は成長してゆくにつれ、自らの主張を政策にまで及ぼし始め
た。特に面倒なのは星季と恵弥の喧嘩だ。
 星季は政治を仙者中心にしようとあれこれ言い出しやがって。あの子は昔から環
の中心に立ちたがる。それが却ってそうゆう所にまで及ぼすなんて。
 一方の恵弥は現状維持を選択。あの子の場合は己よりも長生き出来ない双子の
姉八理を想ってか、二頭政治の継続を進めるんだな。それも感情のままに。
 あの二名の喧嘩が始まったのは一の年より前。一方が輝星や美世の為ならもう
一方は八理の為。仙者の為に行動する一生命と一生命の為に行動する仙者。数
学的に見て全くの正反対だ。ここまで来るとどうしようもない。
 そんなわしがやるべき行動は。今は思いつかない。わしだって母の事で精一杯
だ。あのまま生きるなんて辛くて見られない。いっその事。出来ない。そんなのは神
様だって悲しむ。血を分けた者をそんな目にさせる事はわしに出来るものか。わし
は。わしは。思いつかない。
 思いつかない。思いついたのは。
                               仕事に追われているという事実』





 ICイマジナリーセンチュリー百六年三月八十三日午後十一時五十七分五十九秒。

 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く 完

 第四十一話 三兄弟物語 七と奈々に続く……

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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