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一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く(五前)

 九月五十日午前五時七分一秒。
 場所は廃レテ集落。氷の大地であっても耐えがたい臭いは漂う。
「銀河連合さえ居なければここも神々が活き活きするのにっじ!」
 仕方ねえだろ--早口故にチーチャルの声はわに十の耳では聞き取れない。
「八弥様ですね。どうしたといえば?」
 居たのか、ワッシャン--齢二十八にして六の月と九日目になる武内鷲族の青年による応答が来るまで我を忘れる八弥。
「居たのかといわれてよりもどうして考え込んでたんですねなのか? まさかここに銀河連合がいるとですかと踏んでそんなに考えに--」
「済まないがワッシャン。鷲訛りで長く話すのはやめろ。聞いてて何喋っているのか解りづらいんだよ。
 と、とにかく俺はこれからどう進めるか考えていたんだ。先程みたいに突然口が開くような不可思議な事が起こらんでもないだろ?」
 言われてみるとですね、確かになら--ワッシャンは納得する。
「八弥様。わし端ある疑問牙浮かびました」
「言ってみろ、ツクモノカミ」
「先程乃口端明らか似自然現象出端ありません! あれ端まるで……忠言すらさせない科、銀河連合!」
 やっぱり居るんだよ、この集落に--七が見つめる先には陸、氷下、ならびに空から百を超える銀河連合が現われた!
 班長、数が多すぎる--チアンジはチーティンに寄り添うように構えた!
 いいか、二名とも--チーチャルは二名の部下にチーター班は陽動の役目を任された事を伝えた!
「兄さん、私は八弥兄さんのようには--」
「出来ない? 当たり前の事を言わすか! 俺みたいに成るんじゃないぞ、七!」
 で、でも--七は右腰に挟み込んだ神武包丁『零』を抜くのを躊躇う。
「いいか、七。包丁は抜く為にあるんじゃないぞ。演舞を見たお前ならその意味を真に理解出来る!
 けれどもお前は抜くのを躊躇っている。抜くんじゃない! 抜こうとするな! 包丁は己の魂を使う為にあると知れ!」
「意味がわかんないよ……なんて喋っている間に銀河連合が--」
 俺が抜いたのは包丁じゃない--八弥は抜き身の『星央』を左手で握り、銀河連合のど真ん中を駆け抜ける!
「包丁を抜いているじゃないか……そ、そんな事よりも刃毀れした星央兄さんの形見で戦うのは危ない過ぎる!
 ここは誰か--」
 俺達が居るんだ、だから七様は安全な場所へ--チーチャルらチーター班は人鳥型三十六体を惹き付けるが、信じられない事に距離が急激に縮まってゆく!
 は、班ちょおおおう--チアンジは二倍の速度で迫るように感じる十三体に囲まれ、全身を残らず食われた!
 チアンジイイイイ--チーティンは怒りで陽動を忘れ、目の前にいた人鳥族の襟首目掛けて急加速!
 何なんだ、あれは--チーチャルは信じられない光景を目撃!
「もう使い物に! こうなったら……でい!」
 一方の八弥は正確に斬ったはずなのに使い物にならなくなった星央を鞘に戻して徒手空拳による攻撃に移る!
(チーティンまで死ぬなんて! あれは確かに襟首に当たった……甘い!
 なのに襟首を噛み砕いたのは銀河連合の方なんて俺の目はいつからそんなに老いた? 幻を見る程までに直視の力が……それ!
 今で二体目……。右肩がまた更に重たくなったような……何?)
「とうとう出やがったナア、指揮官型メエ!」
 余裕の構えなのか、突然進行部隊のいる場所の中央の氷が突起し、下から指揮官型が全身を露にした!
「馬科鹿出端ないんだぞ! わし牙気付かないなんて一体この大地端どうなっている!」
 後は頼んだぞ、みんなアアア--自分よりも速いという有り得ない事をやる二十八体ものアザラシ型に乗っかかられ、抵抗する事もままならないまま念無き死を迎えるチーチャル!
(どきやがれ! 指揮官型は俺が相手してやる! けれども素手であいつに傷一つ--)
 八弥はある物に気付いた--それは指揮官型によって生じた氷の槍。
 だが、八弥にそれを渡さないのか指揮官型が避ける暇も与えない速度で間合いに入った!
「攻撃を避ける程俺は腰砕けにできちゃあいないぞ!」
 攻撃よりも先に左上段蹴りを指揮官型の顔面に当てた八弥は反動を利用して氷の槍まで接近--最も鋭い氷を左手で掴んで構えをしてみせる!
「冷たい! 確実に凍傷を受けたな! だが、もう関係ないぞ!」
 またしても指揮官型は八弥に避ける暇も与えず、鼻の差まで接近!
「『避けない』ってんだろ!」
 八弥は動きを読んで槍を突いた--惜しくも指揮官型の右上腕に刺さった!
 真ん中を狙ったのに--抜く反動で指揮官型の攻撃を躱す!
「次で最後だ……な?」
 八弥はそこである事実に気付いた--けれども残り時間は少なかった……!
「ぶふう! が、あ、いくら速くても、がぶうううう!」
 大量の血液を口からも右胸からも出しながら八弥は指揮官型を真っ直ぐ見つめる--歪んだ銀色の眼から何かを探るように!
「俺の、背後に、は回り、こめ、ないだろ!
 はあはあ、よう、やく、わかった、ら--」
 八弥は右裏拳で指揮官型の顔面を攻撃した--自分の首に拳を当てるように!
「がああああ! あがあああがああがあ--」
 にいさああああん--七はツクモノカミと共に八弥の所に向かう!
(や、と離せた、があああ、右手が俺を! お、ぐ、ああ、あ、あ、こんなことなあらあららあ--)
 八弥は乱す右手を止める為に右肩を刺し切り抜いた--もう一つの場所から大量の血液が放出し、体内の血液は三分の二に迫った!
(から、だ、が。こ、えがだ、ぇ、ぁ。ぉ、ぇ、ぁ、ぁ、ぁ、ぁ、ん、ぉ……)
 指揮官型が左隠し腕による攻撃で止めを刺そうとしたが、八弥に映ったものはその直前まで……ただし、耳に届いた最後の言葉は--やつみにいいいいさああああん--であった!

 長髪の男は徐々に若さを取り戻す。彼の目に移るのはイザナギ大宇宙の中心部。背負う物はなく、ただ重さすら感じない情無き冷たい世界。そこで彼は真実を目の当たりにする!
『あれが俺達を苦しめるモノか! あれこそ俺の……俺の……と、とにかく俺はあれを止めなくてはならない!
 ああやって俺達の住む宇宙を操作しようとしているのなら、俺は魂をかけてでも中断させ、ないと! あれは生命がやってはならない行為なんだ! 息年いける生命が住む宇宙にやってはいけない行為なんだ!』
 豹族の鋭い目は因果の鎖を正しく導く為に単身歪みの原因へと特攻をかけた!
『俺という存在はこの先どこにも現われない。全ては連続した血の宿命。俺と……は。俺は……の魂を動かすべく輝き続ける! 例え一時の理であろうとも俺は……を信じている! あいつならきっと……もうこれ以上は--』
 魂は輝きを見せ、あらゆる銀河に無限模様を見せる--それは天同八弥の四十と十九日目の命の輝き!
 天同八弥の物語はこうして幕を閉じた……。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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