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一兆年の夜 第四十話 三兄弟物語 八は輝き、七は動く(四)

 寝る前に八弥は七に遺言めいた事を伝えた。
「初めに言っておくが、俺が言いたい事には論理の飛躍が結構みかけるつもりだ。それでも俺はお前には何が何でも伝えねば意味がないんだ! だからしっかり耳に入れろよ!
 俺はある夢を見た。その夢の中に出てくる世界はとても耐えがたい光景だった。それは俺達人族が他の種族を死なせ、肉や皮を口に入れ、更には栽培しているんだ! 『一体人族は何をしたんだ』と俺は感じた。いやこれは信じられないなんてものではない。この光景自体が栽培された人族の世界ではないかとも感じた。
 何せ突然として頭が吹っ飛ぶ事故や病が起こる所に何かしら知らせてはならない真実が含まれてもいた。その事故を何かの仕業にする一名の男はそんな事故と戦い、傷付き、とうとう自ら真実に取り込まれる事になった。真実に取り込まれた男は自らを精神存在へと昇華し、我々の祖先を現在のような神から離した存在へと変貌させてくれた。
 ……全く意味がわからないだろう? 言ったろう、『飛躍が結構見かける』と。あまりに意味の明らかではない世界だ。説明する方が腰砕けだ。でもな、そこに俺達生命体と銀河連合を結びつける何かが眠るんだ。いいか、よく耳に入れろよ。
 男が全ての真実を取り込んだのはいいけど、奴は徐々に生命らしさを薄めていったのさ。肩は鬼族のような角を。内臓は外に剥き出し、目は血管を見せるように。更には男の精神までも偉業のモノへと変質させたんだ。言葉も慈しむ心も全て外に出すように。やがて自我は消え、男の魂はここに幕を閉じた。
 男が生命らしさを消した反面、祖先はどうなったのか? 彼等は神々の世界で真実すら知らしめることなく今ある一生を過ごすようになったのさ。そこには衰えこそ急速であるものの平和で幸せな世界。勿論発展さえも出来ない。その必要がない世界さ。そうして世界は遠すぎる過去へと回帰できたのさ。これが創世記だ。
 一部の限界集落で代々伝わる記憶は調べれば調べる程に真実から遠い。でも幻想だからこそ今日における俺達の精神を形作るのさ。けれども平和な世界は長続きしなかった。それがおよそ四百の年より前に落ちてきた銀河連合。いくら世界を変えても必ず代価を払うのさ。それも関係ないはずの者達を巻き込んでな。
 とまあ長々しすぎるが俺は七に伝えたいのは伝える事は大切な事だというものさ。夢の内容が真実である保証はどこにも無い。第一冒頭の俺達人族が他種族を栽培する行為なんてとても信用できない。そんなものはまやかしだ! そう頭の中で整理したんだ。でも真実があるとするなら伝承だろう。例え荒唐無稽な事実であってもそれを恒久的に伝え続ける行為は耐えがたい苦痛を伴う。それはまるで七が稽古を続ける事を苦しみ、痛むように。でも、諦めずに伝えられるのならそれは巨大なものにもなる。水の惑星を一周する程の長さにもなる。お日様だって回す引力になるってさ。お日様を回せるのは銀河だけだろうが。
 だから俺はお前に実践して見せたんだ、俺の演舞を! それを『すぐに真似ろ』とも言わん。ただゆっくりでもいい。実践してみろ。残り時間少ない世の中を生き抜く為にもな……いや何でもない。
 とにかく俺もかつて兄貴の演舞を見た事あるんだ。ありゃあ今となっては堅い演舞だったよ。でも一番好きな演舞でもあったよ」

 九月四十七日午後十一時十分八秒。
 場所はアリスティッポス大陸アレテ地方アレテの口。
 その地はお日様の時間が最も長い日に必ず裂け目が生じる。口のように裂け目を開く事から『アレテの口』と命名された。
 だが、今日は月の時間が長い。なのに口を開いていた!
 どうゆうことだ、八弥--班員の半分を裂け目に呑み込まれたチーチャルは怒りをぶつけた!
「俺だってこんなのは初めてだ! 本来アレテの口は日照時間が異常な日にしか発生しないはずなんだ! しかも……何だって!」
 これは幻だよ、きっと--七が弱音を吐く程に信じられない光景が一同に心的衝撃を与えた!
 まるで八弥達を呑み込まんと裂け目は彼等の踏む位置を正確に発生--部隊の三分の一が凍り付けされてゆく!
(まだ銀河連合が現われてもいない! べア彦の遠征記録にはそんな記述はない! 裂け目だって正確に記してるんだぞ! なのにこれは一体! 何が……うわっ!
 危なかった! 後半歩近ければ真っ逆さまに冷蔵されたな!)
 銀河連合よりも先に自然界の脅威が進行部隊に大打撃を与え続けるものの徐々に避ける方向を予測してゆき、一の日をかけてようやくアレテの口を通り過ぎた--部隊の五分の二を氷の下に往かせながら!
(やっと越えた……のはまだ早いか!)
 急速がままならない彼等に襲いかかるは銀河連合--現在の部隊数の二倍は下る数。
「廃集落似まだ着かん乃科! このままわしら端消耗しきった摩摩倒される斗いう乃科!」
「弱音を吐くなんてらしくないよ、ツクモノカミ」
「レテ集落は奴等の向こう側か! 皆の者! 一点突破をかけるぞ!
 ただし、限界だと思ったら相手をするな! 何としても冷蔵された者達を背負ってる以上は生き延びろ! いいな!」
「「「「「「おおおおお!」」」」」」
 進行部隊は武器を取り、向い来る銀河連合を倒してでも一点に集中して進んでゆく! 銀河連合も一点突破に対応するように守りを固めてゆくが--
(こちらも必死だ! そっちがそう対応するならこっちは--)
 八弥の無言による指示が各班長、組長に伝わる--彼等は二手に別れるように分散し、二の時をかけて銀河連合側を囲む!
「押して進むぞ! 数が半分になったら急いでレテ集落にゆくんだ、いいな!」
 一の時かけて八弥達は銀河連合を半分にすると全員レテ集落へと逃げ込んだ--その間にアリスティッポス大陸に踏み込んだ数の七分の三にまで減った。
 その時の時間は九月五十日午前五時七分零秒。
 場所は廃レテ集落。住居はもはや残らない程廃れていた。

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プロフィール

Author:darkvernu
 どうも大阪府に住むdarkvernuです。
 自分の趣味はネットサーフィンする事と偉そうに批評する事と、たまに読書をする事。今はそれだけです!
ちなみに読む本は主に経済本や評論本、たまに数学関連や科学関連の本を読みます。歴史も好きなのか歴史関連を読んだりもします。ただし、その分野に詳しいかと言えば、ドマイナーだと自分で思います。ただし、小説関連は余り読みません。何故なら自分は三流未満とは言え小説家なので手塚治虫の言葉を応用して小説は読まないように心がけてます。神話や昔話、童話は読みます。小説というジャンルとは違うので。今度はSF界の重鎮作品も読みたい気分です。
 好きな食べ物は数えきれませんので嫌いな食べ物は基本無いです。苦手な事は就活。いや本気で。今はギリギリでいるか或はその前に貯金を使い果たすかのどちらかだ。

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